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プロローグ
クレアとの思い出
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ゴウキは第4区内の次の目的地に向かう。
歩いていると、やがて他の区でもそうそう見られないほどに華やかな街並みのエリアに到達する。
ここは通称『花の4区』である。
王都随一の色町であり、娼婦が街角に立ち並び、連れ込み宿が乱立し、女目当ての男達が集結する場である。第4区は至る所が清掃が行き届いておらずゴミなどが散乱して不衛生であるが、ここだけは別で清潔感があった。
裏手には第1区から貴族が乗りつけてきた馬車が立ち並び、主が遊びを終え戻ってくるのを待っている。
王都には他にも娼館はあるが、花の4区ほどの賑わいは無い。
訳ありで平民落ちした者、元よりそれしか稼ぐ方法を知らぬ者、親に売られた者、様々な事情を持つ女性がここに集まる。中には元高位貴族令嬢までいることがあり、それが他の区の娼館より安価で抱ける可能性があるとして、区を問わず様々な身分の男が金を握って花の4区に押しかけた。
ゴウキからしてみれば実に見慣れた光景である。
「あら、ゴウキ久しぶりじゃない。特別価格でいい子つけてあげるわよ。どう?」
通りかかったゴウキに顔なじみの熟女が話しかける。彼女は娼婦たちの管理をしている元締めだ。
「いやぁ、今日はそういうのはいいんだ」
ゴウキは適当にあしらうが、子供の頃より知る大人に娼婦の世話をしてもらうのはなんとも気恥ずかしいものがあった。
「ゴウキちゃんじゃん。サービスするから遊んでいってよ」
「ゴウキ!アタシとどう?ロハにしといてあげるからさ」
いくつもの誘惑の言葉を振り払いながらゴウキはその場を後にする。・・・何か勿体ないこと言われた気もするが、ゴウキは考えないことにする。
「やめときな。ゴウキにゃ決まった相手がいるだろう?」
「あぁ、ミリアだっけ?あの子だろう」
「いやいや、赤髪の貴族の子がいたろ?クレア・・・だっけね。きっとあの子だよ」
「いやいや、両方じゃねーの?」
聞いてて気恥ずかしくなるので、いろいろと勝手なこという人らの言葉に耳を貸さず、ゴウキはただただ歩みを進める。
ここは子供の頃から本当に変わらないなと思いながら、やがてゴウキは目的地へと到着した。花の4区から通り一つ隔てたところにある孤児院である。ゴウキは生まれた時から、ミリアは両親が亡くなってから育ったところであった。
「よく来てくれましたねゴウキ。今をときめく勇者パーティーの一員である君に、大したもてなしも出来ずに申し訳ない」
孤児院の院長はたまたま窓から外にいるゴウキを見かけ、中に招き入れた。
「忙しいだろうに、よく来てくれました。今日はお休みですか?」
「・・・まぁ、そんなところだ」
まさか謹慎を食らって暇になったから、などとは言えずゴウキは適当に濁す。
院長は60歳ほどの独身男性。昔と変わりすっかり頭は白髪だらけになって老いを感じるようになったなとゴウキは思う。昔はもっと若々しく、自分が全力でぶつかってもびくともしなかったように見える巨漢に見えたが、今ではゴウキより小さい。ゴウキは彼のことを父親代わりに思っていた。
「いつも仕送りをしてくれてありがとう。あまり無理しなくていいんですよ」
「いや、大丈夫。自分の分はたんまりと残してあるから」
「ありがとうございます。自慢の息子ですよ。あぁ、そういえば勇者様からも送金が先日ありました。お礼の手紙は送りましたが、良ければよろしく言っておいてもらえますか?」
「クレアが・・・?わかった」
クレアはこの孤児院育ちではないが、この場所のことをいつも気にかけていた。
ミリアを引き合いに出したくはないが、クレアはそういうところは変わらないでいてくれているなとゴウキは少し安堵する。
「かれこれ10年ほどですか。貴方と勇者様が出会ってから」
院長は懐かしそうに目を細めて呟いた。
ゴウキの脳裏にも鮮明に思い出される思い出。
クレアと初めて会ったのは10年前。
ある日突然、彼女が一人でゴウキを名指しで孤児院に乗り込んできたのであった。
「貴方が私の友人を傷つけたゴウキですね!成敗します!!」
