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追放後
勇者達の失敗
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傷を負いながらも、今だ健在のクリスタルゴーレムは地面に突き刺さって戦線離脱になったリフトを放置し、残ったクレア達を相手にしようと襲い掛かる。
「ちっ!」
クリスタルゴーレムの大振りの一撃を躱し、攻撃のきっかけを掴もうと隙を伺うマリス。
マリスは苛立っていた。心酔するリフトを戦闘不能に追いやられたことに対する怒りと、その恨みを晴らそうと斬りかかりたいのに中々隙を見せないクリスタルゴーレムに、焦燥感だけが募って徐々にマリスの冷静さを失わせていた。
一方でクレアも同じ焦りを感じていた。攻撃しようと踏み込もうすると、想像を遥かに超えるスピードで対処されて中々近づけないのである。リフトが最初に一撃を入れられたのは、反撃をほぼ無警戒ゆえの蛮勇が齎したまぐれ当たりだったのかもしれないとクレアは気付く。
(おかしい、こんなに隙を見せない敵だった?)
以前にクリスタルゴーレムを倒した時はどうだったか、クレアは距離を取って思い起こし、そしてハッとする。
(そうだ、あの時はゴウキがクリスタルゴーレムを押さえていたんだ!)
当時、ゴウキはクリスタルゴーレムの剛腕を受け止め、動きを抑えていてくれたのだ。だから無防備になった敵を、簡単にクレアとマリスで切り裂くことが出来た。
クリスタルゴーレムは元々これほど機敏な動きをやってのける相手だったのだ。ただそれを抑えることが出来たゴウキがいないのだ。
(だったら、私達だけで出来る方法を考えるまで!)
以前と条件は違えど、それでも戦う方法がないわけではない。
クレアはようやく頭の中で整理をつけ、対処法を考える。
「マリス!私にタイミングを合わせて!!」
クリスタルゴーレムの隙を伺い、幾度となくアタックを仕掛けようとしているマリスにクレアは呼びかける。
だが、遅々として攻撃の進まぬ状況にマリスはすっかり冷静さを欠いているのか、クレアの声が聞こえていないようだった。
「マリス!」
クレアが叫ぶ。同時に痺れを切らしたマリスが動いた。
「死ね!!」
マリスはクリスタルゴーレムの攻撃をギリギリでかいくぐり、剣を真一文に走らせる。そしてクリスタルゴーレムの左足を横なぎに切り裂いた。己を身をギリギリまで危険に晒して偶然のように勝ち取った有効打であった。
「勝機!」
バランスを崩す敵を前に、剣を振り上げ、トドメの一撃を繰り出そうとしたその瞬間
「がっ!?」
マリスの体が真横からの攻撃に吹き飛ばされた。
クリスタルゴーレムではない新手の魔物が来ていたことに気付かず、マリスは不意打ちをもろに受ける形になってしまったのだ。新たに現れたのは数匹のクリスタルウルフで、クリスタルゴーレムに手間取っている間に物音に反応して引き寄せられていてしまっていた。
「危ないマリス!」
ミリアは慌てて硬質化をマリスにかけた。
クリスタルウルフはマリスの体に噛みつき歯を立てるが、硬質化したマリスの体は中々傷がつかない。タッチの差で間に合ったことでミリアは胸を撫でおろすが、これでリフトと硬質化で動けないマリスが戦線離脱である。
「もはやこれまで・・・か」
この事態になって、クレアは今回の依頼は失敗したことを認識する。
片足を斬られたクリスタルゴーレムは動きが悪くなったが、それを補うようにクリスタルウルフがいる。こうなるとクリスタルゴーレムの体を綺麗な状態のまま倒すといった気を遣った戦闘を続けることは不可能だ。
クレアはこの戦闘の勝利を第一目標と切り替えた。
「はぁぁぁぁ」
クレアは剣を振り上げ、呼吸を練る。するとクレアの持つ剣が発光しだした。
これはクレアの持つ必殺技の一つ、『ブレイブトレイル』。練り集められた闘気を剣先に集め、斬撃に乗せて敵に闘気をぶつける剣技である。破壊力は抜群だが、クリスタルゴーレムは爆発四散し、依頼にあるクリスタルゴーレムの体はろくな部位が手に入らないだろう。
「はぁぁぁぁっ!!ブレイブトレイル!!」
クレアの必殺技が炸裂する。
クリスタルダンジョンに轟音が響き、閃光と爆風の止むと、そこには魔物の残骸である粉々になったクリスタルと、息を荒くし呆然と立ち尽くすクレアの姿だけが残った。
戦いは勝利に終わったが、ブレイブトレイルは本来B級ランクのダンジョンの魔物には使うはずもない大技だった。目的だったクリスタルゴーレムの体も満足に手に入らず、今回のダンジョンアタックは全くの徒労・・・失敗に終わったのだった。
「ちっ!」
クリスタルゴーレムの大振りの一撃を躱し、攻撃のきっかけを掴もうと隙を伺うマリス。
マリスは苛立っていた。心酔するリフトを戦闘不能に追いやられたことに対する怒りと、その恨みを晴らそうと斬りかかりたいのに中々隙を見せないクリスタルゴーレムに、焦燥感だけが募って徐々にマリスの冷静さを失わせていた。
一方でクレアも同じ焦りを感じていた。攻撃しようと踏み込もうすると、想像を遥かに超えるスピードで対処されて中々近づけないのである。リフトが最初に一撃を入れられたのは、反撃をほぼ無警戒ゆえの蛮勇が齎したまぐれ当たりだったのかもしれないとクレアは気付く。
(おかしい、こんなに隙を見せない敵だった?)
