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平行線ではありません
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「僕は暴力を浴び続けるエイミーを放っておくことが出来なかった。だから、彼女を連れてノアから遠ざけたのです。決して無理矢理ではありません。エイミーの意思があってのものです。それをノアは逆恨みして、誘拐されたなどと騒ぎ立てているのです」
ゼルスの言葉を聞き終えたシンは、表情も変えずに返した。
「それで?それがどうしましたか?エイミー・ノアさんが暴力を受けたことが事実だったとして、誘拐の届けが無効になるわけではありません。貴方は依然として誘拐の容疑者なのです」
「それは違います」
ゼルスは堂々と胸を張って、シンの言葉を否定する。
「私は勇者です。自分がどのような身分であり、そしてどのような権利を有しているか、理解しているつもりです」
能面のようなシンの表情が、僅かに険しくなったようにレイには見えた。
「勇者には独自の判断で超法規的措置が取れるーーー その基準は様々で、『天災、または人ないし魔物による脅威から自分を含む人類を守るとき』も条件に含まれます。私はエイミーがノア伯爵令息から暴力を受けていることを知り、彼女を保護するために連れ出したに過ぎません。か弱い女性・・・それも私の顔見知りが酷い目にあっていて、それを放置しておくことはできませんからね」
堂々と言ってのけるゼルス。
あまりに堂々とし過ぎていて、本当に正しいことをしているのでは?と一瞬レイは思ってしまいそうになった。
確かに勇者にはそのような権利が与えられていることをレイも知っている。勇者の持つ強い権利の一つだった。だが、残念ながらその権利を悪用する勇者が存在することもまた事実である。
当然ながら、ゼルスの言葉を聞いたシンがそのまま頷くことはない。
「ではそのような事実があったかどうか、我々のほうでエイミー様ご自身のご協力の元に調査をしなければなりませんね。そういうわけで、エイミー・ノアさんを我々に引き渡していただけますか?」
シンの言葉に、ゼルスは眉を顰めて即答する。
「それは出来かねます。貴方達がノア伯爵令息に引き渡してしまう可能性がある」
「そこは我々を信用していただくしか。いずれにせよ、現状ままではゼルス様は誘拐の容疑者のままでございます」
あくまでゼルスの言葉は信じない、そんな態度を前面に出し続けるシンに対して、僅かながらに表情を歪めるゼルス。しばらく間を置いたかと思うと、ゼルスは大きく溜め息をついた。
「やれやれ、平行線ですね・・・」
かぶりを振り、肩を窄める。
平静を保とうとあえてそうしているのか、大袈裟なリアクションだ。
「平行線ではありません。もう一度言いますが、以前ゼルス様は誘拐の容疑者です。時間が経つにつれ、貴方様の立場は悪くなることになります。こうして話をしている今この時にも、こちらの捜査は進んでいるのです」
しかしなおもシンは話を続ける。
ゼルスのペースに付き合おうとはしない。
「お帰り願おう。到底話になりません。エイミーが戻ることはありませんよ」
ゼルスは苛立たし気にシンの言葉を遮るように唐突に立ち上がり、話を切り上げた。
ゼルスの言葉を聞き終えたシンは、表情も変えずに返した。
「それで?それがどうしましたか?エイミー・ノアさんが暴力を受けたことが事実だったとして、誘拐の届けが無効になるわけではありません。貴方は依然として誘拐の容疑者なのです」
「それは違います」
ゼルスは堂々と胸を張って、シンの言葉を否定する。
「私は勇者です。自分がどのような身分であり、そしてどのような権利を有しているか、理解しているつもりです」
能面のようなシンの表情が、僅かに険しくなったようにレイには見えた。
「勇者には独自の判断で超法規的措置が取れるーーー その基準は様々で、『天災、または人ないし魔物による脅威から自分を含む人類を守るとき』も条件に含まれます。私はエイミーがノア伯爵令息から暴力を受けていることを知り、彼女を保護するために連れ出したに過ぎません。か弱い女性・・・それも私の顔見知りが酷い目にあっていて、それを放置しておくことはできませんからね」
堂々と言ってのけるゼルス。
あまりに堂々とし過ぎていて、本当に正しいことをしているのでは?と一瞬レイは思ってしまいそうになった。
確かに勇者にはそのような権利が与えられていることをレイも知っている。勇者の持つ強い権利の一つだった。だが、残念ながらその権利を悪用する勇者が存在することもまた事実である。
当然ながら、ゼルスの言葉を聞いたシンがそのまま頷くことはない。
「ではそのような事実があったかどうか、我々のほうでエイミー様ご自身のご協力の元に調査をしなければなりませんね。そういうわけで、エイミー・ノアさんを我々に引き渡していただけますか?」
シンの言葉に、ゼルスは眉を顰めて即答する。
「それは出来かねます。貴方達がノア伯爵令息に引き渡してしまう可能性がある」
「そこは我々を信用していただくしか。いずれにせよ、現状ままではゼルス様は誘拐の容疑者のままでございます」
あくまでゼルスの言葉は信じない、そんな態度を前面に出し続けるシンに対して、僅かながらに表情を歪めるゼルス。しばらく間を置いたかと思うと、ゼルスは大きく溜め息をついた。
「やれやれ、平行線ですね・・・」
かぶりを振り、肩を窄める。
平静を保とうとあえてそうしているのか、大袈裟なリアクションだ。
「平行線ではありません。もう一度言いますが、以前ゼルス様は誘拐の容疑者です。時間が経つにつれ、貴方様の立場は悪くなることになります。こうして話をしている今この時にも、こちらの捜査は進んでいるのです」
しかしなおもシンは話を続ける。
ゼルスのペースに付き合おうとはしない。
「お帰り願おう。到底話になりません。エイミーが戻ることはありませんよ」
ゼルスは苛立たし気にシンの言葉を遮るように唐突に立ち上がり、話を切り上げた。
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