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ルーチェ昔話 その2 ~ウラエヌス目線~
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私は先ほどとは違う酒場にバリーを連れていって、熱心に口説いた。
「王城にて懐妊中のお后様が魔族に攫われたらしい。救出すれば褒美は望みのままだし、勇者の名声を得ることもできる。私は君のようなデキる男を探していたのだ。人間性などどうでもよいのだ。共にやってみないか?」
「勇者だぁ?夢見てんじゃねーぞオッサン」
バリーはまたも私をオッサン呼ばわりする。
「さっき俺と一緒に酒場にいた勇者様を誘いな。あいつなら喜んで誘いに乗ると思うぜ。出来るかどうかは別としてな」
「まぁ無理だろうね」
「ほう?」
「彼は君と比べてあまりに実力がかけ離れている。私と組んでも足を引っ張ることになるだろう」
そう言うとバリーは心から楽しそうに笑った。
「はっはっは・・・おいおい、アンタ僧侶だろ?随分酷いこと言うな」
「私も随分な生臭ボウズでな。どの教会からも追い出されてしまうはみ出し者なんだよ。法術がどれだけ優れていても、品行方正でなければ受け入れてはもらえないのさ。君と一緒だ」
「あっはっはっはっは!!」
ついにはバリーは腹を抱えて笑い出した。
「かなわねぇなオッサン。面白いじゃねぇか」
バリーは目じりに浮かんだ涙を拭いながら
「はみだし者同士が組んで勇者になる・・・か。丁度普通の冒険者も飽きてきたし、どのパーティーも俺をそろそろ受け入れてはくれないだろうし、いいぜ?やってもよ」
随分と軽いノリでバリーはそう言って私の提案を受け入れた。
「オッサンと組むなら変な気も起こさねーしな」
「は?」
「さっきのパーティーとか、今までいたところもそうなんだけど、つい女の子に手を出しちゃってな。毎度毎度揉めるんだわ。パーティークラッシャーとか言われたりして」
「・・・お前が全面的に悪かったんかい・・・」
潔癖症の勇者などと悪い風に考えてしまった。
だが、このバリーという男が決して女癖の悪さだけで孤立していたわけではないことに、私はのちに知らされることになる。
「おらぁ!!」
ちょっとした屋敷くらいはありそうなほどの大きさを誇るドラゴンに、それを上回る高さまで跳躍したバリーが剣を振り下ろした。
『グアァァァァァァァァ』
一刀で頭を真っ二つにされたドラゴンは、ぐらりと巨体を揺らすと、そのままズシーンと大きな音を立てて地面に倒れ伏す。
「な、なんていうやつだ・・・」
バリーの強さは遥か私の予想以上だった。
これまでパーティーに馴染めなかった理由・・・それはバリー自身が強すぎることにもあった。
そこらのパーティーリーダーなんぞより断然強い。強すぎるからリーダーとしても立つ瀬がない。
そして戦い方が自由奔放過ぎて誰かとの連携を組むなんて難しい。というか生半可なやつと連携などしようとしても、バリーの力を抑制するだけの結果になりそうだ。
ソロでやったほうが誰にも邪魔されずに良さそうだが、複数人でないと受けられないギルドの依頼もあるらしく、食うために仕方なく今まで遥か格下の人間と組んでは離れてを繰り返していたらしい。
「あるべきところに納まるべくして納まった。やはり君は私と組むべきだったのだ」
「けっ、俺ばっかやらせてないでアンタも少しは働けよオッサン」
そんな風に文句を言うバリーは、なんだか心なしか嬉しそうにしているように私には見えた。
「王城にて懐妊中のお后様が魔族に攫われたらしい。救出すれば褒美は望みのままだし、勇者の名声を得ることもできる。私は君のようなデキる男を探していたのだ。人間性などどうでもよいのだ。共にやってみないか?」
「勇者だぁ?夢見てんじゃねーぞオッサン」
バリーはまたも私をオッサン呼ばわりする。
「さっき俺と一緒に酒場にいた勇者様を誘いな。あいつなら喜んで誘いに乗ると思うぜ。出来るかどうかは別としてな」
「まぁ無理だろうね」
「ほう?」
「彼は君と比べてあまりに実力がかけ離れている。私と組んでも足を引っ張ることになるだろう」
そう言うとバリーは心から楽しそうに笑った。
「はっはっは・・・おいおい、アンタ僧侶だろ?随分酷いこと言うな」
「私も随分な生臭ボウズでな。どの教会からも追い出されてしまうはみ出し者なんだよ。法術がどれだけ優れていても、品行方正でなければ受け入れてはもらえないのさ。君と一緒だ」
「あっはっはっはっは!!」
ついにはバリーは腹を抱えて笑い出した。
「かなわねぇなオッサン。面白いじゃねぇか」
バリーは目じりに浮かんだ涙を拭いながら
「はみだし者同士が組んで勇者になる・・・か。丁度普通の冒険者も飽きてきたし、どのパーティーも俺をそろそろ受け入れてはくれないだろうし、いいぜ?やってもよ」
随分と軽いノリでバリーはそう言って私の提案を受け入れた。
「オッサンと組むなら変な気も起こさねーしな」
「は?」
「さっきのパーティーとか、今までいたところもそうなんだけど、つい女の子に手を出しちゃってな。毎度毎度揉めるんだわ。パーティークラッシャーとか言われたりして」
「・・・お前が全面的に悪かったんかい・・・」
潔癖症の勇者などと悪い風に考えてしまった。
だが、このバリーという男が決して女癖の悪さだけで孤立していたわけではないことに、私はのちに知らされることになる。
「おらぁ!!」
ちょっとした屋敷くらいはありそうなほどの大きさを誇るドラゴンに、それを上回る高さまで跳躍したバリーが剣を振り下ろした。
『グアァァァァァァァァ』
一刀で頭を真っ二つにされたドラゴンは、ぐらりと巨体を揺らすと、そのままズシーンと大きな音を立てて地面に倒れ伏す。
「な、なんていうやつだ・・・」
バリーの強さは遥か私の予想以上だった。
これまでパーティーに馴染めなかった理由・・・それはバリー自身が強すぎることにもあった。
そこらのパーティーリーダーなんぞより断然強い。強すぎるからリーダーとしても立つ瀬がない。
そして戦い方が自由奔放過ぎて誰かとの連携を組むなんて難しい。というか生半可なやつと連携などしようとしても、バリーの力を抑制するだけの結果になりそうだ。
ソロでやったほうが誰にも邪魔されずに良さそうだが、複数人でないと受けられないギルドの依頼もあるらしく、食うために仕方なく今まで遥か格下の人間と組んでは離れてを繰り返していたらしい。
「あるべきところに納まるべくして納まった。やはり君は私と組むべきだったのだ」
「けっ、俺ばっかやらせてないでアンタも少しは働けよオッサン」
そんな風に文句を言うバリーは、なんだか心なしか嬉しそうにしているように私には見えた。
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