上 下
337 / 506
ゴウキ・ファミリー

勇者クレア達 その3

しおりを挟む
クレア達は呆然自失となりながら、刀鍛冶を店を出た。
自分達が超掘り出し物と思って購入したそれが詐欺に使われていたナマクラだと知った衝撃は計り知れなかった。
クレア達は伝説エクスカリバーの存在とその姿を王城図書館にある書物で知ったが、店主曰く実はその書物は王城にしか無いのではなく、少数ではあるが世界中に出回っているらしい。
そして刀剣に興味のある者であれば、その存在は大概は知っているだろうという。だからこそエクスカリという偽物が出回り、被害者も多く出たのである。

世代を越えた若者に被害者が出るとは思わなかったと店主は笑っていたが、クレア達は到底笑えるものではなかった。
何しろ彼女達はこの遠征にて貴族から貰った依頼料の大半をそのエクスカリパーに費やしてしまったのだから、無気力になるのも無理はない。大変な遠征ではあったが、報酬がそこそこまとまって貰えたことが救いとなっていたのだ。
本来彼女らは金にはそこまで執着しないが、セントラルギルドの搾取によってうまく買い出しも出来ず、資金繰りはそれほど良好とは言えなかった。だからこそ、この大金を詐欺によって失ってしまったことは耐えがたいほどの精神的ダメージを負わせることになる。



「買い物するときの注意。お買い得だと思ったやつは・・・特に高い買い物をする時は、それが本当に買って良いものかしっかりと吟味しないと駄目だ」


クレアはかつてゴウキに言われた言葉を思い出していた。

これだと思う掘り出し物を見つけたときや、良い取引を持ち掛けられたときも、ゴウキがパーティーにいたときは念入りに購入前の品物を取り調べていた。


「冒険者間の騙し騙されるってのは、普通にあるもんらしいからな。調べるにこしたことはねぇ」


商品は自分を疑われたことで気分を害し、その場から立ち去った者もいた。
そのたびにクレアは疑ってしまい申し訳ない気持ちになったが、それでもゴウキは相手がどのような態度に出ようと、変わることなく徹底して取引の場には立ち会っていた。

実際それで付き合いの無くなった商人や冒険者もいたが


「高い買い物で疑ってかかるのはある程度仕方がねぇことだ。それが嫌だというのなら、元々性格的に縁が無かったか、そいつにやましいことがあるってことだ」


とゴウキは言って譲らなかった。
これについてもリフトとしばしば衝突していたが、それでもゴウキの念入りの下調べのお陰で、彼がいる間は詐欺に遭うことはなかった。

だからだろうか・・・クレアは冒険者に対する詐欺の件数は多いなどという事実を知りもしなかったのである。
ゴウキは疑り深い、その程度にしか考えていなかったことを、クレアは今このとき初めて後悔していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

急に妹に絶縁されて俺は家を出て行った。そしてドッキリだとは俺は知らない。

ああああ
恋愛
急に妹に絶縁されて俺は家を出て行った。そしてドッキリだとは俺は知らない。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

旅行中に彼女が取られたけど、旅行先で俺は

ああああ
恋愛
旅行中に彼女が取られたけど、旅行先で俺は

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...