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プロローグ こんなはずじゃなかった

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風の吹きすさぶ山頂。
その場には俺と、もう一人の男だけが立っていた。

は俺が張った罠にかかり、絶望を味わった男。
縋るものを求め、逃げるようにここにやってきた男。

俺はに残酷な真実を告げる。
より絶望を味わってもらうために。
これまでに俺が感じてきた無念と憎しみを叩きつけるために。

だが、まだ温い。
これまでに俺が味わってきた屈辱や絶望は、こんなものではない。
こうして真実を告げるのは、あくまでこの後に、より大きな絶望を与えてやるための下ごしらえに過ぎない。
大きく抱えきれないほどの絶望を抱いたまま、俺の手によって死んでもらう。
そうすることによって俺の復讐劇は完結する。




は顔を俯かせている。

さぁ、顔を見せてみろ。
俺にお前の絶望を見せてみろ。
俺に憎しみをぶつけてみろ。

は俺の話を聞き終えた後、ゆっくりと顔を見上げた。


さぁ・・・復讐劇の最終章の始まりだ。







「・・・なに?」


思わず俺は声を出していた。
絶対的に精神的優位にあるはずの俺が、思わず取り乱していた。
#
そいつ__・__#の表情から見て取れる感情は、憎しみや絶望ではなく憐み。
その瞳は真っすぐに俺の姿を映していた。
強がりでもなんでもなく、は心底俺を憐れんでいるようだ。


「・・・ふざけるな」


どこまでは俺を苛立たせるのだろう。
どこまで俺を馬鹿にするのだろう。
どこまで俺を惨めにさせるのだろう。
どこまで自分が上位にいると思っているのだろう。

一世一代の俺の復讐劇を踏みにじり、最後に上位に立つはずだった俺を惨めな道化に蹴落とそうとしている。

精神的優位であったはずの俺はすっかり逆転されていた。
俺の心はへの怒りで満たされ、今にも爆発しそうだった。

こんなはずじゃなかった。
俺がこしらえた最高の舞台で、最高のフィナーレを迎えるはずだった。

もういい、劇は終わりだ。俺が終わらせる。今すぐここで終わらせる。

体から魔力が溢れ出す。
尋常ならざる怒りのせいなのか、これまでに無いほどの力を感じる。

は何かを言おうとしたが、俺はそれを遮って開戦の合図とばかりに叫んだ。


「あの世で俺に詫びろディオーーーーーーッ!!」
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