14 / 54
キラが勇者から排除された事情
しおりを挟む
「それでは勇者フレイルよ。王国の名に恥じぬ行いを心掛け、民草の手本となるべく励むがよい」
「ありがたき幸せに存じます」
王城の謁見室に置いて、一つの儀式が終わりを迎えた。
それはかつてキラも経験した、ラバース国の国王の名の元に新たな勇者が認定される儀式である。
この日、キラと入れ替わるように新たな勇者が王によって認定された。
ーーーーーーーーーー
「いやいや、良くぞ間に合わせてくれた。よくやったぞ室長」
宰相が弾けるような笑顔で室長と呼んだ男の肩を叩いた。
「恐縮です」
室長は無表情で静かにそうとだけ答える。
「頼りになるな。これからも期待しているぞ」
室長の態度などまるで気にしていない風に、宰相は笑いながら去っていった。
「つつがなく終わったようで何よりです室長」
王城の一室にある『王室調査室』こと通称『王調』と呼ばれる組織の本部にて、王調の室長を務めるベントに王調の職員であるシンが声をかけた。
「いや、君たちの活躍あってこそだ。よくやってくれた」
ベントはシンをそう言って労った。
「定員オーバーの勇者様の中から一人を排除して、どうにか新しい勇者様をねじ込めと言われたときはどんな無茶をしてこれを叶えなければならないのかと愕然としたよ。今回はシン君に大分無理をさせたな」
「いえ、たまたまです」
シンは謙遜してそう答える。
今回、王調が王室より下された命は通常なら完遂するに困難を極めるものであった。
ラバース王国では国威高揚の一環として勇者認定制度を取り入れている。
武が優れ人格に問題もない人間の中から、特に優秀な者を勇者として国が認定し、強い権利と名声を与えながらも、通常の冒険者や軍でも対処しきれない事案について勅命を出し、これを解決してもらう。こうした「勇者」は国でも30人まで認定されていた。
勅命は時に国外はおろか魔境に人を遣わすこともあるくらいなので、30人勇者がいても多すぎるということはない。
だが、勇者を一人一人サポートするために莫大な国税が投入されているのも事実である。
よって、勇者の数は30人までと定められていた。
ここ数か月前までは特に問題はなかったが、とある公爵家の三男が冒険者として家を飛び出したと思ったら、優秀な名うての冒険者として里帰りするという出来事があった。
公爵家は三男を勇者として認定してくれと王室に持ち掛けてきた。だが、既に認定された勇者は30人いっぱいいっぱいであった。新たに認定をすることは出来ない。
ならば・・・
新たに公爵家の三男を勇者としてねじ込むため、既存の勇者の中から一人どうにか排除せよという命を王調は拝命したのだった。
「ありがたき幸せに存じます」
王城の謁見室に置いて、一つの儀式が終わりを迎えた。
それはかつてキラも経験した、ラバース国の国王の名の元に新たな勇者が認定される儀式である。
この日、キラと入れ替わるように新たな勇者が王によって認定された。
ーーーーーーーーーー
「いやいや、良くぞ間に合わせてくれた。よくやったぞ室長」
宰相が弾けるような笑顔で室長と呼んだ男の肩を叩いた。
「恐縮です」
室長は無表情で静かにそうとだけ答える。
「頼りになるな。これからも期待しているぞ」
室長の態度などまるで気にしていない風に、宰相は笑いながら去っていった。
「つつがなく終わったようで何よりです室長」
王城の一室にある『王室調査室』こと通称『王調』と呼ばれる組織の本部にて、王調の室長を務めるベントに王調の職員であるシンが声をかけた。
「いや、君たちの活躍あってこそだ。よくやってくれた」
ベントはシンをそう言って労った。
「定員オーバーの勇者様の中から一人を排除して、どうにか新しい勇者様をねじ込めと言われたときはどんな無茶をしてこれを叶えなければならないのかと愕然としたよ。今回はシン君に大分無理をさせたな」
「いえ、たまたまです」
シンは謙遜してそう答える。
今回、王調が王室より下された命は通常なら完遂するに困難を極めるものであった。
ラバース王国では国威高揚の一環として勇者認定制度を取り入れている。
武が優れ人格に問題もない人間の中から、特に優秀な者を勇者として国が認定し、強い権利と名声を与えながらも、通常の冒険者や軍でも対処しきれない事案について勅命を出し、これを解決してもらう。こうした「勇者」は国でも30人まで認定されていた。
勅命は時に国外はおろか魔境に人を遣わすこともあるくらいなので、30人勇者がいても多すぎるということはない。
だが、勇者を一人一人サポートするために莫大な国税が投入されているのも事実である。
よって、勇者の数は30人までと定められていた。
