31 / 92
ようやく始まる
しおりを挟む
「私たちは間違え、それに気付き立ち止まった。また歩けと言うのか?」
「そうじゃ。わしらは間違えたもん同士だ。だが、そんなわしらでも動かねばならぬほど、今この国は窮地に陥っておる」
バリーさんとウラエヌスさんは見つめあって二人の世界に入って語り合う。
「あっ、ようやく回想から帰ってきたんですね」
ようやく二人の回想が終わって、ついホッとしてそう洩らしてしまった。
まぁ二人に現場に来てもらうほどのことは当初は求めてなかったけど、何だかついてきそうな流れになっている。
この先楽になるならまぁそれでいいかと俺もこの流れに乗ることにした。
「敵は強大です。それに時間が経てば姫の御身も危ういかもしれません。どうか助けていただけると・・・」
二人の空気の邪魔をしないようにしながら、おずおずと俺は申し出た。
「確かに魔王は強力だ。私などの手助けでも必要になるかもしれない」
お、乗ってきた!
「だが、やはり駄目なのだ」
と思ったら違った。ずっこけそうになった。
「私は愛剣のブライアントを手放してしまったのだ。これでは大して力になれないどころか、足を引っ張ってしまうだろう」
借金の肩にしてしまったという名剣のことか。
それを聞いてウラエヌスが手に持ったある物をバリーさんの目の前に差し出した。
「お主の墓(仮)にあったものじゃ。雪に埋もれておったがの」
大事に布で梱包された長物。布を開くと、美しい長剣が姿を現した。
「こ、これはブライアント!借金の肩に持っていかれたはずなのに、どうして・・・?」
借金の肩に持っていかれたはずの愛剣が、目の前に姿を現したことでバリーさんは驚愕していた。
「借金取りとやらが世間的に死んだお主への手向けとして置いて行ったのではないか?」
「なっ・・・!あの元勇者が!?」
「死んだままならそのまま。だがもし再び蘇り、墓(仮)を処分しようとしたらお主に気付くようにしたのではないかと思う」
「元勇者・・・」
バリーさん、元仲間なのにその人の名前覚えてないんか。
バリーさんはブライアントを手にとって俯いた。
「まだ私に期待を寄せていた者がいるのなら、再び剣を取るべきか・・・」
先ほどまでと違い、バリーさんの目は輝いていた。
そうか。誰か一人でも自分を期待しているのなら、信じていてくれるのなら、この人は頑張れる人なのか。
これが本物の『勇者』というやつなのか。
こうして俺達はいつの間にか伝説の勇者達に同行してもらって姫を助けに向かうことになったのだった。
・・・なんだかよくわからんけど、ここまで行くのに随分時間がかかった気がする。
「そうじゃ。わしらは間違えたもん同士だ。だが、そんなわしらでも動かねばならぬほど、今この国は窮地に陥っておる」
バリーさんとウラエヌスさんは見つめあって二人の世界に入って語り合う。
「あっ、ようやく回想から帰ってきたんですね」
ようやく二人の回想が終わって、ついホッとしてそう洩らしてしまった。
まぁ二人に現場に来てもらうほどのことは当初は求めてなかったけど、何だかついてきそうな流れになっている。
この先楽になるならまぁそれでいいかと俺もこの流れに乗ることにした。
「敵は強大です。それに時間が経てば姫の御身も危ういかもしれません。どうか助けていただけると・・・」
二人の空気の邪魔をしないようにしながら、おずおずと俺は申し出た。
「確かに魔王は強力だ。私などの手助けでも必要になるかもしれない」
お、乗ってきた!
「だが、やはり駄目なのだ」
と思ったら違った。ずっこけそうになった。
「私は愛剣のブライアントを手放してしまったのだ。これでは大して力になれないどころか、足を引っ張ってしまうだろう」
借金の肩にしてしまったという名剣のことか。
それを聞いてウラエヌスが手に持ったある物をバリーさんの目の前に差し出した。
「お主の墓(仮)にあったものじゃ。雪に埋もれておったがの」
大事に布で梱包された長物。布を開くと、美しい長剣が姿を現した。
「こ、これはブライアント!借金の肩に持っていかれたはずなのに、どうして・・・?」
借金の肩に持っていかれたはずの愛剣が、目の前に姿を現したことでバリーさんは驚愕していた。
「借金取りとやらが世間的に死んだお主への手向けとして置いて行ったのではないか?」
「なっ・・・!あの元勇者が!?」
「死んだままならそのまま。だがもし再び蘇り、墓(仮)を処分しようとしたらお主に気付くようにしたのではないかと思う」
「元勇者・・・」
バリーさん、元仲間なのにその人の名前覚えてないんか。
バリーさんはブライアントを手にとって俯いた。
「まだ私に期待を寄せていた者がいるのなら、再び剣を取るべきか・・・」
先ほどまでと違い、バリーさんの目は輝いていた。
そうか。誰か一人でも自分を期待しているのなら、信じていてくれるのなら、この人は頑張れる人なのか。
これが本物の『勇者』というやつなのか。
こうして俺達はいつの間にか伝説の勇者達に同行してもらって姫を助けに向かうことになったのだった。
・・・なんだかよくわからんけど、ここまで行くのに随分時間がかかった気がする。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界大日本帝国
暇人先生
ファンタジー
1959年1939年から始まった第二次世界大戦に勝利し大日本帝国は今ではナチス並ぶ超大国になりアジア、南アメリカ、北アメリカ大陸、ユーラシア大陸のほとんどを占領している、しかも技術も最先端で1948年には帝国主義を改めて国民が生活しやすいように民主化している、ある日、日本海の中心に巨大な霧が発生した、漁船や客船などが行方不明になった、そして霧の中は……
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる