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賢者リノア
あるいはそれはリノアの初恋?
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「やぁリノア。今日は何を読んでいるの?」
リノアはいつも誰もいない小屋の裏側で本を読んでいた。家で読んでいると邪魔者扱いされるからだ。
そこで誰の邪魔にもならない外で本を読むことにしていたのだが、そうしているとたまにトマスが顔を出していた。
「今日は新しい白魔法の魔術書・・・結構古い本だけど、丁度安く行商人から手に入って・・・」
おずおずとそう答えるリノアに、トマスはにっこりと笑って言った。
「勉強熱心だねリノアは。本当に凄いと思うよ」
褒められて照れてしまったリノアは、一瞬にして顔を真っ赤にさせると俯いてしまう。
「凄くなんてないよ!私はただこうして勉強して知識を蓄えることしか出来ないもん・・・どれだけ知識を蓄えたって、実践出来なきゃ意味がないし・・・」
「いやいや、知識が無駄になるなんてことはないよ。白魔法使いとしての才能が開花しなかったのは確かに残念だけど、まだこの先はわからないし、きっと知識も何かに生かせるはずだよ」
「うん、ありがとう・・・」
白魔法使いとして才能を開花させることが出来なかったリノアに対し、彼女の家族は露骨に落胆した。
辺境の村では白魔法使いは低レベルでも貴重な存在だ。需要がある故に安定した収入を得ることが可能なので、リノアの稼ぎをいくらかアテにしようと両親は考えていたのだ。
だが、リノアはどれだけ勉強や練習しても白魔法を使いこなすことが出来ず、結局役立たずは役立たずのままだと勝手に落胆され、彼女は更に家での居場所を失った。
それでもリノアは白魔法の勉強をやめることはなかったが、そんな彼女に理解を示しす人間はいなかった。「何を無駄なことを」程度にしか思われなかったのだ。
しかし例外がいた。それがトマスだった。
「古い魔術書なの?新しいのじゃなくて?」
日進月歩する魔法学を学ぶにあたり、参考にする魔術書は基本的に新しければ新しいほど良い。特に研究の活発な回復魔法などは十年前は常識とされた事も、現在では非常識とひっくり返ることがザラだからだ。トマスが疑問を投げかけると、リノアは目を輝かせながら言った。
「古い魔術書も捨てたものじゃないんだよ!確かに術式を組む上で現代では非効率だと思えるところもあるんだけど、その代わり細かい調整が利いてより幅広い(略)」
魔法に関することだと饒舌になるリノア。
これもまた彼女が魔法使いの少ない村で疎まれる理由であるのだが、トマスはそれにきちんと耳を傾けて相槌を打つ。
リノアにとってトマスとの時間はかけがえの無い時間だった。
このとき、まだリノアに実感は無かったが、もしかしたらこれが初恋だったのかもしれない。
リノアはいつも誰もいない小屋の裏側で本を読んでいた。家で読んでいると邪魔者扱いされるからだ。
そこで誰の邪魔にもならない外で本を読むことにしていたのだが、そうしているとたまにトマスが顔を出していた。
「今日は新しい白魔法の魔術書・・・結構古い本だけど、丁度安く行商人から手に入って・・・」
おずおずとそう答えるリノアに、トマスはにっこりと笑って言った。
「勉強熱心だねリノアは。本当に凄いと思うよ」
褒められて照れてしまったリノアは、一瞬にして顔を真っ赤にさせると俯いてしまう。
「凄くなんてないよ!私はただこうして勉強して知識を蓄えることしか出来ないもん・・・どれだけ知識を蓄えたって、実践出来なきゃ意味がないし・・・」
「いやいや、知識が無駄になるなんてことはないよ。白魔法使いとしての才能が開花しなかったのは確かに残念だけど、まだこの先はわからないし、きっと知識も何かに生かせるはずだよ」
「うん、ありがとう・・・」
白魔法使いとして才能を開花させることが出来なかったリノアに対し、彼女の家族は露骨に落胆した。
辺境の村では白魔法使いは低レベルでも貴重な存在だ。需要がある故に安定した収入を得ることが可能なので、リノアの稼ぎをいくらかアテにしようと両親は考えていたのだ。
だが、リノアはどれだけ勉強や練習しても白魔法を使いこなすことが出来ず、結局役立たずは役立たずのままだと勝手に落胆され、彼女は更に家での居場所を失った。
それでもリノアは白魔法の勉強をやめることはなかったが、そんな彼女に理解を示しす人間はいなかった。「何を無駄なことを」程度にしか思われなかったのだ。
しかし例外がいた。それがトマスだった。
「古い魔術書なの?新しいのじゃなくて?」
日進月歩する魔法学を学ぶにあたり、参考にする魔術書は基本的に新しければ新しいほど良い。特に研究の活発な回復魔法などは十年前は常識とされた事も、現在では非常識とひっくり返ることがザラだからだ。トマスが疑問を投げかけると、リノアは目を輝かせながら言った。
「古い魔術書も捨てたものじゃないんだよ!確かに術式を組む上で現代では非効率だと思えるところもあるんだけど、その代わり細かい調整が利いてより幅広い(略)」
魔法に関することだと饒舌になるリノア。
これもまた彼女が魔法使いの少ない村で疎まれる理由であるのだが、トマスはそれにきちんと耳を傾けて相槌を打つ。
リノアにとってトマスとの時間はかけがえの無い時間だった。
このとき、まだリノアに実感は無かったが、もしかしたらこれが初恋だったのかもしれない。
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