ここ数か月前までは特に問題はなかったが、とある公爵家の三男が冒険者として家を飛び出したと思ったら、優秀な名うての冒険者として里帰りするという出来事があった。
公爵家は三男を勇者として認定してくれと王室に持ち掛けてきた。だが、既に認定された勇者は30人いっぱいいっぱいであった。新たに認定をすることは出来ない。
ならば・・・
新たに公爵家の三男を勇者としてねじ込むため、既存の勇者の中から一人どうにか排除せよという命を王調は拝命したのだった。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
妹しか愛していない母親への仕返しに「わたくしはお母様が男に無理矢理に犯されてできた子」だと言ってやった。
ラララキヲ
ファンタジー
「貴女は次期当主なのだから」
そう言われて長女のアリーチェは育った。どれだけ寂しくてもどれだけツラくても、自分がこのエルカダ侯爵家を継がなければいけないのだからと我慢して頑張った。
長女と違って次女のルナリアは自由に育てられた。両親に愛され、勉強だって無理してしなくてもいいと甘やかされていた。
アリーチェはそれを羨ましいと思ったが、自分が長女で次期当主だから仕方がないと納得していて我慢した。
しかしアリーチェが18歳の時。
アリーチェの婚約者と恋仲になったルナリアを、両親は許し、二人を祝福しながら『次期当主をルナリアにする』と言い出したのだ。
それにはもうアリーチェは我慢ができなかった。
父は元々自分たち(子供)には無関心で、アリーチェに厳し過ぎる教育をしてきたのは母親だった。『次期当主だから』とあんなに言ってきた癖に、それを簡単に覆した母親をアリーチェは許せなかった。
そして両親はアリーチェを次期当主から下ろしておいて、アリーチェをルナリアの補佐に付けようとした。
そのどこまてもアリーチェの人格を否定する考え方にアリーチェの心は死んだ。
──自分を愛してくれないならこちらもあなたたちを愛さない──
アリーチェは行動を起こした。
もうあなたたちに情はない。
─────
◇これは『ざまぁ』の話です。
◇テンプレ [妹贔屓母]
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング〔2位〕(4/19)☆ファンタジーランキング〔1位〕☆入り、ありがとうございます!!
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です
びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
告知となりますが、2022年8月下旬に『転異世界のアウトサイダー』の3巻が発売となります。
それに伴い、第三巻収録部分を改稿しました。
高校生の佐藤悠斗は、ある日、カツアゲしてきた不良二人とともに異世界に転移してしまう。彼らを召喚したマデイラ王国の王や宰相によると、転移者は高いステータスや強力なユニークスキルを持っているとのことだったが……悠斗のステータスはほとんど一般人以下で、スキルも影を動かすだけだと判明する。後日、迷宮に不良達と潜った際、無能だからという理由で囮として捨てられてしまった悠斗。しかし、密かに自身の能力を進化させていた彼は、そのスキル『影魔法』を駆使して、ピンチを乗り切る。さらには、道中で偶然『召喚』スキルをゲットすると、なんと大天使や神様を仲間にしていくのだった――規格外の仲間と能力で、どんな迷宮も手軽に攻略!? お騒がせ影使いの異世界放浪記、開幕!
いつも応援やご感想ありがとうございます!!
誤字脱字指摘やコメントを頂き本当に感謝しております。
更新につきましては、更新頻度は落とさず今まで通り朝7時更新のままでいこうと思っています。
書籍化に伴い、タイトルを微変更。ペンネームも変更しております。
ここまで辿り着けたのも、みなさんの応援のおかげと思っております。
イラストについても本作には勿体ない程の素敵なイラストもご用意頂きました。
引き続き本作をよろしくお願い致します。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
押し付けられた仕事は致しません。
章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。
書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。
『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる