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シュウがバロウに求めたのは、屋敷の使用人全員を集めて欲しいということだった。
バロウ達親子に憑りついていたスライムについて説明をしたいから、とシュウが理由を説明すると、バロウはすぐに使用人を呼び寄せるように取り掛かる。
そうして屋敷の使用人全員が一番広い部屋へと集められると、シュウは軽く咳払いをしてから口火を切った。
「今回皆さんにお集まりいただいたのは、皆さんのご主人達を苦しみ続けていた病気の原因がスライムであったのですが、詳細を知ってもらったうえで、その危険性を認知してもらうためです。質問は遠慮なくしてください」
既にバロウ達の病気の原因がスライムであったことは使用人達も知っていたが、詳細についてはバロウ含め誰一人知らなかった。何しろスライムを研究していたシュウは、誰にも詳細を話すことなく今日までぐっすり寝ていたのだから。
これはフローラについても同じだった。
「私とお父様の体に回っていた毒は、そのスライムが原因ということで間違いないのですね?」
確認のためにルーシエが質問をした。
シュウは頷いてそれに答える。
「はい。このスライムで間違いありません」
そう言ってシュウは小瓶をゴトンとテーブルの上に置いた。
全員の視線が小瓶に一斉に注がれた。どう見ても無色透明、ただの水に見える。
「水にしか見えませんが、これがスライムなのですか?」
「ええ。体に憑りついていた時はもう少し核が大きく一目でわかりましたが、今は研究のために体を削りに削ったのですっかり弱ってしまい、核も目に見えないところまで小さくなりました」
フローラの質問にシュウはさらっと答えるが、地下室で一体何をしてきたんだろうと想像し、使用人達はゾッとした。
「このスライムの恐ろしいところの一つは、普通こうして目に見えないところまで核が小さくなるということはないはずが、自由に核を大きさを変化させることが出来るというところです」
その場にいるスライムについてある程度の知識がある者は、全員「あっ」と気付いた顔になった。
スライムという魔物は世界中あらゆる場所に存在し、その種類も豊富だが、共通しているのはスライムがスライムとして存在できるためにある『核』が弱点であり、体を自由に変化させることが出来ても、この『核』だけは形を変えることが出来ないということである。
スライムの体を物理攻撃でそれだけ削り落としても、かかる時間は種類によりまちまちだが例外なく再生することが出来る。だが核は別で、核に受けたダメージは再生できないし、形を変えて何かに擬態することもできない。丸見えの弱点、それがスライムの核だ。
「このスライムは私が可愛がり・・・いえ、虐め・・・じゃなかった・・・そう、研究を続けた結果、身の危険を感じたのか核ごと収縮を開始したのです。このように、肉眼に見えないレベルにまでね」
シュウはそう言って小瓶を手に取り、皆に見えるように掲げて軽く揺らしてみせた。
目を凝らしてみて見ても、ただの水にしか見えなく、感嘆の声を洩らす者がいる。
「探知魔法でここに核があるのはわかっています。それでもこのスライムはこうしてただの水に擬態し続け、虎視眈々と脱出の機会を伺っているのです。こんな知恵を持っているのも、このスライムの特徴です・・・それに」
シュウは小瓶を自分の顔に近づけ、邪悪な笑みを「ニタァ」と浮かべた。
「こうして私に怯えているのも、これもまたこの子の特徴ですね。穴があったら入りたい、姿を消してしまいたい、一刻も早くここから離れたい・・・こんなことを考えているだろうことが手に取るようにわかります。スライムに基本、そんな知能などありませんが、この子はどうやら特別なようです」
シュウが怪しげな笑みを浮かべてそんなことを言ったとき、その場にいる一同はあるものを聞いた気がした。
『シテ・・・』
「「「うっ・・・!」」」
スライムは声帯を持たない。だから声を発することはない。
なのに、何故だかなんとなく聞こえるのだ。
『シテ・・・コロシテ・・・』
シュウが持つ小瓶から、スライムのものらしき悲痛な声が聞こえてきた。そんな気がした。
『モウ虐メナイデ・・・一思イニコロシテ・・・』
一体地下室でどれだけの地獄を見たのだろうと皆は困惑した。
