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抜けた先には
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薄暗く狭く長い通路を延々と歩く。
今からでも引き返して「嘘でしたー」とディオ達にカミングアウトしたものかどうか、そんな迷いを抱えながら歩くその道のりは、まるで永遠のように長く感じるものだった。
しかし、永遠のように感じると言っても結局永遠ではない。やがては終わりが見えてくる。
俺はついに長い通路を抜けた先に出ることになった。
「・・・あら?」
不気味なオーラ漂う魔族の居城にひどく似つかわしくない声が聞こえる。
抜けた先には人が住んでいるような部屋があった。
ベッドからテーブルから、調度品が一通り揃っている。
いや、質を見るに俺が家で使っているようなそれよりも、断然高価なものであることが一目でわかる。
高位の人間が使うような部屋・・・ その部屋にまさに、俺達が探していた高位の人間・・・攫われたルーチェ国の王女アリス様がそこにいた。
「まぁ、もしかして私のことを助けに来てくださいましたの?」
アリス様は驚愕に目を見開いている。
俺はアリス様の前で跪き
「私はレイツォ。アリス様の救出にやってまいりました。もうご安心ください」
これまであまたの女性を落としてきたキメ顔とともそう言った。
「まぁ、ありがとうございます。ずっと心細かったんですのよ」
パアッとそう言って笑顔を見せるアリス様は、まさに後光の差す美しさだった。俺のキメ顔などゴミのようなものだと思う。
あぁ、こんな笑顔をディオは独り占めすることになるのか・・・
そう考えると、俺の心を何か黒いものが覆うとしていた。
「あなたはディオ様と武闘会で決勝を争った方でしたわね」
!俺のことを憶えていてくれたのか。
そのことだけで俺の心は歓喜に満ち溢れた。
「ディオ様は・・・どうされたのでしょう?」
「!!」
歓喜に満ちた俺の心は一瞬で冷え切った。
俺の全身を冷や汗が流れる。
あれ?そういえば出し抜きに成功したところで首尾よくアリス様を発見できたとき、俺はなんて言い訳するつもりだったんだっけ?
・・・何も考えてなかった気がする。
今からでも引き返して「嘘でしたー」とディオ達にカミングアウトしたものかどうか、そんな迷いを抱えながら歩くその道のりは、まるで永遠のように長く感じるものだった。
しかし、永遠のように感じると言っても結局永遠ではない。やがては終わりが見えてくる。
俺はついに長い通路を抜けた先に出ることになった。
「・・・あら?」
不気味なオーラ漂う魔族の居城にひどく似つかわしくない声が聞こえる。
抜けた先には人が住んでいるような部屋があった。
ベッドからテーブルから、調度品が一通り揃っている。
いや、質を見るに俺が家で使っているようなそれよりも、断然高価なものであることが一目でわかる。
高位の人間が使うような部屋・・・ その部屋にまさに、俺達が探していた高位の人間・・・攫われたルーチェ国の王女アリス様がそこにいた。
「まぁ、もしかして私のことを助けに来てくださいましたの?」
アリス様は驚愕に目を見開いている。
俺はアリス様の前で跪き
「私はレイツォ。アリス様の救出にやってまいりました。もうご安心ください」
これまであまたの女性を落としてきたキメ顔とともそう言った。
「まぁ、ありがとうございます。ずっと心細かったんですのよ」
パアッとそう言って笑顔を見せるアリス様は、まさに後光の差す美しさだった。俺のキメ顔などゴミのようなものだと思う。
あぁ、こんな笑顔をディオは独り占めすることになるのか・・・
そう考えると、俺の心を何か黒いものが覆うとしていた。
「あなたはディオ様と武闘会で決勝を争った方でしたわね」
!俺のことを憶えていてくれたのか。
そのことだけで俺の心は歓喜に満ち溢れた。
「ディオ様は・・・どうされたのでしょう?」
「!!」
歓喜に満ちた俺の心は一瞬で冷え切った。
俺の全身を冷や汗が流れる。
あれ?そういえば出し抜きに成功したところで首尾よくアリス様を発見できたとき、俺はなんて言い訳するつもりだったんだっけ?
・・・何も考えてなかった気がする。
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