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プロローグ
反省会 その1
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「なぁゴウキ。今日の戦いは何だい?記者が見ているというのはわかっているだろうに、どうしてあんなに醜い戦い方をしたんだ?」
戦いを終え、夜になると勇者パーティーは王都の酒場で打ち上げを行った。
その打ち上げの場にて、リフトが穏やかな口調ではあるがゴウキを批判しだしたのだ。
「あぁ?何か問題があったのか?」
これに対しゴウキはまるで悪びれる様子もなく、ただ出された肉料理に食いついている。それを見てリフトは僅かに眉をひそめた。
「大ありだ。今日は新聞記者が勇者パーティーである僕たちの戦いぶりを取材に来ていたんだぞ。ゴウキのあの醜い戦いぶりも、全てが彼らの目に入ることになった。これで僕たちのイメージが悪くなったらどうするんだ?・・・いや、イメージへの影響は避けられないだろうね」
口に出して思い出したのか、リフトは言い切ってから顔をしかめた。
実際に若い新聞記者はあまりの凄惨たる現場を見て吐いていた。もちろん冒険者が戦いに出れば血は吹く臓物はぶちまける目玉は飛び出る、それくらいのスプラッターは当たり前だ。だが、今回はイメージを優先させるために出来るだけ見栄えの良い戦いぶりを見せつけるべきだと、リフトは新聞社の取材が決まったそのときからずっとこの取材の日までパーティーの全員に訴え続けていた。
勇者であるクレアはもちろん、剣聖のマリスもこの日はリフトの意見を採用し、見栄え重視の戦闘を意識した。ミリアもそんな皆のフォローをするため、戦闘序盤から過剰とも言える支援魔法で支援した。
だが、ゴウキだけがリフトの意向に沿わず、泥臭い戦いをこれでもかと見せつけた。
クレアもマリスもリフトもスムーズで美しい戦いを見せたが、ゴウキの血しぶき飛び散る悪鬼羅刹のような戦いぶりが全てをおじゃんにしてしまった。
「いや、だってあの魔物頑丈なやつだったからな。俺は無駄に打ち込みなんてしたつもりはねーよ?オークは頭蓋骨が分厚い上に脳みそが小さいから、生半可な頭部への攻撃じゃ死ななないし行動不能どころか脳震盪にもならないんだっての。事実クレアに一瞬止められたから隙だらけになっちまって、逃げられそうになっただろ?」
ゴウキはそう言って使っていたフォークの先でクレアを指し示した。行儀の悪さにリフトはまた眉をひそめるが、当のクレアは慣れているので特に気にした様子はない。
「それは・・・」
何かを言おうとするが、クレアに対する批判にもなりかねないのでリフトは思わず口を噤んだ。
ゴウキのあの戦い方が失態というならば、クレアのしたこともまた失態であったからだ。
ハイオークはあのとき逃げだすという行動を選んだが、もし死に物狂いで反撃に出ていたら、攻撃を止められたゴウキが怪我をしていたかもしれないのだ。
「あれについては謝る。私が甘かったわ」
リフトがまごついていると、クレアが頭を下げてゴウキに謝罪した。
「クレアさん、頭を下げる必要はっ・・・!」
「私の軽率な行動で仲間に犠牲が出るかもしれなかった。ゴウキの言うことは正しいわ」
そう言って目を伏せるクレアを見て、リフトは二の句がつかなくなる。
この件については戦闘を終えた直後、新聞記者が勇者パーティーに合流してきてすぐに取材が始まったために有耶無耶になっていたことだった。リフトはわざわざそのときのことを不用意に持ち出し、結果としてクレアに謝罪をさせてしまった形になっている。その事に気付いたリフトはとんだ赤っ恥をかいた気持ちでいっぱいになった。
そして「話はこれで終わりだ」とばかりに再び料理に手を付けだすゴウキに対して苛立ちを感じていた。
戦いを終え、夜になると勇者パーティーは王都の酒場で打ち上げを行った。
その打ち上げの場にて、リフトが穏やかな口調ではあるがゴウキを批判しだしたのだ。
「あぁ?何か問題があったのか?」
これに対しゴウキはまるで悪びれる様子もなく、ただ出された肉料理に食いついている。それを見てリフトは僅かに眉をひそめた。
「大ありだ。今日は新聞記者が勇者パーティーである僕たちの戦いぶりを取材に来ていたんだぞ。ゴウキのあの醜い戦いぶりも、全てが彼らの目に入ることになった。これで僕たちのイメージが悪くなったらどうするんだ?・・・いや、イメージへの影響は避けられないだろうね」
口に出して思い出したのか、リフトは言い切ってから顔をしかめた。
実際に若い新聞記者はあまりの凄惨たる現場を見て吐いていた。もちろん冒険者が戦いに出れば血は吹く臓物はぶちまける目玉は飛び出る、それくらいのスプラッターは当たり前だ。だが、今回はイメージを優先させるために出来るだけ見栄えの良い戦いぶりを見せつけるべきだと、リフトは新聞社の取材が決まったそのときからずっとこの取材の日までパーティーの全員に訴え続けていた。
勇者であるクレアはもちろん、剣聖のマリスもこの日はリフトの意見を採用し、見栄え重視の戦闘を意識した。ミリアもそんな皆のフォローをするため、戦闘序盤から過剰とも言える支援魔法で支援した。
だが、ゴウキだけがリフトの意向に沿わず、泥臭い戦いをこれでもかと見せつけた。
クレアもマリスもリフトもスムーズで美しい戦いを見せたが、ゴウキの血しぶき飛び散る悪鬼羅刹のような戦いぶりが全てをおじゃんにしてしまった。
「いや、だってあの魔物頑丈なやつだったからな。俺は無駄に打ち込みなんてしたつもりはねーよ?オークは頭蓋骨が分厚い上に脳みそが小さいから、生半可な頭部への攻撃じゃ死ななないし行動不能どころか脳震盪にもならないんだっての。事実クレアに一瞬止められたから隙だらけになっちまって、逃げられそうになっただろ?」
ゴウキはそう言って使っていたフォークの先でクレアを指し示した。行儀の悪さにリフトはまた眉をひそめるが、当のクレアは慣れているので特に気にした様子はない。
「それは・・・」
何かを言おうとするが、クレアに対する批判にもなりかねないのでリフトは思わず口を噤んだ。
ゴウキのあの戦い方が失態というならば、クレアのしたこともまた失態であったからだ。
ハイオークはあのとき逃げだすという行動を選んだが、もし死に物狂いで反撃に出ていたら、攻撃を止められたゴウキが怪我をしていたかもしれないのだ。
「あれについては謝る。私が甘かったわ」
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「私の軽率な行動で仲間に犠牲が出るかもしれなかった。ゴウキの言うことは正しいわ」
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そして「話はこれで終わりだ」とばかりに再び料理に手を付けだすゴウキに対して苛立ちを感じていた。
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