以前にクリスタルゴーレムを倒した時はどうだったか、クレアは距離を取って思い起こし、そしてハッとする。
(そうだ、あの時はゴウキがクリスタルゴーレムを押さえていたんだ!)
当時、ゴウキはクリスタルゴーレムの剛腕を受け止め、動きを抑えていてくれたのだ。だから無防備になった敵を、簡単にクレアとマリスで切り裂くことが出来た。
クリスタルゴーレムは元々これほど機敏な動きをやってのける相手だったのだ。ただそれを抑えることが出来たゴウキがいないのだ。
(だったら、私達だけで出来る方法を考えるまで!)
以前と条件は違えど、それでも戦う方法がないわけではない。
クレアはようやく頭の中で整理をつけ、対処法を考える。
「マリス!私にタイミングを合わせて!!」
クリスタルゴーレムの隙を伺い、幾度となくアタックを仕掛けようとしているマリスにクレアは呼びかける。
だが、遅々として攻撃の進まぬ状況にマリスはすっかり冷静さを欠いているのか、クレアの声が聞こえていないようだった。
「マリス!」
クレアが叫ぶ。同時に痺れを切らしたマリスが動いた。
「死ね!!」
マリスはクリスタルゴーレムの攻撃をギリギリでかいくぐり、剣を真一文に走らせる。そしてクリスタルゴーレムの左足を横なぎに切り裂いた。己を身をギリギリまで危険に晒して偶然のように勝ち取った有効打であった。
「勝機!」
バランスを崩す敵を前に、剣を振り上げ、トドメの一撃を繰り出そうとしたその瞬間
「がっ!?」
マリスの体が真横からの攻撃に吹き飛ばされた。
クリスタルゴーレムではない新手の魔物が来ていたことに気付かず、マリスは不意打ちをもろに受ける形になってしまったのだ。新たに現れたのは数匹のクリスタルウルフで、クリスタルゴーレムに手間取っている間に物音に反応して引き寄せられていてしまっていた。
「危ないマリス!」
ミリアは慌てて硬質化をマリスにかけた。
クリスタルウルフはマリスの体に噛みつき歯を立てるが、硬質化したマリスの体は中々傷がつかない。タッチの差で間に合ったことでミリアは胸を撫でおろすが、これでリフトと硬質化で動けないマリスが戦線離脱である。
「もはやこれまで・・・か」
この事態になって、クレアは今回の依頼は失敗したことを認識する。
片足を斬られたクリスタルゴーレムは動きが悪くなったが、それを補うようにクリスタルウルフがいる。こうなるとクリスタルゴーレムの体を綺麗な状態のまま倒すといった気を遣った戦闘を続けることは不可能だ。
クレアはこの戦闘の勝利を第一目標と切り替えた。
「はぁぁぁぁ」
クレアは剣を振り上げ、呼吸を練る。するとクレアの持つ剣が発光しだした。
これはクレアの持つ必殺技の一つ、『ブレイブトレイル』。練り集められた闘気を剣先に集め、斬撃に乗せて敵に闘気をぶつける剣技である。破壊力は抜群だが、クリスタルゴーレムは爆発四散し、依頼にあるクリスタルゴーレムの体はろくな部位が手に入らないだろう。
「はぁぁぁぁっ!!ブレイブトレイル!!」
クレアの必殺技が炸裂する。
クリスタルダンジョンに轟音が響き、閃光と爆風の止むと、そこには魔物の残骸である粉々になったクリスタルと、息を荒くし呆然と立ち尽くすクレアの姿だけが残った。
戦いは勝利に終わったが、ブレイブトレイルは本来B級ランクのダンジョンの魔物には使うはずもない大技だった。目的だったクリスタルゴーレムの体も満足に手に入らず、今回のダンジョンアタックは全くの徒労・・・失敗に終わったのだった。
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