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老兵はただ消える ~ウラエヌス目線~
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ワシはリーン国からルーチェ国へと数年ぶりに帰国した。
数年前、ルーチェではナオール草の発見、普及により回復術師の需要が激減した頃だった。
まだ高位の回復術師だったワシの需要は消えていなかったが、それでも徐々にそれも失われていくのだろうとどこか恐怖し、リーン国へと逃げた。
今、結局ワシは逃げた先のリーン国で需要を失い、ルーチェ国に戻ってくることになった。なんと皮肉なことか。
そして、久しぶりに見るルーチェ国は、リーン国とは比較にならないほど廃れているように見えた。
魔族の領域が近いだけにまだ冒険者の姿は多数見かけられる、それは変わらない。だが、国民の生活は時が止まっていたかのように昔のままであった。悪い意味で、だ。
リーン国では人も情報もどんどん入ってくるだけに、商店に並ぶ品物も次々と更新が進んでいた。
だが、ルーチェ国の商店は値段も品ぞろえも昔とほとんど変わらない。リーン国で数年前に見た光景がそのまま広がっていた。
酒場に入って酒をチビチビ飲みながら話を聞いてみると、どうやらルーチェ国は本当に数年前からあらゆるものに変化がないということらしい。
ナオール草は採取しても時間の経過とともに効果が薄くなっていく。それでも近隣国には需要があったため、ルーチェ国はナオール草を金の成る木としてとにかく輸出して外貨を獲得していった。
だが、それだけだった。湧いてくる資源をただ横に流すだけで、その売り物を自分達がどうかしようとはしなかったようだ。リーン国はナオール草をただの薬草としてではなく、効能の低下を防ぐために分析、研究した結果「ポーション」というナオール草よりも効果があり、時間による品質の低下もない新しいアイテムを生み出した。
それも一つのナオール草から複数のポーションが製造できるという。
ポーションのリリースを受けて、ナオール草の需要は一気に激減した。ルーチェ国から輸出されるナオール草の数が激減することで、入ってくる外貨も当然激減した。ナオール草の特需により栄えていた街や商人は一気にその反動を受けることになり、ルーチェ国は一気に衰退することになる。
これを受けてルーチェ国は高値に設定していたナオール草の価格を一気に引き下げ、どうにか販路の拡大が出来ないかと探ったが、結局それによりポーションの生産コストが抑えられ、よりポーションが市場に出回ってナオール草の需要を削るという裏目に出たのであった。
ワシがリーン国を発つ前少し耳に入った話では、ポーションは更に改良が進み、ナオール草の代替え技術が進みいずれは別の材料からも作られるようになるのではないかという話である。
そうなればこのルーチェ国は終わりだろう。また新たに産業か資源が見つけなければならないのだ。
今はまだ冒険者が流れてくるのでいくらかでも外貨は落ちてくるが、それでも限度がある。
馬鹿なことだ。ナオール草を金のなる木としてただ横に流すのではなく、それを元に回復薬の研究をすればよかったのだ。資源輸出国などそれが枯渇したり代替えが進んで需要がなくなれば終わるのだ。技術立国となるべきことに気付かなかったルーチェ国、王の完全なる失策だ。
今やリーン国は医学薬学で他国の頭一つ抜け出ている状態だ。大してルーチェはどうだ。現状に流され、されるがままになって衰退している。
だが、それはワシとて同じではないか?
