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魔王山へ

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こうしてメンバーの揃った俺達は、ついに魔王山へ向かうことになった。

やっと、やっとだよ。何だか随分時間がかかった気がする。果たして姫様無事なんだろうか・・・


「昔魔王が王妃様を攫ったときはワシらが行くまで無事じゃったぞ。案外大丈夫かもしれん。焦ることはない」


ウラエヌスさんはそう教えてくれたが、今回は何もしないとは限らないのだよな。
にしてもそもそもなんで姫様を魔族は攫ったのか・・・?





そうこうして俺達は魔王山の麓までたどり着いた。
既に日が暮れ、夜行性の魔族の時間と呼ばれる時間となっていた。


「今日は野宿して、朝になってから行きますか」

そう俺が訊ねると、ウラエヌスさんはキョトンとして


「何を言っておる?このまま行くぞ」


と真顔で言った。


「は?」


俺は思わず聞き返してしまった。
魔族は夜行性だ。夜になると活性が高くなり、昼間と比較にならないほど狂暴で闘争心が高くなる。要するに夜に人間が挑むのは何のメリットもないのだ。


「それは素人の考えだ」


バリーさんはチッチッと人差し指を振って言った。


「魔族とて人間が夜を避けて行動するのを知っている。だからこそ、そこに付け入る隙があるのだ」


「何ですって?」


百戦錬磨のバリーさんが言うと説得力がありそうな話が聞けそうだが、一体どういうことだろう。


「奴らは夜は我々人間から攻撃を仕掛けてくるなんてことは全く考えていない。だからこそ、我々の奇襲は成功するのだ」


説得力・・・あるようなないような・・・
何で夜に挑まないかってのは、夜は魔物が活性化するからであって。


「奇襲が成功するかもしれない理屈はわかりましたけど、夜は敵も強くなってますよ。トータルで考えるとどうなんですか?やっぱ昼にしたほうが・・・」


「四の五の言うな!」


ウラエヌスさんが俺を一喝した。


「夜でも魔物は大して強くなってなかったわい。それよりも今は時間が大事じゃ。姫様を早く助け出したいのじゃろ?今すぐ行くぞ!」


この人、前と言ってることが違う。
魔物は大して強くなってない・・・その言葉を信じるしかないのか。経験者だし。


「行くぞっ!!」


バリーさんとウラエヌスさんにつられるように、俺とディオは魔王山へ突入した。



・・・敵はやっぱり活性が上がっていて物凄く強くて狂暴だった。
大して強くなってなかったなんて、規格外に強いこの人達の感覚を信じた俺が馬鹿だった。もしかしたらこの二人が若い冒険者たちと上手くいかなくなったのって、こういうところが原因だったんじゃ・・・

そんなことをひぃひぃ言いながら魔物と戦いながら俺は思った。
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