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ウラエヌスに引っ張られるようにして、俺達は再び雪山の麓へと到達した。
俺とディオだけでは取り付く島も無かったが、近しい間柄であるウラエヌスがいれば勇者バリーも話を聞いてくれるだろうか?
「おぉ、なんじゃこれは」
ウラエヌスは何かを見つけて驚愕の声を上げた。
「あぁ、それは・・・」
ウラエヌスが見つけたものには心当たりがあった。
それは昨日に俺達が仕留めた白熊の死骸だった。
片付けろとバリーがいうので崖から投げ捨てたが、気付かなかったがどうやら麓まで落ちてきたようだ。
そのことについて話すと
「いやいや、最近は騎士団のレベルの低下が深刻だと聞いて嘆いておったが、やはり今の若者もやるではないか。こいつは中々強い猛獣じゃぞ」
そう言って褒めてくる。
確かに手ごたえのあったやつではあるが、かつての勇者にそう言ってもらえるとは嬉しいものである。
「こいつバラシて爪とか毛皮とか売ればそこそこの金になるぞい。帰りにやっておこうかのう」
・・・やはりウラエヌスはあまり僧侶には見えない。
雪山を登り始め、勇者の墓(偽)のところまで着いたときだった。
「やれやれ、わざわざ自分の死を偽装してまで世間から逃げようなど、かつての勇者の行いとは思えんわい」
そう言ってウラエヌスは墓にかぶった雪を払いのけた。
「しかもこんなところに立てるから雪ですぐ埋まって存在に気付かない人もおるでの。そうでなくてもここまで昇れる人間も限りがあってあまり目にも触れんし、あいつは昔からちょっと抜けたところがあるんじゃ」
まぁ確かに俺達も下山したときに気付いたし。
何かどんどん勇者に対するイメージが変わっていく気がする。
「そのくせ手先は器用で墓なんかちゃんと自作で丁寧に字まで・・・む?」
墓を見ていたウラエヌスが何かに気付いたようだった。
「どうしましたか?」
気になって訊ねると、彼は墓の横に雪と氷に埋もれた何かを引っ張りだした。
「これはーーー」
----------
そしてついに、俺達は勇者バリーの小屋まで再びやってきた。
「おいバリー。ここを開けんかい」
ウラエヌスは小屋の戸を乱暴に叩いた。
「おい開けろ。いるのはわかっておるんじゃ。はよ出てこんかい」
そうして声をかけ続けているが、その戸が開くことはなかった。
ウラエヌスでも駄目なのか・・・
俺は肩を落としたが
「カチャ」
音がして、戸にかけてあった鍵が外れたことがした。
「解錠の魔術じゃ。さっさと開けないなら仕方がないわい」
ウラエヌスの魔術によって無理矢理開けたようだ。
本当僧侶と思えない。
「な、なんだ一体!?借りた金ならもう返せないぞ!金目のものは何もないんだ!」
中からバリーの慌てた声が聞こえてきた。
これもまた元勇者と思えない。って、借金で身を隠していたとは本当だったのか・・・
どうやら俺達を借金取りだと思っているようだった。
「わしらは借金取りじゃないわい!わしの声を忘れたか?」
「お前はウラエヌス!?な、なんだ?どうしてこんなところに??」
やり取りが聞こえて来る小屋の中に、俺とディオはそっとお邪魔した。
小屋の中は確かに生活するための最低限のものがあるだけで、特に金になりそうなものは何もなかった。
「・・・君たちは昨日来た・・・」
バリーは俺達を見てキョトンとした表情を見せた。
久々に来たかつての仲間のウラエヌスと、昨日訪ねてきた俺達が結びつかなくて混乱しているのだろう。
「一体何をしに来たんだ?」
バリーの質問に対し
「のぅバリー。もう一度出直してみんか、わしら」
ウラエヌスはそう言った。
俺とディオだけでは取り付く島も無かったが、近しい間柄であるウラエヌスがいれば勇者バリーも話を聞いてくれるだろうか?
「おぉ、なんじゃこれは」
ウラエヌスは何かを見つけて驚愕の声を上げた。
「あぁ、それは・・・」
ウラエヌスが見つけたものには心当たりがあった。
それは昨日に俺達が仕留めた白熊の死骸だった。
片付けろとバリーがいうので崖から投げ捨てたが、気付かなかったがどうやら麓まで落ちてきたようだ。
そのことについて話すと
「いやいや、最近は騎士団のレベルの低下が深刻だと聞いて嘆いておったが、やはり今の若者もやるではないか。こいつは中々強い猛獣じゃぞ」
そう言って褒めてくる。
確かに手ごたえのあったやつではあるが、かつての勇者にそう言ってもらえるとは嬉しいものである。
「こいつバラシて爪とか毛皮とか売ればそこそこの金になるぞい。帰りにやっておこうかのう」
・・・やはりウラエヌスはあまり僧侶には見えない。
雪山を登り始め、勇者の墓(偽)のところまで着いたときだった。
「やれやれ、わざわざ自分の死を偽装してまで世間から逃げようなど、かつての勇者の行いとは思えんわい」
そう言ってウラエヌスは墓にかぶった雪を払いのけた。
「しかもこんなところに立てるから雪ですぐ埋まって存在に気付かない人もおるでの。そうでなくてもここまで昇れる人間も限りがあってあまり目にも触れんし、あいつは昔からちょっと抜けたところがあるんじゃ」
まぁ確かに俺達も下山したときに気付いたし。
何かどんどん勇者に対するイメージが変わっていく気がする。
「そのくせ手先は器用で墓なんかちゃんと自作で丁寧に字まで・・・む?」
墓を見ていたウラエヌスが何かに気付いたようだった。
「どうしましたか?」
気になって訊ねると、彼は墓の横に雪と氷に埋もれた何かを引っ張りだした。
「これはーーー」
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そしてついに、俺達は勇者バリーの小屋まで再びやってきた。
「おいバリー。ここを開けんかい」
ウラエヌスは小屋の戸を乱暴に叩いた。
「おい開けろ。いるのはわかっておるんじゃ。はよ出てこんかい」
そうして声をかけ続けているが、その戸が開くことはなかった。
ウラエヌスでも駄目なのか・・・
俺は肩を落としたが
「カチャ」
音がして、戸にかけてあった鍵が外れたことがした。
「解錠の魔術じゃ。さっさと開けないなら仕方がないわい」
ウラエヌスの魔術によって無理矢理開けたようだ。
本当僧侶と思えない。
「な、なんだ一体!?借りた金ならもう返せないぞ!金目のものは何もないんだ!」
中からバリーの慌てた声が聞こえてきた。
これもまた元勇者と思えない。って、借金で身を隠していたとは本当だったのか・・・
どうやら俺達を借金取りだと思っているようだった。
「わしらは借金取りじゃないわい!わしの声を忘れたか?」
「お前はウラエヌス!?な、なんだ?どうしてこんなところに??」
やり取りが聞こえて来る小屋の中に、俺とディオはそっとお邪魔した。
小屋の中は確かに生活するための最低限のものがあるだけで、特に金になりそうなものは何もなかった。
「・・・君たちは昨日来た・・・」
バリーは俺達を見てキョトンとした表情を見せた。
久々に来たかつての仲間のウラエヌスと、昨日訪ねてきた俺達が結びつかなくて混乱しているのだろう。
「一体何をしに来たんだ?」
バリーの質問に対し
「のぅバリー。もう一度出直してみんか、わしら」
ウラエヌスはそう言った。
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