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ルーチェ昔話その5 ~バリー目線~

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「勇者様、お久しぶりです」

街で久しぶりにウラエヌスと飲んで解散したその帰り、私は一人の男に話しかけられた。
少しばかり身なりのいい青年であった。

「あぁ、私のことは覚えてませんよね・・・」

一瞬誰かと記憶を思い巡らせると、私はようやくここで彼のことを思い出すことができた。
私がウラエヌスと組む直前、私をパーティーから追放した勇者だった。冒険者の姿をしていなかったので、すぐには思い出せなかった。あと少し太ってた。

「あれからすぐにパーティーは気まずくなって、解散してしまって」

元勇者である青年は苦笑いをしながらそう言った。

「それからも少しばかり続けていたのですが、バリーさん、勇者様たちの活躍を聞き、自分には才能がなかったと自覚して冒険者をやめました」

「あれは・・・」

追放は私にも、というか私が全面的に悪いことからした判断なので、彼の責任だとは思わない。私の立ち振る舞いと下半身が悪かったのだ。

「いえ、仲間の実力を認めず、己の感情を優先させてしまうなど勇者として・・・いえ、パーティーリーダーとしても失格です。私には向いていなかったのです」

そう言われてしまうと私には黙っていることしかできない。確かに彼が大成することが出来る人間だとは、あの当時仲間であった私は考えたことがなかった。

「冒険者をやっていていくらかまとまった貯金もありましたし、それまで培ってきた経験を生かして新しいことを始めようって決めて、冒険者をやめるまではすぐでした」


「それから私は金貸しを始めたんです」

急展開過ぎる。

「パーティーの資金繰りなどで数字にも慣れてましたし、冒険者をやっていたから取り立ても多少手荒れに出来ますし」

あまりに勇者からかけ離れ過ぎる。

「私に勇者は向いていませんでしたから・・・」

だからといってその選択は・・・

「勇者様は勇者様の、私は私の、それぞれで出来ることをする。これで良いではありませんか」

「・・・・・・」

「勇者様のこれからのますますのご健勝をお祈りしています」

そうして私はかつての仲間と別れた。
私は勇者として振る舞うことで言葉遣いも生活態度もいくらか変わった。実入りがあるので金使いこそあまり変わらないが、それでも勇者として名に恥じない程度の世間体は保とうとしている。
ウラエヌスは若手の指導と称して今でもたまに冒険者と一緒に冒険をしているそうだ。私の剣の腕も、ウラエヌスの並外れた法術も、まだまだ世間には必要とされていた。

だが、それも永遠には続くはずもなかった。
それに気づくのが遅れたのは、私達が驕り昂り、目を曇らせて心が鈍感になっていたからに他ならない。

それを数年後に私達は思い知ることになったのだ。
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