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敗北者達の哀歌
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「真実の愛・・・シュウとフローラ・・・まさか・・・そんな・・・」
自分が目にした物を信じきれずに、サーラは呆然として俯いた。
元よりメンタルの脆いところ来て、不眠不休の大捜査の後なので余計にサーラの精神には大きなダメージが与えられてしまった。
「何ぼけっとしてるんすか!早く今のを追うんすよ!!」
バキッ
「ぶふっ」
そんなサーラを現実に引き戻したのはアリエスだった。グーパンチで。
「シュウ先輩はきっとフローラに脅されてるんす!真実の愛なんてものが本当にあったら、娼館通いなんてしないっしょフツー」
「そ、そうか・・・!」
アリエスの正論に、口からダラダラと血を流しながらサーラはハッとする。
「例え本当に真実の愛とやらに即興で目覚めたとしても、まだ時間は経ってないからこっちがより深くて熱い愛で上書きしてやればいいっす!それでノーカンっす!」
「な、何にせよ追い付いて捕まえればいいんだな!」
気を取り直したサーラは、即座に姿を消したシュウ達の後を追う。
通りは完全に都民と混乱している騎士によって埋め尽くされており、走り抜けるスペースはない。サーラと同じくシュウ達を追い始めたアリエスは、即座に人の壁に飲まれてからぎゅうっと挟まれ「ぐふっ」と声を上げて口から血を吐き、無惨にも圧死した。
対してサーラは高く跳躍し、都民と騎士を踏み台にしながら後を追う。
壁を蹴り、走り、時には屋根に飛び乗り、人の壁を無視して飛び越えとにかく走った。
しかし・・・
「は、速い・・・!」
いかに人並み外れた高機動で追っているとはいえ、逃げる相手は並を大きく外れた巨大な馬である。それも騎士の壁すら障害のうちに入らないと言わんばかりに失速することなく突破してしまうのだ。
人の壁という障害物と格闘するサーラに元々追いつける相手ではない上に、昨日からの疲労がピークに達している。
(くそっ、こんなところで・・・!シュウ!!)
人の向いている方向を見れば、シュウ達がどの方向へ逃走したのかはわかる。見失っても、決して諦めずに走り続ければ、いずれは捕まえることが出来るはずだ・・・
その一心でサーラは足を動かすが、いくら気合を振り絞ったところで、やがては体の限界が訪れる。
「あふぅ・・・」
バターン
結局30分そこそこ走ったところで、サーラはついに力尽きて倒れてしまった。
実際体力の消耗を考えれば、これだけ走っただけ十分に大したものである。それも全てはシュウへの強烈な愛が為せた業であったが、しかしそれにも限界というものがあった。
「シュウ・・・頼む・・・行かないでくれぇ・・・」
地面に突っ伏し、悔し涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、なおもサーラは這い上がろうとする。
そんなサーラのところに、一人の盗賊風の男が近づいて話しかけた。
「アンタすげぇな。まるで東方の国のニンジャってやつみたいに滅茶苦茶早く走ってたじゃん。見ていて感心しちゃったよ」
素早さを売りにする盗賊を生業とする男は、サーラの快足に感動して話しかけたのだった。
「アタシがどれだけ速くたって・・・追いつけなきゃ意味がねぇんだよぉぉ」
涙声を震わせ、サーラは無理矢理体を起こそうと全身を奮い立たせる。
ここで諦めるわけにはいかないと。
だが、そんなサーラを見て、男は不思議そうに首を傾げながら言った。
「気になってたんだけど、そんだけ急いでんならどうしてそんな鎧と剣なんて重いもの持って走ってんのさ。それ脱いでいけばもっと速く長い距離まで走れただろうに」
「あっ・・・」
男の言葉が引き金になったのか、張り詰めた糸が切れたようにサーラの体から力が抜けた。体が限界のところまで来たところに来て、最後のとどめの精神的ショックがきっかけとなってサーラを支えたものが全て崩れ落ちてしまったのだ。
