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追放後

捨てる神と拾う神

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「まさか・・・だろこんな」


ゴウキ達は先日も来ていた馴染みの酒場へ来ていた。
ビールを立て続けに6杯飲むと、張り詰めていたものが切れたのかゴウキは思いの内を吐き出すようになる。
決別し、心の整理をつけたつもりだったが、それでも酒を飲んだ瞬間理不尽な思いが一気に脳裏に蘇ってきたようだ。


「別にちょっとやらしちゃったから、クビにされること自体はまぁ良いんだよ。いや良くはないけど。けど、それを俺に書面で一方的にならまだしも、何一つ知らせないって何だよ。薄情にも程があるんじゃねぇか?」


クレアもミリアもそれなりに付き合いがあったはずだ。少なくとも、こんな不義理をされるだけの間柄ではなかった・・・とゴウキは考えていた。だからそのことを思い出すにつれ、時間差でゴウキの胸にふつふつと怒りと悲しみの感情が湧いてくる。


「結局その程度だったんでしょ。向こうがゴウキに向けていた感情はさ」


スミレの言葉に、ゴウキは「そんなことは!」と言おうとして、口を噤んだ。反射的に否定しようとしたが、自分のされた仕打ちがスミレの言葉の裏取りになっていることに気付いたからだ。
その事実に蓋をするかのように、ゴウキは7杯目のビールを飲み干した。


「そのクレアってのは、結局何でもかんでも損をゴウキに押し付けてさ、便利な厄介事のゴミ箱くらいにしか考えてなかったんじゃねーの?少なくともこれまでにゴウキの話を聞いた感じじゃそうとしか思えないわ」


またも反射的に否定しそうになって、ゴウキはまた押し黙った。これまでは板挟みになっているクレアの心労を察し、彼女をフォローする気持ちが優先し、悪し様に思うこともなかった。

だが最後の仕打ちを考えるに、どうやらスミレの言う通りだったのかなとゴウキは考えてしまう。
一区民としての身分剥奪について当日に知ることができたしゴウキ自体第1区にしっかり根を下ろした生活をしていなかったらまだ良かったものの、生活拠点を一瞬にして失うというのは通常ならば死活問題に直結するのだ。だが勇者パーティーは、クレアはそれをあっさりゴウキにやってのけた。これをやるのはゴウキが軽んじて見られている他に理由がない。


「ま、アタシは絶対そんなことしねーからさ。約束通り、パーティーを組んでくれるよな?」


何でもないように軽く訊いてくるスミレ。ゴウキが無言でスミレを見ると、物言いとは余所に僅かに彼女が緊張しているのが見て取れた。

ゴウキは底辺で生きてきた自分が勇者パーティーとして世間の役に立てることが嬉しかった。だが、結局爪弾きにされ、挙句ゴミを捨てるかのように、汚れを落とすかのようにあっさり追放されてしまった。暴力沙汰を起こしてしまったことは認めるが、自身と家族と仲間の名誉を貶されて我慢をしろというのは納得ができなかった。

きっと、元より『清』なる勇者パーティーに『濁』なる自分はとことん相応しくなかったのだ。

だが、こんな自分でも必要としてくれている人がいる。
どん底にいるはずの自分自身を必要だと声をかけてくれる人がいる。
ゴウキはその事がただただ嬉しく、笑みを浮かべると


「あぁ、こちらこそ頼む」


そうスミレに返したのだった。
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