上 下
134 / 508
ゴウキ・ファミリー

監視システム

しおりを挟む
「3区の2丁目の河川敷で、泥酔している冒険者を取り囲んでいる手段がいますね。『半グレ』とやらだと思います」


リノアの言葉を聞き、ゴウキは「わかった!」と言い、瞬時に駆け出していく。
それはまるで突風のようで、既にリノアの視界にゴウキはいない。


「流石、すごいですゴウキ先輩。相変わらずの俊足ですね」


(凄いのはリノアだと思うが・・・)


呑気にゴウキのことを褒めたたえているリノアを見て、デニスは背筋に冷たいものを感じる。
ここは第2区のゴウキ・ファミリーの馴染みの酒場「カムシン」。リノアはここにいながらにして、今リアルタイムで王都の街の大半の状態を把握している。ゴウキが先ほど駆け出していったのも、リノアがそこで事件が起こっていることを察知したからだ。


「そのプライバシー侵害のコウモリ、自分につけられたら溜まったもんじゃねーけど、まさかこういう使い方もあるなんてなー」


スミレはヘラヘラ笑いながら感心しているが、「これはもうそれどころじゃないだろう」とデニスは呆れていた。



ーーーーー


リノアが以前ゴウキをストーキングした監視魔法仮称「コウモリ」。これを使ってゴウキが効率良く町を警備できないかと相談したところ

「まだあまり試したことはないですけど、数を増やせば理論上は可能です!」


「理論上は可能・・・(ドン引き)」


「っていうか多分可能です!」


あっけらかんと可能であるとリノアが返事をし、そして実際にそれをやってのけてみせた。


「今はまだ慣れないので255個が限界みたいです。がんばれば、いずれは65535個くらいまでは・・・」


「いや、とりあえずそこまでしなくていい」


既に超常的なのにこれ以上一度に更に超常的なものがやってこられても脳が処理できない。とりあえずゴウキは現状のリノアのその能力を試しに王都の全体の状況を把握できればと思った。


「では、やってみます」


リノアが255もの魔法で作られたコウモリを王都中に飛ばす。
コウモリを通じて見聞きしたものは全てがリノアの知るところとなる。


「なぁ、それ、全部のコウモリの情報がわかるのか?」


ゴウキは恐る恐る聞いた。


「いえいえ・・・流石にそこまで私も万能じゃないですよ。しっかり把握できてるのは八割くらいですかね・・・あとはぼんやりって感じになっちゃいます。これでも最初は脳みそが焼き切れるかってくらいきつかったんですよ。でも慣れれば・・・」


「あ、いや、もういい。無理しない程度で・・・」


ゴウキは聞いてて頭がおかしくなりそうだから聞くのをやめた。
だが、リノアの能力は今のゴウキの目的には必要なものだった。



「頼む。大変かもしれないが、少し力を貸してくれ!叩き潰したい奴らがいる!」


ゴウキがそう言ってリノアの肩を掴むと、リノアは顔を真っ赤にして頭から湯気を出しながら


「ぶ、物理の限界を超えてでもゴウキ先輩のお役に立ててみせます!!」


そう言って力一杯頷いたのだった。


「いや、これ以上超えなくていい」


ーーーーー



そして今に至る。
ゴウキが先日商会会長に対する追剥ぎを阻止できたのは、リノアの監視システムによって半グレの動きが把握できたからであった。




「スミレ先輩、2区の4丁目の酒場『マノス』周辺の路地裏で追剥ぎです」


「ん、あいよ」


スミレは返事をすると音もたてず、瞬時に姿を消した。


「デニス先輩。次は・・・」




こうしてゴウキ・ファミリーはチート的な監視システムを駆使し、王都の犯罪・・・特に半グレによる活動を徹底して封殺していった。
事件発生から解決まで時間かかっても15分。
リノアも大概だが、他のメンバー達も随分人外じみた活躍を見せていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

断罪された悪役令嬢は押しかけ女房~第二の王都と呼ばれる辺境領地で、彼女の夢を応援してたら第二の国になりました~

うどん五段
恋愛
見目麗しい人間が集まる王都、見目麗しくない人間辺境の第二の王都。 その第二の王都の領地を運営する見目麗しくない、輝く光る頭、けれど心はとても優しい男性、ジュリアスの元に、巷で有名な悪役令嬢が押しかけ女房にやってきた! しかしその実は、悪役令嬢はただの噂で? でも、その事を利用して自分の夢である商売をしていて!? 判断が早いリコネルと、おっとりした禿げた年上のジュリアスとの、騒がしくも忙しい領地改革! ※朝6時10分 昼12時10分 夜17時10分の、1日3回更新です!

国王陛下に激怒されたから、戻って来てくれと言われても困ります

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のアンナ・イグマリオはルード・フィクス公爵から婚約破棄をされる。 理由は婚約状態で身体を差し出さないなら必要ないという身勝手極まりないもの。 アンナは彼の屋敷から追放されてしまうが、その後はとんでもないことが起きるのだった。 アンナに片想いをしていた、若き国王陛下はルードに激怒した。ルードは恐怖し、少しでも国王陛下からの怒りを抑える為に、アンナに謝罪しながら戻って来て欲しいと言うが……。 運命の歯車はこの辺りから正常に動作しなくなっていく。

継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……思わぬ方向へ進んでしまうこととなってしまったようです。

四季
恋愛
継母は実娘のため私の婚約を強制的に破棄させましたが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...