哀れサーラはアリエスと同じく、最後は志半ばにしてダウンした。
自分が目にした物を信じきれずに、サーラは呆然として俯いた。
元よりメンタルの脆いところ来て、不眠不休の大捜査の後なので余計にサーラの精神には大きなダメージが与えられてしまった。
「何ぼけっとしてるんすか!早く今のを追うんすよ!!」
バキッ
「ぶふっ」
そんなサーラを現実に引き戻したのはアリエスだった。グーパンチで。
「シュウ先輩はきっとフローラに脅されてるんす!真実の愛なんてものが本当にあったら、娼館通いなんてしないっしょフツー」
「そ、そうか・・・!」
アリエスの正論に、口からダラダラと血を流しながらサーラはハッとする。
「例え本当に真実の愛とやらに即興で目覚めたとしても、まだ時間は経ってないからこっちがより深くて熱い愛で上書きしてやればいいっす!それでノーカンっす!」
「な、何にせよ追い付いて捕まえればいいんだな!」
気を取り直したサーラは、即座に姿を消したシュウ達の後を追う。
通りは完全に都民と混乱している騎士によって埋め尽くされており、走り抜けるスペースはない。サーラと同じくシュウ達を追い始めたアリエスは、即座に人の壁に飲まれてからぎゅうっと挟まれ「ぐふっ」と声を上げて口から血を吐き、無惨にも圧死した。
対してサーラは高く跳躍し、都民と騎士を踏み台にしながら後を追う。
壁を蹴り、走り、時には屋根に飛び乗り、人の壁を無視して飛び越えとにかく走った。
しかし・・・
「は、速い・・・!」
いかに人並み外れた高機動で追っているとはいえ、逃げる相手は並を大きく外れた巨大な馬である。それも騎士の壁すら障害のうちに入らないと言わんばかりに失速することなく突破してしまうのだ。
人の壁という障害物と格闘するサーラに元々追いつける相手ではない上に、昨日からの疲労がピークに達している。
(くそっ、こんなところで・・・!シュウ!!)
人の向いている方向を見れば、シュウ達がどの方向へ逃走したのかはわかる。見失っても、決して諦めずに走り続ければ、いずれは捕まえることが出来るはずだ・・・
その一心でサーラは足を動かすが、いくら気合を振り絞ったところで、やがては体の限界が訪れる。
「あふぅ・・・」
バターン
結局30分そこそこ走ったところで、サーラはついに力尽きて倒れてしまった。
実際体力の消耗を考えれば、これだけ走っただけ十分に大したものである。それも全てはシュウへの強烈な愛が為せた業であったが、しかしそれにも限界というものがあった。
「シュウ・・・頼む・・・行かないでくれぇ・・・」
地面に突っ伏し、悔し涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、なおもサーラは這い上がろうとする。
そんなサーラのところに、一人の盗賊風の男が近づいて話しかけた。
「アンタすげぇな。まるで東方の国のニンジャってやつみたいに滅茶苦茶早く走ってたじゃん。見ていて感心しちゃったよ」
素早さを売りにする盗賊を生業とする男は、サーラの快足に感動して話しかけたのだった。
「アタシがどれだけ速くたって・・・追いつけなきゃ意味がねぇんだよぉぉ」
涙声を震わせ、サーラは無理矢理体を起こそうと全身を奮い立たせる。
ここで諦めるわけにはいかないと。
だが、そんなサーラを見て、男は不思議そうに首を傾げながら言った。
「気になってたんだけど、そんだけ急いでんならどうしてそんな鎧と剣なんて重いもの持って走ってんのさ。それ脱いでいけばもっと速く長い距離まで走れただろうに」
「あっ・・・」
男の言葉が引き金になったのか、張り詰めた糸が切れたようにサーラの体から力が抜けた。体が限界のところまで来たところに来て、最後のとどめの精神的ショックがきっかけとなってサーラを支えたものが全て崩れ落ちてしまったのだ。
哀れサーラはアリエスと同じく、最後は志半ばにしてダウンした。
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