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追放後
もう終わりだぁ!
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国王は外遊中という話を聞いていたが、丁度戻ってきたようで拍子抜けするほどあっさりと謁見の申請は通った。実のところは外遊先でゴウキの件を耳に入れ、慌てて外遊を中段して帰国したのであったが、それを知らないクレアは運が良かったなと呑気に考えていた。
「実に愚かなことをしたな、クレア」
そんな呑気なクレアを打ち付けたのは、クレアの顔を見るなり厳かな声でそう言った国王の言葉だった。失望したことを隠す様子もなく実に冷ややかな目線をクレアに向けている。その目線を受け、クレアは思わず背筋がゾッとするほどの寒気を感じる。
これまで国王は勇者パーティーに目をかけ、実によく便宜を図ってきた。
パーティー結成当初から問題が起きたときは力になってきてくれた。
その国王が明らかな失望の意を自分にぶつけている。クレアはその事実に震えが止まらなかった。
「パーティー結成時、私はメンバーの増減については慎重になれと伝えたはずだ。国の権威を示す勇者パーティーともなれば、ありとあらゆる面でその影響力は大きく及ぶ。それはパーティーメンバーの増減とて例外ではないのだと」
国王は視線をクレアから外し、小さく溜め息をついた。
「もはやゴウキを再び勇者パーティーに戻すことは簡単ではない。少なくない国費が使われる勇者パーティーなのだ。減らすことは其方の一存で決めることは出来ても、増やすとなると難しい。既に一度切り捨てたゴウキを戻すのは時間がかかることだろう」
国王のその言葉に、クレアは再び大きく打ちのめされる。
「パーティーメンバーの選定にはあらゆる政治的思惑が絡んでいる。ゴウキは平民なれどその類稀なる能力から推す声が大きかったから選ばれたが、今や彼を支持していた者達は、勇者パーティーを抜けたその後の彼の動向について興味を示しておる」
バルジ国において今、国王の地位がそこまで盤石ではない。現状はまだ薄氷の上に立つ・・・とまでは行かないが、なんらかの失態を重ねることですぐにでもそうなってもおかしくないくらい。
王家の権威を高めるための起死回生の策の一つとして勇者パーティーの結成があったのだ。だが、国王肝煎りの企画とはいえ、国費が費やされる以上パーティーのことについて全てを王が自由に決定できるわけではなかった。国のあらゆる政治的要素が関わって勇者パーティーは選定されている。
実のところクレアはゴウキを勧誘してはいるが、それはあくまでパーティー候補への立候補のきっかけに過ぎず、採用には何ら影響を与えてはいない。あくまで政治的にそういう動きがあったからゴウキが選ばれたのだ。
ゴウキを勇者パーティーとして採用されるために支持してくれていた勢力は、ゴウキ個人の能力を買ってはいるが、その活躍の場は勇者パーティーで無くても良いと今は考えている。むしろ勇者パーティーの枷に捕らわれずに、と冒険庁のジャックのように考えている者も多かった。だからゴウキを再び勇者パーティーとして登用させるのは、政治的に極めて困難な状況になってしまっていたのだ。
「一時脱退だったか?世間体をどうにかするための仮処分のつもりだったようだが、それとて首の皮1枚残すだけのギリギリの処置だ。慎重になるべきだった。ほんの手違い・・・いや、第三者からの悪意が一つでもあれば、本当に脱退処分してしまう可能性もある、実に悪手も悪手と言える。やるべきではなかったな。まだゴウキの起こした問題の尻ぬぐいを私に任せてくれたほうが良かった。もはやこうなると私には大して出来る事はない」
「わ、私は・・・」
クレアは何か言い訳が出来ないかと口を開くが、震えて何も言葉にならなかった。
「代わりの人間についてはある程度は意見は聞いておこう。だが、ゴウキについては諦めたほうが早いだろう。出来るとしても、調整やらなにやらで最短で数か月はかかりそうだしな」
