勇者の処分いたします

はにわ

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キラに襲い掛かる現実

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元勇者キラより勇者の称号が剥奪されてから一か月後、かつて勇者と呼ばれその名を轟かせたキラは、その当時とは同一人物とは思えないほどに見苦しい姿になっていた。

サラサラだった髪はボサボサになり、髭は伸びっぱなし。眉目秀麗だった顔も、目の下にはクマができ、頬はやつれ、今ではまるで見る影もない。

キラは橋の下に座り込み、酒を飲んでいた。

この一か月、キラは一から出直そうと再出発を試みた。
だが人目のある酒場でマリアの追放、そしてバットンの離脱宣告があったため、キラに何があったのかは知り合いの面々には全て知られてしまっており、その結果再出発は多難を極めた。

まず、世話になっていた冒険者ギルドでは見事な塩対応となっていた。
これまでマリアがキラに代わり必死に書類関連の提出や手続きを行っていたために、キラよりもマリアの方が顔が知れており、事務員との中も良かったのである。
そんなマリアを手ひどく追放したキラに対し、ギルドは仕事であるからと表面的には相手をしたものの、その態度は辛辣であった。
新たな仲間の募集に関しても、ギルドは精力的には協力せず、また悪い噂が流れていたのもあって誰一人としてキラの仲間に入ろうという者はいなかった。

そして勇者の称号を剥奪されて、また一から下位の冒険者として出直すキラは他の冒険者からの風当たりも強かった。カースト上位にいた者が最下位まで落ちてくれば、どこであっても絡む者は出てくる。

問題はギルドだけではなく、他でも様々なところで起きた。
いつも買い物をする商店でもゴミを見るような目で見られた。いつも愛想よく、いくらかオマケしてくれていた優しそうな店主が、キラに対しさっさと出てってくれと言わんばかりの態度で接したのだ。
ここでもマリアがいつもキラに変わって買い出しを行ってくれていたから、店主はマリアの追放について怒っていたのだ。

商店でも、食堂でも、昔使っていた安宿でも、マリアのことを知る所ではどこでもキラは敵視された。
もはや王都に彼の味方はいないといって良かった。

勇者というのは人からの人望がある程度集まっているというのも認定されるための条件となっている。
キラ自身はその条件を到底満たしてなかった。あくまでマリアがいたから勇者になれたのだと、改めてキラは現実を突きつけられ、心は憔悴していった。
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