そう言ってビシィっと木造刀を突きつけてきたクレアのことを、ゴウキは今なお強く記憶に残っている。
色褪せぬゴウキの大事な思い出であった。
歩いていると、やがて他の区でもそうそう見られないほどに華やかな街並みのエリアに到達する。
ここは通称『花の4区』である。
王都随一の色町であり、娼婦が街角に立ち並び、連れ込み宿が乱立し、女目当ての男達が集結する場である。第4区は至る所が清掃が行き届いておらずゴミなどが散乱して不衛生であるが、ここだけは別で清潔感があった。
裏手には第1区から貴族が乗りつけてきた馬車が立ち並び、主が遊びを終え戻ってくるのを待っている。
王都には他にも娼館はあるが、花の4区ほどの賑わいは無い。
訳ありで平民落ちした者、元よりそれしか稼ぐ方法を知らぬ者、親に売られた者、様々な事情を持つ女性がここに集まる。中には元高位貴族令嬢までいることがあり、それが他の区の娼館より安価で抱ける可能性があるとして、区を問わず様々な身分の男が金を握って花の4区に押しかけた。
ゴウキからしてみれば実に見慣れた光景である。
「あら、ゴウキ久しぶりじゃない。特別価格でいい子つけてあげるわよ。どう?」
通りかかったゴウキに顔なじみの熟女が話しかける。彼女は娼婦たちの管理をしている元締めだ。
「いやぁ、今日はそういうのはいいんだ」
ゴウキは適当にあしらうが、子供の頃より知る大人に娼婦の世話をしてもらうのはなんとも気恥ずかしいものがあった。
「ゴウキちゃんじゃん。サービスするから遊んでいってよ」
「ゴウキ!アタシとどう?ロハにしといてあげるからさ」
いくつもの誘惑の言葉を振り払いながらゴウキはその場を後にする。・・・何か勿体ないこと言われた気もするが、ゴウキは考えないことにする。
「やめときな。ゴウキにゃ決まった相手がいるだろう?」
「あぁ、ミリアだっけ?あの子だろう」
「いやいや、赤髪の貴族の子がいたろ?クレア・・・だっけね。きっとあの子だよ」
「いやいや、両方じゃねーの?」
聞いてて気恥ずかしくなるので、いろいろと勝手なこという人らの言葉に耳を貸さず、ゴウキはただただ歩みを進める。
ここは子供の頃から本当に変わらないなと思いながら、やがてゴウキは目的地へと到着した。花の4区から通り一つ隔てたところにある孤児院である。ゴウキは生まれた時から、ミリアは両親が亡くなってから育ったところであった。
「よく来てくれましたねゴウキ。今をときめく勇者パーティーの一員である君に、大したもてなしも出来ずに申し訳ない」
孤児院の院長はたまたま窓から外にいるゴウキを見かけ、中に招き入れた。
「忙しいだろうに、よく来てくれました。今日はお休みですか?」
「・・・まぁ、そんなところだ」
まさか謹慎を食らって暇になったから、などとは言えずゴウキは適当に濁す。
院長は60歳ほどの独身男性。昔と変わりすっかり頭は白髪だらけになって老いを感じるようになったなとゴウキは思う。昔はもっと若々しく、自分が全力でぶつかってもびくともしなかったように見える巨漢に見えたが、今ではゴウキより小さい。ゴウキは彼のことを父親代わりに思っていた。
「いつも仕送りをしてくれてありがとう。あまり無理しなくていいんですよ」
「いや、大丈夫。自分の分はたんまりと残してあるから」
「ありがとうございます。自慢の息子ですよ。あぁ、そういえば勇者様からも送金が先日ありました。お礼の手紙は送りましたが、良ければよろしく言っておいてもらえますか?」
「クレアが・・・?わかった」
クレアはこの孤児院育ちではないが、この場所のことをいつも気にかけていた。
ミリアを引き合いに出したくはないが、クレアはそういうところは変わらないでいてくれているなとゴウキは少し安堵する。
「かれこれ10年ほどですか。貴方と勇者様が出会ってから」
院長は懐かしそうに目を細めて呟いた。
ゴウキの脳裏にも鮮明に思い出される思い出。
クレアと初めて会ったのは10年前。
ある日突然、彼女が一人でゴウキを名指しで孤児院に乗り込んできたのであった。
「貴方が私の友人を傷つけたゴウキですね!成敗します!!」
そう言ってビシィっと木造刀を突きつけてきたクレアのことを、ゴウキは今なお強く記憶に残っている。
色褪せぬゴウキの大事な思い出であった。
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