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プロローグ

衝撃の事実

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ゴウキが通されたのはセントラルギルドに数ある商談室の一室だった。
冒険者ギルドが相手をするのは冒険者だけではない。商工ギルドと提携している関係で、商人も冒険者に次いで商談をする相手である。
行列が出来るほど混雑していたギルドだけあって商談室もほぼ全てが満室だったが、緊急の商談に対応するために予備で空けてある部屋があり、ゴウキはそこに通された。ゴウキが勇者パーティーの一員としてこのギルドにやってくることは数多くあったが、ここまで便宜を図られたことはなく、そのことにどこか薄気味悪さを感じていた。


「大事な話ですので、ここの方が落ち着いて良いかと思われまして」


係長は過剰なほどの笑みを浮かべてそう言った。
勿体つけるその態度にゴウキはイラついたものの、しかしわざわざ便宜を図ってまで場を設けさせてしまった手前、その感情を表に出さずに切り出した。


「ブレスレットが身分証としての機能を失うと聞いた。一体どういうことか教えてもらいたい」


ゴウキのその問いを聞くと、途端に係長は鎮痛な面持ちになり俯き気味になって答えた。まるで百面相だ。まぁこれまでの態度からするに、きっとこの表情は演技なんだろうが・・・そうゴウキは思ったが、すぐにそれは確信に変わる。


「申し上げにくいのですが、ゴウキ様が第1区民とされていたのは、国の認める勇者パーティーの一員だったからでございます。元の身分が何であれ、第1区はおろか王城の出入りも可能となるのが特権の一つでしたから」


「それは知っている」


通常、第4区の住人が第1区民として認定されることはほとんどない。商売で富を得たとしても、社交界で信用と気品を身に着け、最短でも十年ほど時間をかけて根回ししてようやく認定されるかどうかの世界だった。


「ですが、ゴウキ様は既に勇者パーティーの一員ではありません。ですから我がギルドの規約に乗っ取り、ゴウキ様の区民権は自動的に消失することになったのです」


これまで鎮痛な表情でいた係長が、ここでこらえきれなくなったのか口角が上がり出した。
憎いと思っていたゴウキに衝撃的な内容を突きつける、この瞬間を迎えたくて彼はわざわざ便宜を図ってまで場を設けたのだ。
特等席でゴウキのリアクションを見たくて仕方がなかった、陰湿なサディストであった。


「勇者パーティーの・・・一員ではない?」


しかしゴウキはそんな係長の態度などには気付かない。そんなことよりも今言われたばかりの衝撃的な言葉の内容を理解するのに精いっぱいだった。


「そうです。ゴウキ様は既に勇者パーティーのメンバーリストにはおりません。勇者パーティーより正式な手続きがなされてますので、間違いはございませんよ」


既に笑みを隠そうともせず係長はなんとも嬉しそうにそう言った。
彼の言葉を聞き、ゴウキはショックのあまりすぐには言葉を発することも出来なかった。
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