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平穏 その2
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トールは元はダレウスが雇った殺し屋・・・いや、誘拐屋であるが、首輪と化したミミックにより行動が制限されているのと、元々ある程度楽観的なシュウとトールの性格があってか、数日もするとその存在も馴染んだ。
異様な状況ではあるが、依然としてトールの立場は捕虜である。魔物じじいの家で、あわやその関係者を害しようとしたのだから、その身をどうするかは家主である魔物じじいに委ねられる。
故に魔物じじいがスライムの研究から戻ってきて沙汰を下すまでは、この不思議な同居生活が続くことになっている。
「はぁ~、参ったな。またカミさんにどやされちまうよ」
あっけらかんと言ってのけるトールは、既に今の状況にある程度馴染んでいるようだった。外出は出来なくても、食って寝るだけで良いという今の生活を堪能している。
しかも、オーガ君の用意する食事がこれまた実に美味であり、「当面はこのままでも良いかも」などと漏らしてすらいた。
「私を殺そうとした人が、どうして食卓に交じっているんですか」
シュウはともかく、フローラはトールが普通に一緒に食卓を囲んでいる状況を認めていない。ねちねちと疑問を呈していた。最もである。
「しょうがないじゃん、俺も仕事だったからな。それよりほら、このシチュー食ってみなって。本当にうまいからこれ」
フローラの言葉をヘラヘラと躱すトールが勧めると、フローラはジト目になって睨みながらもシチューに口をつける。
「うっ!・・・・ううううううううぅぅぅぅ・・・」
シチューを食べたフローラは、しばらく呆然としたあと目に涙を溜めながら悔しそうに唸る。
「私は、シュウ様と共に逃避行する日に備えて、こっそりと料理の勉強もして来たんです・・・体でだけじゃなくて、胃袋も掴んで私に依存させようと。料理の腕も上がって、一流シェフのレシピも覚えて、自信も身についたはずなのに・・・それでもこのシチューのうまさには全然及びません。このシチューに比べたら私の料理なんてカスです!」
「お褒めに預かり光栄デス」
オーガという種族の表情は、人間の目から見るとあまり変化が見られないが、それでもオーガ君はどこか嬉しそうにしている。
「具材はコカトリスの肉とマンイーターの・・・」
「ぐ、具材は聞きたくない・・・」
オーガ君がシチューに使用した具材を口にすると、トールは顔を青白くさせて頭を振った。
「味も良くて滋養強壮に抜群です。夜ノ方も燃え上がるコト間違いありませン」
「レシピ教えてください!」
具材を聞くことすら拒否したトールとは逆に、フローラは食い気味にオーガ君にレシピを訊ねた。
フローラが覚えたシチューを食うことになるのは自分なんだよな、とシュウは思いながら、魔物を具材にしたシチューを食わされる将来を考えて身震いする。
シュウは魔物じじいを学者として人として尊敬しているが、それでもどうしてもリスペクトできない部分があった。それが魔物を食すること、だ。
フローラは魔物じじいが魔物を食っていることを知り、当初は嫌悪感全開でドン引きしていたが、料理を研究していた者としてオーガ君の料理へのリスペクトは強く、魔物を具材とすることを許容する方向に舵を切ろうとしていた。
シュウにはただただそれが恐ろしくて冷や汗が止まらない。
「・・・しかし、まぁ・・・」
異様な環境ではあるが、勇者パーティーとして冒険し、それが終われば逃避行・・・といったひたすら激動の時間を過ごしてきたシュウにとって、今のこの平穏な時間は悪くないと思っていた。
異様な状況ではあるが、依然としてトールの立場は捕虜である。魔物じじいの家で、あわやその関係者を害しようとしたのだから、その身をどうするかは家主である魔物じじいに委ねられる。
故に魔物じじいがスライムの研究から戻ってきて沙汰を下すまでは、この不思議な同居生活が続くことになっている。
「はぁ~、参ったな。またカミさんにどやされちまうよ」
あっけらかんと言ってのけるトールは、既に今の状況にある程度馴染んでいるようだった。外出は出来なくても、食って寝るだけで良いという今の生活を堪能している。
しかも、オーガ君の用意する食事がこれまた実に美味であり、「当面はこのままでも良いかも」などと漏らしてすらいた。
「私を殺そうとした人が、どうして食卓に交じっているんですか」
シュウはともかく、フローラはトールが普通に一緒に食卓を囲んでいる状況を認めていない。ねちねちと疑問を呈していた。最もである。
「しょうがないじゃん、俺も仕事だったからな。それよりほら、このシチュー食ってみなって。本当にうまいからこれ」
フローラの言葉をヘラヘラと躱すトールが勧めると、フローラはジト目になって睨みながらもシチューに口をつける。
「うっ!・・・・ううううううううぅぅぅぅ・・・」
シチューを食べたフローラは、しばらく呆然としたあと目に涙を溜めながら悔しそうに唸る。
「私は、シュウ様と共に逃避行する日に備えて、こっそりと料理の勉強もして来たんです・・・体でだけじゃなくて、胃袋も掴んで私に依存させようと。料理の腕も上がって、一流シェフのレシピも覚えて、自信も身についたはずなのに・・・それでもこのシチューのうまさには全然及びません。このシチューに比べたら私の料理なんてカスです!」
「お褒めに預かり光栄デス」
オーガという種族の表情は、人間の目から見るとあまり変化が見られないが、それでもオーガ君はどこか嬉しそうにしている。
「具材はコカトリスの肉とマンイーターの・・・」
「ぐ、具材は聞きたくない・・・」
オーガ君がシチューに使用した具材を口にすると、トールは顔を青白くさせて頭を振った。
「味も良くて滋養強壮に抜群です。夜ノ方も燃え上がるコト間違いありませン」
「レシピ教えてください!」
具材を聞くことすら拒否したトールとは逆に、フローラは食い気味にオーガ君にレシピを訊ねた。
フローラが覚えたシチューを食うことになるのは自分なんだよな、とシュウは思いながら、魔物を具材にしたシチューを食わされる将来を考えて身震いする。
シュウは魔物じじいを学者として人として尊敬しているが、それでもどうしてもリスペクトできない部分があった。それが魔物を食すること、だ。
フローラは魔物じじいが魔物を食っていることを知り、当初は嫌悪感全開でドン引きしていたが、料理を研究していた者としてオーガ君の料理へのリスペクトは強く、魔物を具材とすることを許容する方向に舵を切ろうとしていた。
シュウにはただただそれが恐ろしくて冷や汗が止まらない。
「・・・しかし、まぁ・・・」
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