ワシも時代の変化をただ受け入れるだけで、自分で変わろうとはしなかった。自分の高位回復術に自信を持ち、変化を必要ないものとして一蹴していた。その結果このざまだ。ナオール草に縋って自滅したルーチェ国と何が違うのか。
ルーチェ国に戻ってきたのは必然だったのかもしれない、とワシは思うようになった。
こうして国が衰退していくのなら、ワシもそれを見届けようと考えた。幸い、この国にいる以上は特別年金で暮らしに困ることはない。隠居しよう。
そしてワシは表舞台から去った。
数年前、ルーチェではナオール草の発見、普及により回復術師の需要が激減した頃だった。
まだ高位の回復術師だったワシの需要は消えていなかったが、それでも徐々にそれも失われていくのだろうとどこか恐怖し、リーン国へと逃げた。
今、結局ワシは逃げた先のリーン国で需要を失い、ルーチェ国に戻ってくることになった。なんと皮肉なことか。
そして、久しぶりに見るルーチェ国は、リーン国とは比較にならないほど廃れているように見えた。
魔族の領域が近いだけにまだ冒険者の姿は多数見かけられる、それは変わらない。だが、国民の生活は時が止まっていたかのように昔のままであった。悪い意味で、だ。
リーン国では人も情報もどんどん入ってくるだけに、商店に並ぶ品物も次々と更新が進んでいた。
だが、ルーチェ国の商店は値段も品ぞろえも昔とほとんど変わらない。リーン国で数年前に見た光景がそのまま広がっていた。
酒場に入って酒をチビチビ飲みながら話を聞いてみると、どうやらルーチェ国は本当に数年前からあらゆるものに変化がないということらしい。
ナオール草は採取しても時間の経過とともに効果が薄くなっていく。それでも近隣国には需要があったため、ルーチェ国はナオール草を金の成る木としてとにかく輸出して外貨を獲得していった。
だが、それだけだった。湧いてくる資源をただ横に流すだけで、その売り物を自分達がどうかしようとはしなかったようだ。リーン国はナオール草をただの薬草としてではなく、効能の低下を防ぐために分析、研究した結果「ポーション」というナオール草よりも効果があり、時間による品質の低下もない新しいアイテムを生み出した。
それも一つのナオール草から複数のポーションが製造できるという。
ポーションのリリースを受けて、ナオール草の需要は一気に激減した。ルーチェ国から輸出されるナオール草の数が激減することで、入ってくる外貨も当然激減した。ナオール草の特需により栄えていた街や商人は一気にその反動を受けることになり、ルーチェ国は一気に衰退することになる。
これを受けてルーチェ国は高値に設定していたナオール草の価格を一気に引き下げ、どうにか販路の拡大が出来ないかと探ったが、結局それによりポーションの生産コストが抑えられ、よりポーションが市場に出回ってナオール草の需要を削るという裏目に出たのであった。
ワシがリーン国を発つ前少し耳に入った話では、ポーションは更に改良が進み、ナオール草の代替え技術が進みいずれは別の材料からも作られるようになるのではないかという話である。
そうなればこのルーチェ国は終わりだろう。また新たに産業か資源が見つけなければならないのだ。
今はまだ冒険者が流れてくるのでいくらかでも外貨は落ちてくるが、それでも限度がある。
馬鹿なことだ。ナオール草を金のなる木としてただ横に流すのではなく、それを元に回復薬の研究をすればよかったのだ。資源輸出国などそれが枯渇したり代替えが進んで需要がなくなれば終わるのだ。技術立国となるべきことに気付かなかったルーチェ国、王の完全なる失策だ。
今やリーン国は医学薬学で他国の頭一つ抜け出ている状態だ。大してルーチェはどうだ。現状に流され、されるがままになって衰退している。
だが、それはワシとて同じではないか?
ワシも時代の変化をただ受け入れるだけで、自分で変わろうとはしなかった。自分の高位回復術に自信を持ち、変化を必要ないものとして一蹴していた。その結果このざまだ。ナオール草に縋って自滅したルーチェ国と何が違うのか。
ルーチェ国に戻ってきたのは必然だったのかもしれない、とワシは思うようになった。
こうして国が衰退していくのなら、ワシもそれを見届けようと考えた。幸い、この国にいる以上は特別年金で暮らしに困ることはない。隠居しよう。
そしてワシは表舞台から去った。
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