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賢者リノア
ニュー・リノア
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「リノア・・・?一体どうしたんだ?そんなことを言う子じゃなかっただろう。やっぱり僕が連絡しなかったことで拗ねているのかい」
戸惑いながらも、トマスは笑顔を浮かべて優しく言った。
ゴウキのことについては触れない。
ゴウキの名がリノアの口から出たこと以上に、トマスに対して辛辣な言葉を吐いたことがショックだったからだ。トマスの知るリノアは誰に対してもそんなことを言う人間ではなかった。
いつだって自分に優しい笑みを見せてくれていた。
これはトマスの思い込みじゃなくて事実である。村にいた頃のリノアは他人に対して辛辣な言葉を吐くようなことはしなかった。
それは村というそれまでのリノアの世界の中では、自分が一番取柄も何もない最下層の人間だと思っていたからだ。だから自分以外の人間に対して厳しいことを言ったことはなかった。
心の思うところはあっても、全て飲み込んだ。悪意を悪意で返すなんてことはしなかった。
それは異常なほどに自己肯定感が低かったせいだ。
だが今は違う。
リノアは自分に自信を持つことが出来たし、自分で考えて行動するようにもなった。
だからトマスに言い包められるなんてことはないし、むしろ彼を拒絶することも出来るのである。
「そんなことを言う子じゃなかった・・・か。そうね。私は変わったの。ゴウキ先輩のお陰でね・・・言うなれば今の私は、ニュー・リノアかな?」
「ニュー・・・え?」
トマスの知るリノアは、ユーモアというものはあまりなかった。だからリノアのお茶目な発言を聞いて、一瞬耳を疑ってしまう。
リノアの言葉を聞いた周囲の冒険者達は失笑した。
「ま、そんなわけで昔の私はもういないの。今の私には今の生活があるし、これからの私にもトマスのことは必要ないと思う。私に必要なのは、本当に必要なときに私を見捨てないでくれたゴウキ先輩だけ。トマスじゃないの」
満面の笑みでそう言うリノアに対し、トマスは言葉を失う。
リノアはこれ以上は話すことはないと言わんばかりに踵を返し、ギルドの奥へ向かっていく。
「ちょ・・・待って・・・」
愕然としながらも、それでも気丈に呼び止めようとするトマスは、そこで急に後ろから服を強い力で掴まれた。
「しつこい男は嫌われるぜ兄ちゃんよ。まぁ、もう手遅れか。とにかくもう諦めな」
そう言うのは、冒険者風でガラの悪い男だった。ゴウキ・ファミリーの一員である。
リノアの邪魔になると判断し、男はトマスの体を力づくでずるずると引きずっていき、そしてギルドの入口から外へ向かって放り投げた。
「もう関わらないほうがいいぜ。これ以上はどうなっても知らねぇぞ?」
そう警告を発し、男はギルド内へ戻っていく。
トマスは呆然とし、フォースギルドの入口をしばらく見つめていたが、乱暴に退出させられたトマスを心配してリノアがやってくる・・・なんて妄想をしたものの、そんなことはなかった。
戸惑いながらも、トマスは笑顔を浮かべて優しく言った。
ゴウキのことについては触れない。
ゴウキの名がリノアの口から出たこと以上に、トマスに対して辛辣な言葉を吐いたことがショックだったからだ。トマスの知るリノアは誰に対してもそんなことを言う人間ではなかった。
いつだって自分に優しい笑みを見せてくれていた。
これはトマスの思い込みじゃなくて事実である。村にいた頃のリノアは他人に対して辛辣な言葉を吐くようなことはしなかった。
それは村というそれまでのリノアの世界の中では、自分が一番取柄も何もない最下層の人間だと思っていたからだ。だから自分以外の人間に対して厳しいことを言ったことはなかった。
心の思うところはあっても、全て飲み込んだ。悪意を悪意で返すなんてことはしなかった。
それは異常なほどに自己肯定感が低かったせいだ。
だが今は違う。
リノアは自分に自信を持つことが出来たし、自分で考えて行動するようにもなった。
だからトマスに言い包められるなんてことはないし、むしろ彼を拒絶することも出来るのである。
「そんなことを言う子じゃなかった・・・か。そうね。私は変わったの。ゴウキ先輩のお陰でね・・・言うなれば今の私は、ニュー・リノアかな?」
「ニュー・・・え?」
トマスの知るリノアは、ユーモアというものはあまりなかった。だからリノアのお茶目な発言を聞いて、一瞬耳を疑ってしまう。
リノアの言葉を聞いた周囲の冒険者達は失笑した。
「ま、そんなわけで昔の私はもういないの。今の私には今の生活があるし、これからの私にもトマスのことは必要ないと思う。私に必要なのは、本当に必要なときに私を見捨てないでくれたゴウキ先輩だけ。トマスじゃないの」
満面の笑みでそう言うリノアに対し、トマスは言葉を失う。
リノアはこれ以上は話すことはないと言わんばかりに踵を返し、ギルドの奥へ向かっていく。
「ちょ・・・待って・・・」
愕然としながらも、それでも気丈に呼び止めようとするトマスは、そこで急に後ろから服を強い力で掴まれた。
「しつこい男は嫌われるぜ兄ちゃんよ。まぁ、もう手遅れか。とにかくもう諦めな」
そう言うのは、冒険者風でガラの悪い男だった。ゴウキ・ファミリーの一員である。
リノアの邪魔になると判断し、男はトマスの体を力づくでずるずると引きずっていき、そしてギルドの入口から外へ向かって放り投げた。
「もう関わらないほうがいいぜ。これ以上はどうなっても知らねぇぞ?」
そう警告を発し、男はギルド内へ戻っていく。
トマスは呆然とし、フォースギルドの入口をしばらく見つめていたが、乱暴に退出させられたトマスを心配してリノアがやってくる・・・なんて妄想をしたものの、そんなことはなかった。
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