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王女にだって選別する権利があるからしかたない
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武闘大会の優勝者に、王女へ求婚する権利を与える。
これは公式に告知はしていなかったが、武闘大会が始まる前から噂になっていた話だった。
求婚する権利とあるが、実際この空気で王女が求婚を断れるはずがない。王女殿下と結婚をするーーすると、王位継承権も手に入れることができる。つまり優勝者は、身分に関係なく将来この国の王となることができるのだ。
実際にそれを目当てにして多数の腕自慢が武闘大会に参加した。
実は俺もその一人だ。
王女殿下そのものに興味があったわけではない。王位継承権のほうに興味があった。
しかしどうだ。
今こうして王女であるアリス様を実際に間近に目にすると、思わず見入ってしまいそうなほど、実に美しい顔立ちをしている。まさしく絶世の美少女だ。
「・・・!」
ふと、アリス様と視線が重なった。ニコリと笑いかけてくれる彼女は、まさに後光の差す女神のようであった。
先ほどは悪いタイミングで流れを断ち切られたために頭に血が上ったが、アリス様のお姿に心を奪われ、いつの間にか怒りなど冷めていた。
それにしてもなぜあのタイミングで求婚に関する大事な告知をしたのか。少し冷静になった頭で考えてみると、実際決勝戦でどのような男が残るのか見定めるためだったのではないかと思われる。
今、このルーチェ国は諸事情で時期王には、身分に関係無く強い者を求めている。この武闘大会を開催した理由は、後継ぎに相応しい者を見つけるためであるという噂はあったし、実際そうだったのだろう。
だが、実際に優勝したのが腕力が強いだけのブ男だったら?モラルの無いならず者だったら?王政に携わるのが難しいほどの知性の低い者だったら?いくら武闘大会の優勝者とて、そんな者とアリス様を結婚させるわけにはいかないし、本人だって思うところはあるはずだ。もしも意に添わぬ人間が優勝しそうな場合、公式で告知されたことではないので、求婚の権利の話はただの噂でしかないと無かったことにしただろう。
だが、実際には決勝に残った俺とディオ、両方がアリス様のお眼鏡に叶ったために、どちらが勝者でも良いときっと今のこのタイミングで求婚についての告知が正式にされたのだ。
ふぅ、やれやれ。自分がこの美しい王女の目に留まったというのであれば、ひとまず決勝戦の流れをぶった切られたことに対しては水に流してやるしかあるまい。
「絶世の美少女に選ばれた」という意識が俺の心を浮つかせていた。
「話は以上だ」
そう言って、王は観覧席に戻った。
俺は再びディオと向き合う。
そう、アリス様に求婚するのは、まず目の前の男を倒さなければならないのだ。
「友達と言えど、手加減は無しだディオ」
つい雰囲気に流されて、カッコつけて一言余計なことを言ってしまった。
「・・・・・・」
対してディオは、無言でコクリと頷いただけだった。何だろう?カッコつけたはずの俺よりも、カッコ良くキマった気がする。対して俺の台詞はどこか負けフラグが立ってそうな・・・
いかん、集中しろ俺。
「それでは武闘大会決勝戦、はじめぃっ!!」
カァンッ!
大臣の開始の告知とともに、戦いの始まりを告げる大鐘が鳴らされた。
これは公式に告知はしていなかったが、武闘大会が始まる前から噂になっていた話だった。
求婚する権利とあるが、実際この空気で王女が求婚を断れるはずがない。王女殿下と結婚をするーーすると、王位継承権も手に入れることができる。つまり優勝者は、身分に関係なく将来この国の王となることができるのだ。
実際にそれを目当てにして多数の腕自慢が武闘大会に参加した。
実は俺もその一人だ。
王女殿下そのものに興味があったわけではない。王位継承権のほうに興味があった。
しかしどうだ。
今こうして王女であるアリス様を実際に間近に目にすると、思わず見入ってしまいそうなほど、実に美しい顔立ちをしている。まさしく絶世の美少女だ。
「・・・!」
ふと、アリス様と視線が重なった。ニコリと笑いかけてくれる彼女は、まさに後光の差す女神のようであった。
先ほどは悪いタイミングで流れを断ち切られたために頭に血が上ったが、アリス様のお姿に心を奪われ、いつの間にか怒りなど冷めていた。
それにしてもなぜあのタイミングで求婚に関する大事な告知をしたのか。少し冷静になった頭で考えてみると、実際決勝戦でどのような男が残るのか見定めるためだったのではないかと思われる。
今、このルーチェ国は諸事情で時期王には、身分に関係無く強い者を求めている。この武闘大会を開催した理由は、後継ぎに相応しい者を見つけるためであるという噂はあったし、実際そうだったのだろう。
だが、実際に優勝したのが腕力が強いだけのブ男だったら?モラルの無いならず者だったら?王政に携わるのが難しいほどの知性の低い者だったら?いくら武闘大会の優勝者とて、そんな者とアリス様を結婚させるわけにはいかないし、本人だって思うところはあるはずだ。もしも意に添わぬ人間が優勝しそうな場合、公式で告知されたことではないので、求婚の権利の話はただの噂でしかないと無かったことにしただろう。
だが、実際には決勝に残った俺とディオ、両方がアリス様のお眼鏡に叶ったために、どちらが勝者でも良いときっと今のこのタイミングで求婚についての告知が正式にされたのだ。
ふぅ、やれやれ。自分がこの美しい王女の目に留まったというのであれば、ひとまず決勝戦の流れをぶった切られたことに対しては水に流してやるしかあるまい。
「絶世の美少女に選ばれた」という意識が俺の心を浮つかせていた。
「話は以上だ」
そう言って、王は観覧席に戻った。
俺は再びディオと向き合う。
そう、アリス様に求婚するのは、まず目の前の男を倒さなければならないのだ。
「友達と言えど、手加減は無しだディオ」
つい雰囲気に流されて、カッコつけて一言余計なことを言ってしまった。
「・・・・・・」
対してディオは、無言でコクリと頷いただけだった。何だろう?カッコつけたはずの俺よりも、カッコ良くキマった気がする。対して俺の台詞はどこか負けフラグが立ってそうな・・・
いかん、集中しろ俺。
「それでは武闘大会決勝戦、はじめぃっ!!」
カァンッ!
大臣の開始の告知とともに、戦いの始まりを告げる大鐘が鳴らされた。
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