笑うシュウと怯えるスライム、どちらが魔物なのかわからなくなりそうだった。
バロウ達親子に憑りついていたスライムについて説明をしたいから、とシュウが理由を説明すると、バロウはすぐに使用人を呼び寄せるように取り掛かる。
そうして屋敷の使用人全員が一番広い部屋へと集められると、シュウは軽く咳払いをしてから口火を切った。
「今回皆さんにお集まりいただいたのは、皆さんのご主人達を苦しみ続けていた病気の原因がスライムであったのですが、詳細を知ってもらったうえで、その危険性を認知してもらうためです。質問は遠慮なくしてください」
既にバロウ達の病気の原因がスライムであったことは使用人達も知っていたが、詳細についてはバロウ含め誰一人知らなかった。何しろスライムを研究していたシュウは、誰にも詳細を話すことなく今日までぐっすり寝ていたのだから。
これはフローラについても同じだった。
「私とお父様の体に回っていた毒は、そのスライムが原因ということで間違いないのですね?」
確認のためにルーシエが質問をした。
シュウは頷いてそれに答える。
「はい。このスライムで間違いありません」
そう言ってシュウは小瓶をゴトンとテーブルの上に置いた。
全員の視線が小瓶に一斉に注がれた。どう見ても無色透明、ただの水に見える。
「水にしか見えませんが、これがスライムなのですか?」
「ええ。体に憑りついていた時はもう少し核が大きく一目でわかりましたが、今は研究のために体を削りに削ったのですっかり弱ってしまい、核も目に見えないところまで小さくなりました」
フローラの質問にシュウはさらっと答えるが、地下室で一体何をしてきたんだろうと想像し、使用人達はゾッとした。
「このスライムの恐ろしいところの一つは、普通こうして目に見えないところまで核が小さくなるということはないはずが、自由に核を大きさを変化させることが出来るというところです」
その場にいるスライムについてある程度の知識がある者は、全員「あっ」と気付いた顔になった。
スライムという魔物は世界中あらゆる場所に存在し、その種類も豊富だが、共通しているのはスライムがスライムとして存在できるためにある『核』が弱点であり、体を自由に変化させることが出来ても、この『核』だけは形を変えることが出来ないということである。
スライムの体を物理攻撃でそれだけ削り落としても、かかる時間は種類によりまちまちだが例外なく再生することが出来る。だが核は別で、核に受けたダメージは再生できないし、形を変えて何かに擬態することもできない。丸見えの弱点、それがスライムの核だ。
「このスライムは私が可愛がり・・・いえ、虐め・・・じゃなかった・・・そう、研究を続けた結果、身の危険を感じたのか核ごと収縮を開始したのです。このように、肉眼に見えないレベルにまでね」
シュウはそう言って小瓶を手に取り、皆に見えるように掲げて軽く揺らしてみせた。
目を凝らしてみて見ても、ただの水にしか見えなく、感嘆の声を洩らす者がいる。
「探知魔法でここに核があるのはわかっています。それでもこのスライムはこうしてただの水に擬態し続け、虎視眈々と脱出の機会を伺っているのです。こんな知恵を持っているのも、このスライムの特徴です・・・それに」
シュウは小瓶を自分の顔に近づけ、邪悪な笑みを「ニタァ」と浮かべた。
「こうして私に怯えているのも、これもまたこの子の特徴ですね。穴があったら入りたい、姿を消してしまいたい、一刻も早くここから離れたい・・・こんなことを考えているだろうことが手に取るようにわかります。スライムに基本、そんな知能などありませんが、この子はどうやら特別なようです」
シュウが怪しげな笑みを浮かべてそんなことを言ったとき、その場にいる一同はあるものを聞いた気がした。
『シテ・・・』
「「「うっ・・・!」」」
スライムは声帯を持たない。だから声を発することはない。
なのに、何故だかなんとなく聞こえるのだ。
『シテ・・・コロシテ・・・』
シュウが持つ小瓶から、スライムのものらしき悲痛な声が聞こえてきた。そんな気がした。
『モウ虐メナイデ・・・一思イニコロシテ・・・』
一体地下室でどれだけの地獄を見たのだろうと皆は困惑した。
笑うシュウと怯えるスライム、どちらが魔物なのかわからなくなりそうだった。
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