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早く勝負がしたい

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時は少しばかり遡る。

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「ではこれよりルーチェ国 武闘大会決勝戦となる!ディオ、レイツォ、両者前へ!!」

『ワァァァァァァァァァァァ!!』


進行役の大臣がそう高らかに告げると、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

ここはルーチェ国の王城の敷地内にあるコロシアム。今ここで行われているのは国が主催する武闘大会だ。
俺は今その大会の決勝戦まで勝ち残り、ここに立っている。
大臣に促されるままに、俺は前に進み出た。


『レイツォォォォ!お前ならやってくれると信じてるぞぉ!!』

『レイツォくーん!がんばってぇーっ!』

『レイツォくん素敵ーーっ!』

『てめぇに賭けたんだ!今夜の飲み代はお前にかかってるんだぜレイツォ!!』


思い思いの歓声が上がる。
女性の声が多めだ。自分で言うのも何だが、自分の容姿は整っているほうだと思う。この武闘大会で勝ち進んで注目を浴びていくうち、また女性ファンを増やしてしまったようだ。
この大会に出場した目的は別に女性ファンの獲得ではないし、そんなことに興味もないのだが、それでもこうして俺を応援してくれる女性が増えるというのは嬉しいものだ。
だが、俺の表情は張り詰めたままだった。それはこれから戦うことになる、決勝戦の相手を目の前にしているからだ。


「・・・・・・」

俺より僅かに遅れながら、無言では前に進み出た。

ディオ・・・

俺の幼馴染の親友にして、決勝戦の相手としてこれから戦う男。
そして、俺が乗り越えねばならない男。


『ディオーーーーーッ!やっちまえぇぇぇ!!』

『キャーッ!ディオ様ーーーッ(ハート)』

『真打登場!待ってましたぁ!!』

『ディオ様ーーッ!抱いてーーッ!』

『ディオ様凛々しいわぁぁぁぁ!もう好きにしてぇぇぇーー!!』

『DIO様ァァァァァァァAAAAAAAAAAA』


コロシアム全体が揺れ動いくかのような大歓声が上がる。俺のときのそれとは倍以上もの差があった。女性の声も俺のときより断然多い。


「ちっ・・・」

思わず舌打ちをしてしまう。
ディオ。こいつはいつも俺の上をいっていた。今この場での人気までもが俺の上だ。
どうでもいいことだが、容姿にしても俺より整っている。それだけでなく、雰囲気というか、同じ男の俺から見ても不思議な色気を感じ、思わず引き寄せられて平伏したくなるような・・・あぁ~・・・ 


はっ!いかん、変な気持ちになるからまじまじと見るのをやめよう。


いずれにせよ、こいつの俺の上をいくカリスマ性により、既に場の空気としては完全に俺が負けている事実に苛立ってしまう。

いや・・・
冷静になるのだ俺。
俺は魔術師だ。心を平静に保たねば勝てるものも勝てなくなるのだ。
今感じているような悔しさなど、これまでの人生で何度だって味わってきた。今更気にしても仕方がないのだ。

深呼吸をする。心を落ち着かせる。
やがて会場をとりまく歓声も、何もかもが意識の外のものになり、無の境地に到達する。

目の前の男、ディオを倒す。
戦術は既に出来ている。それを実行するだけだ。他のことは考えなくても良いのだ。
集中しろ。これから始まる、恐らく一瞬で決着がつく勝負に集中しろーーー



大臣がスッと右手を挙げた。
会場の歓声が一瞬にして消える。
いよいよだ。


そして間をおき、大臣がようやく口を開いた。

「ではこれより決勝戦ーーー」

「!!」

始まるかーー


「ーーーにうつるわけだが、その前に陛下よりお言葉がある!」

「!?」



ーーー危なかった。

一瞬「は!?」と、大きな声で大臣に聞き返してしまいそうになった。
観客からも僅かながらにブーイングが聞こえてきた。
そんなことを言うなら、わざわざ意味ありげに溜めないでくれないか?
あまりに空気の読めなさに、やっと落ち着けた心が再び荒れそうになったが、王族だの貴族だの高貴な方々というのは、俺達のような平民と違ってもったいぶった挨拶が大好きなのだ。俺は再び心を落ち着かせると、ディオと共に跪き、頭を垂れて王の言葉を待った。



「二人とも、良くぞ決勝まで勝ち進んだ。見事な戦いぶりであった」

軽く頭を下げる。

「これより二人には決勝戦を戦ってもらうわけだが、優勝した方には我が娘アリスに求婚する権利を認める」

王の言葉に、会場では再び歓声が上がった。

えっ?その話?もう知ってるんだけどな・・・
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