81 / 506
追放後
勇者パーティーのあるべき姿
しおりを挟む
前衛であり壁役であったゴウキが抜けたことで、勇者パーティーの基本戦術は当然変わった。
リフトが最前に出て敵を引きつけ、敵の隙をつくようにしてクレアやマリスが接近戦で叩く。ミリアは変わらず後方で補助、このスタイルに変更となった。
リフトはこれまで前衛と後衛の間といった感じであったが、何故前衛に出たのか。それはリフトの能力にあった。
聖騎士であるリフトはセイントバリアという物理や魔法攻撃を軽減する障壁を張ることができるのである。それは聖騎士であるならば多くの者が身に着けている能力だが、リフトのそれは格別で、巨漢が本気で振り下ろすハンマーすら止められるほど強力なバリアを張ることが可能なのだ。
そしてクレアやマリスほどではないが、剣術もかなりの腕前である。攻撃良し、防御良しと、足止め役としては十二分に活躍できる逸材だが、これまでゴウキという規格外のタフガイがいたからリフトが後方へ下がることになっていたのだ。
リフトはそれをずっと不本意であると感じていたこともあり、ゴウキが抜けたことによる隊列の変更が必要となった際、我先に最前での壁役を買って出た。慣れぬ前衛で大丈夫かと一瞬クレアは不安になったが、一応適材適所ではあるので、結局反対はしなかった。
(やはり聖騎士である僕こそが最前に相応しい。誰かを守ることこそが本懐。守られることなどあってはならないんだ)
リフトはこれこそが勇者パーティーの本来あるべき姿であると満足し、クリスタルダンジョンで先頭を歩いていた。ここは攻略済みであり格下レベルのダンジョン・・・普通に考えれば、いかに急ごしらえの隊列とはいえよっぽどのことがない限りは楽々攻略できるはずだった。
ーーーーー
「敵だ!」
しばらくダンジョンを進んでいると、リフトは前方から魔物がやってくるのを視認し、仲間に注意を促した。
前方から姿を現した敵は、クリスタルウルフ3匹。全身がクリスタルで構成され、オオカミの姿をしている魔物である。体がクリスタルである分、ガードが硬くて攻撃力が高いというだけで、特に魔法は使ってこないし動きは普通のオオカミとほとんど変わらないという・・・脅威度としてはクリスタルダンジョンでも最下層に属する魔物であった。
「僕に任せて!」
三匹のクリスタルウルフが一瞬で間合いを詰め、最前にいるリフトに一度に襲いかかる。
だがリフトは恐れることなく、既に抜いていた剣を構えた。
「閃光剣!」
リフトは得意としている剣技「閃光剣」を発動させた。
閃光剣はその名の通り、閃光のように素早く斬る剣技である。リフトの剣はクレアやマリスのそれとは違い、やや小型のスモールソードを使用しているが、それは聖魔法の威力を乗せるから剣そのものの攻撃力を上げる必要がそれほどないというだけでなく、高速で振るうことに重きを置いているからである。
聖魔法による剣への威力上昇と、速度上昇、そして武器の特性もあって、『閃光剣』は三匹同時にかかってきたクリスタルウルフを全部切り裂くことが出来る。
ズババババッ!!
(やったか!)
リフトは確かに手ごたえを感じた。
足止めと言いつつも、クリスタルウルフはこの閃光剣で全部倒してしまうつもりだったリフトは、勝利を確信していた。そして実際に技はこれ以上ないほどに綺麗に決まったはずだった。
だがーーー
クリスタルウルフは仕留められていなかった。
「危ないっ!!」
傷を負ったが、まだ動けるクリスタルウルフは再度リフトへ攻撃を仕掛けてくる。
クレアの声で我に返ったリフトは、反応が完全に遅れていた。
リフトが最前に出て敵を引きつけ、敵の隙をつくようにしてクレアやマリスが接近戦で叩く。ミリアは変わらず後方で補助、このスタイルに変更となった。
リフトはこれまで前衛と後衛の間といった感じであったが、何故前衛に出たのか。それはリフトの能力にあった。
聖騎士であるリフトはセイントバリアという物理や魔法攻撃を軽減する障壁を張ることができるのである。それは聖騎士であるならば多くの者が身に着けている能力だが、リフトのそれは格別で、巨漢が本気で振り下ろすハンマーすら止められるほど強力なバリアを張ることが可能なのだ。
そしてクレアやマリスほどではないが、剣術もかなりの腕前である。攻撃良し、防御良しと、足止め役としては十二分に活躍できる逸材だが、これまでゴウキという規格外のタフガイがいたからリフトが後方へ下がることになっていたのだ。
リフトはそれをずっと不本意であると感じていたこともあり、ゴウキが抜けたことによる隊列の変更が必要となった際、我先に最前での壁役を買って出た。慣れぬ前衛で大丈夫かと一瞬クレアは不安になったが、一応適材適所ではあるので、結局反対はしなかった。
(やはり聖騎士である僕こそが最前に相応しい。誰かを守ることこそが本懐。守られることなどあってはならないんだ)
リフトはこれこそが勇者パーティーの本来あるべき姿であると満足し、クリスタルダンジョンで先頭を歩いていた。ここは攻略済みであり格下レベルのダンジョン・・・普通に考えれば、いかに急ごしらえの隊列とはいえよっぽどのことがない限りは楽々攻略できるはずだった。
ーーーーー
「敵だ!」
しばらくダンジョンを進んでいると、リフトは前方から魔物がやってくるのを視認し、仲間に注意を促した。
前方から姿を現した敵は、クリスタルウルフ3匹。全身がクリスタルで構成され、オオカミの姿をしている魔物である。体がクリスタルである分、ガードが硬くて攻撃力が高いというだけで、特に魔法は使ってこないし動きは普通のオオカミとほとんど変わらないという・・・脅威度としてはクリスタルダンジョンでも最下層に属する魔物であった。
「僕に任せて!」
三匹のクリスタルウルフが一瞬で間合いを詰め、最前にいるリフトに一度に襲いかかる。
だがリフトは恐れることなく、既に抜いていた剣を構えた。
「閃光剣!」
リフトは得意としている剣技「閃光剣」を発動させた。
閃光剣はその名の通り、閃光のように素早く斬る剣技である。リフトの剣はクレアやマリスのそれとは違い、やや小型のスモールソードを使用しているが、それは聖魔法の威力を乗せるから剣そのものの攻撃力を上げる必要がそれほどないというだけでなく、高速で振るうことに重きを置いているからである。
聖魔法による剣への威力上昇と、速度上昇、そして武器の特性もあって、『閃光剣』は三匹同時にかかってきたクリスタルウルフを全部切り裂くことが出来る。
ズババババッ!!
(やったか!)
リフトは確かに手ごたえを感じた。
足止めと言いつつも、クリスタルウルフはこの閃光剣で全部倒してしまうつもりだったリフトは、勝利を確信していた。そして実際に技はこれ以上ないほどに綺麗に決まったはずだった。
だがーーー
クリスタルウルフは仕留められていなかった。
「危ないっ!!」
傷を負ったが、まだ動けるクリスタルウルフは再度リフトへ攻撃を仕掛けてくる。
クレアの声で我に返ったリフトは、反応が完全に遅れていた。
0
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる