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忠告?

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フローラは最初、魔物じじいが何を言ったのかを理解し切れずに、ポカンと口を半開きにして固まってしまった。
数秒して言った言葉を理解してハッとすると、遅ればせながら真顔になりつつ言い返した。


「嫌です」


フローラが言い返すと、シーンと気まずい沈黙が流れる。
魔物じじいは苦笑いを浮かべると、再度口を開いた。


「まぁ、待て。理由を聞いてからでも」
「嫌です」


取り付く島もないほどに、フローラははっきりと拒絶する。
わけもわからず突然に「恋人と別れろ」と言われて、了承するほうがおかしいので当然である。


「私とシュウ様は地獄までも共に歩むと誓いました。離れ離れになることなどあり得ないことです」


きっぱり言い切るフローラを、魔物じじいは品定めするように見据えていたが、やがて破顔して大声で笑い出した。
魔物じじいの質問で彼を警戒しだしたので、フローラは真顔のままだ。


「はっはっは・・・いや、すまんのう。ちょっとしたテストのつもりじゃったんじゃが、まさか地獄まで共に歩むとまで言うとはのう・・・くくくっ」


ネタバラシした魔物じじいだが、フローラはそれでも気を緩めない。
「お前も私とシュウ様を引き離そうする敵なのか?」と言わんばかりに、射殺すような目で、魔物じじいを睨みつけている。


「そう、その目じゃ。獣のような眼光・・・自分の物は争ってでも人に渡さず、欲しいものは力づくで手に入れる、そんな目じゃ。『地獄まで共に歩む』、他の人間が言うならただのハッタリかと思うが、フローラちゃんが言うと本気にしか聞こえんのう」


氷のような冷たい視線を向けられながらも、魔物じじいは可笑しくてたまらないといったように笑い続ける。


「いやいや、本当にすまんかった。まさかそこまでシュウに熱が入っておるとは思わなかったのでな。フローラちゃんなら、安心してシュウを任せられるかもしれん」


「・・・どういうおつもりですか?」


ようやく少しだけ警戒を解いたのか、フローラが真顔のままではあるが問いかけた。


「聞いての通りじゃ・・・テストをしておった。フローラちゃんがシュウと共にいるにふさわしい女子《おなご》なのかどうかと。生半可な女では、到底シュウを捕まえていることはできん。遠からず別れることになってお互いが不幸になるだけじゃ」


魔物じじいのこの言葉に、能面のようであったフローラの表情が僅かにピクリと変化した。


「別れるとは・・・クローザさんという方と同じように、ですか?」


「・・・そうじゃ」


いつしか魔物じじいも真顔になっていた。
緊迫した雰囲気が二人を包んでいるが、実際のところはフローラの内心は少しばかりシリアスなそれとは違っている。


(やった!期せずしてシュウ様の元カノの話が聞きだせるチャンスが来た!!)


絶対零度の雰囲気を醸し出しつつも、内心はウキウキで魔物じじいからどう話を聞きだそうかと浮足立っていたのだ。
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