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ゴウキ・ファミリー

切り札

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牙は大きく、頸部は広く、広がった図体のわりに全長はやや短いーー デニスの見かけた巨大な蛇の身体的な特徴はそれであった。
しかし、それよりも気になることがある。


「こいつ・・・邪気がある?」


サンドワームには感じなかった、じわじわと伝わってくるような圧倒的な邪気がその蛇からは感じられたことにデニスは驚愕する。ここに来るまでに仕留めてきた魔物とは違う・・・感覚的にデニスはそれを理解していた。


「いけっ!パフちゃん!!」


ハンマが叫ぶ。
パフちゃんと呼ばれたこの巨大蛇はキングパフアルダという名の砂漠に出没する魔物で、これもまた盗賊団が子飼いにしている魔物の一つであった。大きさそのものはサンドワームやサンドアリジゴクに劣るが、噛まれたときに注入される毒があまりに強く、回復魔法すら間に合わないことが多いために非常に脅威の大きな魔物である。
元来ならばこのパフちゃんと呼ばれる蛇は緊急時すぐにでも出したいほどに強力な仲間であったはずだった。だが、そうしなかったのには理由があった。
しかし今は非常事態。使用にはリスクがあったが、自分達が助かるためにあえてハンマは切り札を切った。


「こいつっ・・・何者・・・」


デニスの頬を冷たい汗が伝う。
デニスと蛇は睨みあうーーが、先に動いたのは蛇であった。


「っ!!」


紫電一閃。
蛇は口を大きく開けるとあまりに速い動きでデニスへ噛みつこうと飛び掛かったが、それ以上に速かったのはデニスであった。
ハンマから見るとそれは閃光だった。蛇が動いたと思った次の瞬間には、デニスは抜刀を終え、蛇の体は首から宙に舞っていたのだから。


ドサリ


蛇の首が地面に落ちる。


(な、なんちゅう化け物だ!だが・・・)


ハンマは頼みの綱である蛇を一瞬にして斬り伏せたデニスに驚愕するが、それでも彼はまだ余裕を態度を捨ててはいなかった。


「なに・・・?」


デニスはある物を見て驚愕する。
それは、斬ったはずの蛇の首に、残った胴体が合流して再び体が元通りにくっつくというものだった。
そして蛇は何事も無かったかのように活動を再開する。


「なんだこいつ・・・」


デニスは眉を顰める。
手ごたえはあったはずなのに、いとも簡単に体を再生させた蛇に対し、恐れに近い感情を抱いていた。


「どうだ?パフちゃんは斬っても斬っても再生するんだぜ?俺でさえどう倒したら良いかわからねぇくらいよ」


ハンマはそう言って勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
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