328 / 506
ゴウキ・ファミリー
用心棒
しおりを挟む
「大変ですっ!!冒険者らしき人が店で暴れてるんです!すぐに来てくださいっ!!」
セントラルギルドの職員ラッツが営業でもぎ取った巡回警備。その依頼を受けたのはB級冒険者のスコットであったが、そんな彼に元に依頼主の酒場から連絡が入った。
「はいはい、お任せっとぉ・・・」
巨漢のスコットはやや気だるげに自らの得物である斧を手に取ると、やってきた従業員の後を追って現場へと急行した。
B級冒険者といえばバルジ王国の基準でも一人前と言えるほどで、基本的には十分に食っていけるだけの収入が貰えるランクである。
だが、スコットはギャンブルと女で少しばかり借金があった。
またここ最近はギルドの買い取りが金を渋るようになったので、少しばかり首が回りづらい状況になっている。
そこでスコットが受けることにしたのが、どういうわけが普段の相場より割の良い報酬が出ることになっている巡回警備の依頼だった。
「はぁ~、まさかこの俺がな・・・」
もう数年しないうちに、A級冒険者も夢ではない・・・そう評されているほどの腕前を持つスコットだが、「食いつめ者がやる仕事」と言われている巡回警備の仕事をやらざるを得ない状況になっていることを嘆く。自業自得とはいえ、いまだ彼は納得できないでいた。
「ここです!」
従業員に促され、スコットは店内に入る。
「お~お~・・・」
机はひっくり返り、瓶は割れ、店は盛大に荒らされていた。
そして店の中央に立って一人の男を殴りつけている冒険者がいる。スコット以上の巨漢を誇る、筋量の凄まじい大男であった。どうやら酔った末の喧嘩らしく、殴られている冒険者は既に意識がない状態であるようだった。このままでは人死にが出てしまう。
「おぅ、あんたその辺でやめときな!」
自分よりも巨漢である大男に対して、スコットは怯むことなく声をかけた。
ダンジョンの奥の魔物は人間より大きいのがワラワラいる。多少自分より大きい人間がいたとて、なんとも思わないのがスコットのような中級以上の冒険者だ。
どぉぉぉん!
だが、そんなスコットが一瞬にして壁に叩きつけられる。
「なっ・・・!?」
一瞬、何が起こったのかわからなかったスコットは、飛びそうになる意識をどうにか保ち、得物を持って立ち上がった。
「!?」
次の瞬間、スコットの視界いっぱいに前蹴りを繰り出す大男の姿が入った。
「あだばっ!」
スコットはなすすべもなくフッ飛ばされ、ピンボールのように酒場の壁に弾かれて動かなくなった。
「なんだぁてめぇ?A級冒険者の俺にかなうと思ってんのかぁ!?」
酔っぱらった大男がやや呂律の回らない声で叫ぶ。
(A級冒険者!運がねぇ・・・まさか格上に当たるなんて・・・)
王都ではランクの高い冒険者が事件を起こすことは稀だ。
何しろ問題を起こせば即座にライセンスの剥奪、もしくは格下げがあるからだ。格が高くなればなるほど、事件を起こすような冒険者は少なくなる。
しかし、このときスコットが出会ったのは数少ない例外であった。
「ちっ・・・依頼失敗かよ・・・」
消え入りそうな意識をどうにか保つスコットだが、既に得物を持つ力も残ってなかった。
そんなときである。
「おぅ、もうその辺でやめとけよ」
大男の前に立ちはだかった男の姿がスコットの目に入った。
「あいつは・・・」
男のことはスコットも知っていた。
ある意味、今王都で最も有名な男・・・ゴウキがそこにいたのである。
セントラルギルドの職員ラッツが営業でもぎ取った巡回警備。その依頼を受けたのはB級冒険者のスコットであったが、そんな彼に元に依頼主の酒場から連絡が入った。
「はいはい、お任せっとぉ・・・」
巨漢のスコットはやや気だるげに自らの得物である斧を手に取ると、やってきた従業員の後を追って現場へと急行した。
B級冒険者といえばバルジ王国の基準でも一人前と言えるほどで、基本的には十分に食っていけるだけの収入が貰えるランクである。
だが、スコットはギャンブルと女で少しばかり借金があった。
またここ最近はギルドの買い取りが金を渋るようになったので、少しばかり首が回りづらい状況になっている。
そこでスコットが受けることにしたのが、どういうわけが普段の相場より割の良い報酬が出ることになっている巡回警備の依頼だった。
「はぁ~、まさかこの俺がな・・・」
もう数年しないうちに、A級冒険者も夢ではない・・・そう評されているほどの腕前を持つスコットだが、「食いつめ者がやる仕事」と言われている巡回警備の仕事をやらざるを得ない状況になっていることを嘆く。自業自得とはいえ、いまだ彼は納得できないでいた。
「ここです!」
従業員に促され、スコットは店内に入る。
「お~お~・・・」
机はひっくり返り、瓶は割れ、店は盛大に荒らされていた。
そして店の中央に立って一人の男を殴りつけている冒険者がいる。スコット以上の巨漢を誇る、筋量の凄まじい大男であった。どうやら酔った末の喧嘩らしく、殴られている冒険者は既に意識がない状態であるようだった。このままでは人死にが出てしまう。
「おぅ、あんたその辺でやめときな!」
自分よりも巨漢である大男に対して、スコットは怯むことなく声をかけた。
ダンジョンの奥の魔物は人間より大きいのがワラワラいる。多少自分より大きい人間がいたとて、なんとも思わないのがスコットのような中級以上の冒険者だ。
どぉぉぉん!
だが、そんなスコットが一瞬にして壁に叩きつけられる。
「なっ・・・!?」
一瞬、何が起こったのかわからなかったスコットは、飛びそうになる意識をどうにか保ち、得物を持って立ち上がった。
「!?」
次の瞬間、スコットの視界いっぱいに前蹴りを繰り出す大男の姿が入った。
「あだばっ!」
スコットはなすすべもなくフッ飛ばされ、ピンボールのように酒場の壁に弾かれて動かなくなった。
「なんだぁてめぇ?A級冒険者の俺にかなうと思ってんのかぁ!?」
酔っぱらった大男がやや呂律の回らない声で叫ぶ。
(A級冒険者!運がねぇ・・・まさか格上に当たるなんて・・・)
王都ではランクの高い冒険者が事件を起こすことは稀だ。
何しろ問題を起こせば即座にライセンスの剥奪、もしくは格下げがあるからだ。格が高くなればなるほど、事件を起こすような冒険者は少なくなる。
しかし、このときスコットが出会ったのは数少ない例外であった。
「ちっ・・・依頼失敗かよ・・・」
消え入りそうな意識をどうにか保つスコットだが、既に得物を持つ力も残ってなかった。
そんなときである。
「おぅ、もうその辺でやめとけよ」
大男の前に立ちはだかった男の姿がスコットの目に入った。
「あいつは・・・」
男のことはスコットも知っていた。
ある意味、今王都で最も有名な男・・・ゴウキがそこにいたのである。
0
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる