上 下
10 / 11

9.拉致(後半)

しおりを挟む
カノンと男達の距離は今にでも襲われる距離にまで近づいてきていた。


「よう、貴族様よ。
俺たちと楽しみましょうや」

「……いや、!」

「逃げても無駄だぜ!」

「ウォ、ウォルター様!!!」



私は助けが来る希望を胸にウォルター様の名前を大きな声で叫んだ。


「そんな叫んだって誰も来ねーよ!」


もうダメだと思ったその時、

倉庫の扉が誰かの手によって開かれた。



「カノン!!」



ウォルター様だ。
好きな人の声がして一気に安心してしまい涙が出てきた。



「……カノンに何をした!」

「あ?誰だてめぇ」

「お、おい!あいつこの女の婚約者だ」

「あ?てことは……。隣国の王太子…」

「お、俺たちは頼まれてやっただけだ!」

「そんなもの関係ない。
私の婚約者に手を出したこと後悔させてやる」



そういうウォルター様は今にでも男2人を切り殺しそうな勢いだった。

だけどウォルター様の後ろから着いてきていたらしいアレク殿下に制されて落ち着きを取り戻していた。

アレク殿下はそのまま男2人を城まで連行して行った。



「カノン!」

「ウォルター様……」

「すみません、怖い思いさせて」



抱きしめられ、一気に恐怖で抑えられていた涙が溢れ出てきた。
涙が止まらずそれから数分は泣き続けた。
その間もウォルター様はずっと慰めてくれたし、
「すみません」「大丈夫」と言ってくれた。



「カノン……。こんな時に言うことじゃないかもしれないんだけど、」

「…はい」

「これからのカノンの人生、僕にくれませんか?一生大切に守っていくと誓います」




え、これってプロポーズ?

私が小さい頃に憧れたようなシチュエーションではないけど今の私は世界一幸せだと自信を持って言える。



「……」



返事をしないとって思ってるけど、嬉しい涙が止まらず返事ができないからウォルター様が少し不安そうにしている。

そんなウォルター様の顔なかなか見れないから泣きながらもその顔を見ていた。



「……ウォルター様」

「はい」

「私、ずっと欠陥聖女って言われてたんです。それでもいいですか?」

「そんなの関係ないです」

「私、ウォルター様のこと大好きです。
これからの人生ウォルター様に捧げます」



そうウォルター様に伝え私の記憶は途切れた。


だからウォルター様が私にキスをした事はあと数年後に明かされる。
それをファーストキス。と伝えウォルター様に愛されるのを私はまだ知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】シャーロットを侮ってはいけない

七瀬菜々
恋愛
『侯爵家のルーカスが、今度は劇団の歌姫フレデリカに手を出したらしい』 社交界にこんな噂が流れ出した。 ルーカスが女性と噂になるのは、今回に限っての事ではない。 しかし、『軽薄な男』を何よりも嫌うシャーロットは、そんな男に成り下がってしまった愛しい人をどうにかしようと動き出す。 ※他のサイトにて掲載したものを、少し修正してを投稿しました

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

王太子に婚約破棄され奈落に落とされた伯爵令嬢は、実は聖女で聖獣に溺愛され奈落を開拓することになりました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

婚約破棄されて満足したので聖女辞めますね、神様【完結、以降おまけの日常編】

佐原香奈
恋愛
聖女は生まれる前から強い加護を持つ存在。 人々に加護を分け与え、神に祈りを捧げる忙しい日々を送っていた。 名ばかりの婚約者に毎朝祈りを捧げるのも仕事の一つだったが、いつものように訪れると婚約破棄を言い渡された。 婚約破棄をされて喜んだ聖女は、これ以上の加護を望むのは強欲だと聖女引退を決意する。 それから神の寵愛を無視し続ける聖女と、愛し子に無視される神に泣きつかれた神官長。 婚約破棄を言い出した婚約者はもちろんざまぁ。 だけどどうにかなっちゃうかも!? 誰もかれもがどうにもならない恋愛ストーリー。 作者は神官長推しだけど、お馬鹿な王子も嫌いではない。 王子が頑張れるのか頑張れないのか全ては未定。 勢いで描いたショートストーリー。 サイドストーリーで熱が入って、何故かドタバタ本格展開に! 以降は甘々おまけストーリーの予定だけど、どうなるかは未定

処理中です...