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プロローグ
勇者は必要あるのでしょうか?
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ゴウキの歩みに、クレアはついてくる。
二人の帰る道が同じだからだ。
会話らしい会話は途切れ、クレアはこの状況を気まずいと思っていた。何か言葉を発さねばと思うが口は動かず、気ばかりが焦る。
そんな彼らが少し開けた広間に通りかかったときだった。
「勇者は、この国に本当に必要なのであろうか!?」
そんな叫びが轟いて、思わず二人は声の発生源に目を向ける。
声を発していたのは、木箱の上に立つ中老の男。身なりからして貴族のようだが、彼は広間でどうやら演説をしているらしかった。
演説には十数人もの一般人が聞き入っている。
「いずれ世界のどこかに復活するとされる魔王!こんなあやふやな伝承の中でしか存在しないものを脅威とし、我々の血税が多大に使われている。魔王に唯一対処できると伝えられている勇者という胡散臭いものに!まだ実在するかもわからない脅威に我々の税金が使われているのだ!」
貴族はそう言って、何やら紙を広げて見せる。
「これは最近までの勇者パーティーの実績についてまとめたものである。これを見ると、確かに上位冒険者なりの活動をしていることは認めることは出来る。しかし、決してそれは抜きん出た実績ではない。広報活動ばかりに執心で、他の上位冒険者と実績との差はほとんどないのだ!」
そして複製したと思われるその紙を、聞き入っている大衆に貴族の付き人らしき者達が配っていく。それに目を通した大衆の声が更にヒートアップする。
「無駄じゃないか!ただの冒険者にどうして多額の税金が使われるんだ!?」
誰かが怒りに任せてそう叫ぶと、続いて所々でそれに同調した不満の叫びが上がる。
「そう、無駄なのだ!『勇者』などと持て囃しているが、これが現実だ。こんなものに税金を使うくらいならば・・・」
貴族の論調が更に強くなり、場は興奮の度合いが高まっていく。
この国では規模の制限さえ守られていれば、集会の自由は認められている。そこで論ずることがどれだけ反国家的なものであっても、直接的な犯罪や暴動への誘導でさえなければ内容は自由だ。今は広間もヒートアップしているが、それでも一線は越えようとしない。
集会を見張るために広間を遠巻きに眺める騎士が数名いるからだ。もし内容に問題があるようなら直ちに集会を中止、主催者を取り押さえる。
こうした監視付きの集会はたびたび国の、特に王都のいたるところで散見された。内容は概ね勇者パーティーと彼らに使われる税金の在り方についての不満だ。
集会の様子を見ていたゴウキはフッと思わず噴き出した。
「なんだよ。あの貴族様の方が、リフトよりよっぽど現状が良く見えてるんじゃねぇか?」
ゴウキの言葉に、クレアは思わず目を伏せ歯噛みする。
耳の痛い内容だった。反論する気にさえなれなかった。
イメージアップは勇者パーティーの急務であるが、そのための手段だと思っている取材・・・広報活動が仇となり、こうしてまた市井の不満を引き起こしている。
「リフトは・・・彼なりに考えてくれているんだ。彼に言う通りに私達の活動が認知されれば、きっとあんなことも言われなくなる」
「いや仇になってるじゃんかよ」
ゴウキの反論に、クレアは口ごもるだけで何も言わなかった。
クレア自身もわかっているのだ。そろそろ勇者らしく、というか冒険者らしく冒険に専念しなければならないことは。自分達の使命は広報することではないことは。
だがそれをリフトに意見するのは気が咎め、今のような状態が続いている。リフトはリフトなりにパーティーの最善を考えていると信じているからだ。
「そういうとこだぞ、クレアが勇者に向いていないのは」とゴウキはクレアに呆れながらも、また歩み出した。
二人の帰る道が同じだからだ。
会話らしい会話は途切れ、クレアはこの状況を気まずいと思っていた。何か言葉を発さねばと思うが口は動かず、気ばかりが焦る。
そんな彼らが少し開けた広間に通りかかったときだった。
「勇者は、この国に本当に必要なのであろうか!?」
そんな叫びが轟いて、思わず二人は声の発生源に目を向ける。
声を発していたのは、木箱の上に立つ中老の男。身なりからして貴族のようだが、彼は広間でどうやら演説をしているらしかった。
演説には十数人もの一般人が聞き入っている。
「いずれ世界のどこかに復活するとされる魔王!こんなあやふやな伝承の中でしか存在しないものを脅威とし、我々の血税が多大に使われている。魔王に唯一対処できると伝えられている勇者という胡散臭いものに!まだ実在するかもわからない脅威に我々の税金が使われているのだ!」
貴族はそう言って、何やら紙を広げて見せる。
「これは最近までの勇者パーティーの実績についてまとめたものである。これを見ると、確かに上位冒険者なりの活動をしていることは認めることは出来る。しかし、決してそれは抜きん出た実績ではない。広報活動ばかりに執心で、他の上位冒険者と実績との差はほとんどないのだ!」
そして複製したと思われるその紙を、聞き入っている大衆に貴族の付き人らしき者達が配っていく。それに目を通した大衆の声が更にヒートアップする。
「無駄じゃないか!ただの冒険者にどうして多額の税金が使われるんだ!?」
誰かが怒りに任せてそう叫ぶと、続いて所々でそれに同調した不満の叫びが上がる。
「そう、無駄なのだ!『勇者』などと持て囃しているが、これが現実だ。こんなものに税金を使うくらいならば・・・」
貴族の論調が更に強くなり、場は興奮の度合いが高まっていく。
この国では規模の制限さえ守られていれば、集会の自由は認められている。そこで論ずることがどれだけ反国家的なものであっても、直接的な犯罪や暴動への誘導でさえなければ内容は自由だ。今は広間もヒートアップしているが、それでも一線は越えようとしない。
集会を見張るために広間を遠巻きに眺める騎士が数名いるからだ。もし内容に問題があるようなら直ちに集会を中止、主催者を取り押さえる。
こうした監視付きの集会はたびたび国の、特に王都のいたるところで散見された。内容は概ね勇者パーティーと彼らに使われる税金の在り方についての不満だ。
集会の様子を見ていたゴウキはフッと思わず噴き出した。
「なんだよ。あの貴族様の方が、リフトよりよっぽど現状が良く見えてるんじゃねぇか?」
ゴウキの言葉に、クレアは思わず目を伏せ歯噛みする。
耳の痛い内容だった。反論する気にさえなれなかった。
イメージアップは勇者パーティーの急務であるが、そのための手段だと思っている取材・・・広報活動が仇となり、こうしてまた市井の不満を引き起こしている。
「リフトは・・・彼なりに考えてくれているんだ。彼に言う通りに私達の活動が認知されれば、きっとあんなことも言われなくなる」
「いや仇になってるじゃんかよ」
ゴウキの反論に、クレアは口ごもるだけで何も言わなかった。
クレア自身もわかっているのだ。そろそろ勇者らしく、というか冒険者らしく冒険に専念しなければならないことは。自分達の使命は広報することではないことは。
だがそれをリフトに意見するのは気が咎め、今のような状態が続いている。リフトはリフトなりにパーティーの最善を考えていると信じているからだ。
「そういうとこだぞ、クレアが勇者に向いていないのは」とゴウキはクレアに呆れながらも、また歩み出した。
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