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転機

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脳筋元勇者達主導による無謀な突撃を開始してからどれだけの時間がかかったのか。
俺達はようやく静寂の訪れた空間で一息ついていた。
山ほど襲い掛かってくる魔族を倒しに倒しに倒して死体の山をいくつも築いた。一晩ほどかけてようやく辺りにいる全ての魔族を殺し尽くしたようだ。


「どうじゃ奇襲は成功しただろう」


「してませんよ。結局ゴリ押しだったじゃないですか。2、3歩歩くだけでエンカウントし続けるなんて、もう二度とこんな経験したくないです・・・」


あくまで作戦は成功だというウラエヌスさんを俺は即座に否定した。

正直何度死ぬかと思ったかわかったものじゃない。いつもはポーカーフェイスで涼し気にしているはずのディオも、流石に今ばかりはどこか疲れているように見える。

だが、結果として超絶にスピーディーに魔王山の中腹に来られたことは確かだった。
そして魔族のほとんどを倒してしまっている。当然レベルのほうも上がり、俺もディオもこの戦いに来る前より遥かに強くなっていた。


「流石、魔王討伐に自ら志願するだけあって、中々やるではないか」


バリーさんが俺達を褒めてくれる。
まぁ確かに俺達は頑張った。本当によくやったほうだと思う。
ただそれを可能にしたのは化け物じみたバリーさん達のお陰なのだが。
バリーさんの超跳躍からの斬撃を含め、びっくり人間レベルの凄まじい剣技なんかは流石のディオも茫然と見ていたほどだ。
もしかして魔王・・・俺たちがいなくてもこの二人だけで何とかなってしまうのではと思ってしまう。
そして、この二人がこの国にいたからこそ、国は彼らに依存してろくに力を蓄えなかったのだろうなとも思った。どれだけぞんざいに扱っても、二人は正義感から国を救ってくれるだろうと考えていたんじゃないかと。
自分達は何もしないくせに、なんて傲慢なのだと俺は呆れてしまった。

だが、この件が終わってもしディオが王になれば、そのときはきっとディオが全てを変えてくれるだろう。

そう、ディオが王になればーーー



(あれ、俺は・・・?)


ディオが王になったとき、果たして俺はどうしているのだろう。
先送りにしていた悩みが頭を過ぎった。


「よし、休憩も終わったところで、そろそろ行こう」


思考の海に飲み込まれそうになる寸前、バリーさんの言葉でハッと我に返った。
そう、ここは敵の本拠地。そうゆっくりと寛いでなどいられないのだ。


「では・・・うっ、ゴホッ」


急にバリーさんが咳き込んだ。


「大丈夫ですか・・・?」

心配になり覗き込むと


「ゴホッ ゲホッ ウエッホ」


盛大に咳き込みのオンパレードを披露しだしたバリーさん。
いよいよ大丈夫かと近寄ろうとしたとき、俺は見た。
バリーさんが口を押えていた手に平が、自らの地で真っ赤になっていたことに。
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