クレアは呆然として国王の言葉を聞いていた。
ゴウキをパーティーとして戻すのは絶望的になり、彼女の目の前は真っ暗になった。
「実に愚かなことをしたな、クレア」
そんな呑気なクレアを打ち付けたのは、クレアの顔を見るなり厳かな声でそう言った国王の言葉だった。失望したことを隠す様子もなく実に冷ややかな目線をクレアに向けている。その目線を受け、クレアは思わず背筋がゾッとするほどの寒気を感じる。
これまで国王は勇者パーティーに目をかけ、実によく便宜を図ってきた。
パーティー結成当初から問題が起きたときは力になってきてくれた。
その国王が明らかな失望の意を自分にぶつけている。クレアはその事実に震えが止まらなかった。
「パーティー結成時、私はメンバーの増減については慎重になれと伝えたはずだ。国の権威を示す勇者パーティーともなれば、ありとあらゆる面でその影響力は大きく及ぶ。それはパーティーメンバーの増減とて例外ではないのだと」
国王は視線をクレアから外し、小さく溜め息をついた。
「もはやゴウキを再び勇者パーティーに戻すことは簡単ではない。少なくない国費が使われる勇者パーティーなのだ。減らすことは其方の一存で決めることは出来ても、増やすとなると難しい。既に一度切り捨てたゴウキを戻すのは時間がかかることだろう」
国王のその言葉に、クレアは再び大きく打ちのめされる。
「パーティーメンバーの選定にはあらゆる政治的思惑が絡んでいる。ゴウキは平民なれどその類稀なる能力から推す声が大きかったから選ばれたが、今や彼を支持していた者達は、勇者パーティーを抜けたその後の彼の動向について興味を示しておる」
バルジ国において今、国王の地位がそこまで盤石ではない。現状はまだ薄氷の上に立つ・・・とまでは行かないが、なんらかの失態を重ねることですぐにでもそうなってもおかしくないくらい。
王家の権威を高めるための起死回生の策の一つとして勇者パーティーの結成があったのだ。だが、国王肝煎りの企画とはいえ、国費が費やされる以上パーティーのことについて全てを王が自由に決定できるわけではなかった。国のあらゆる政治的要素が関わって勇者パーティーは選定されている。
実のところクレアはゴウキを勧誘してはいるが、それはあくまでパーティー候補への立候補のきっかけに過ぎず、採用には何ら影響を与えてはいない。あくまで政治的にそういう動きがあったからゴウキが選ばれたのだ。
ゴウキを勇者パーティーとして採用されるために支持してくれていた勢力は、ゴウキ個人の能力を買ってはいるが、その活躍の場は勇者パーティーで無くても良いと今は考えている。むしろ勇者パーティーの枷に捕らわれずに、と冒険庁のジャックのように考えている者も多かった。だからゴウキを再び勇者パーティーとして登用させるのは、政治的に極めて困難な状況になってしまっていたのだ。
「一時脱退だったか?世間体をどうにかするための仮処分のつもりだったようだが、それとて首の皮1枚残すだけのギリギリの処置だ。慎重になるべきだった。ほんの手違い・・・いや、第三者からの悪意が一つでもあれば、本当に脱退処分してしまう可能性もある、実に悪手も悪手と言える。やるべきではなかったな。まだゴウキの起こした問題の尻ぬぐいを私に任せてくれたほうが良かった。もはやこうなると私には大して出来る事はない」
「わ、私は・・・」
クレアは何か言い訳が出来ないかと口を開くが、震えて何も言葉にならなかった。
「代わりの人間についてはある程度は意見は聞いておこう。だが、ゴウキについては諦めたほうが早いだろう。出来るとしても、調整やらなにやらで最短で数か月はかかりそうだしな」
クレアは呆然として国王の言葉を聞いていた。
ゴウキをパーティーとして戻すのは絶望的になり、彼女の目の前は真っ暗になった。
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