新たな道の行く先に

常盤桜

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第九話

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数日後、盛大に行われた結婚式では王太子と王太子妃が仲睦まじく寄り添う姿が見られ、参列した貴族はもちろん、ふたりの姿をひと目見ようと王宮前に集まった国民からも多くの祝福の声があがった。

結婚後もエーデルは変わらずユウェルを慈しんだ。王宮専属教師は王妃教育だけでなく各分野の専門家として度々政策に関する意見を求められていたが、ユウェルもまた、その豊富な知識でエーデルを支えていた。

そして・・・

「では授業を始めます。」

王太子妃としての生活にも慣れてきた頃、ユウェルは初めて授業を行った。
最初は、優秀な令息・令嬢を相手に自分の授業が通用するだろうかと不安に感じていたが、ユウェル自身が大切にしている、歴史に付随する様々な事象についての話はとても興味深いと評判を呼び、2週間に1回開催される王太子妃の特別なサロンは多数の希望者で数ヶ月先まで予約が埋まるほどの人気ぶりとなった。このサロンに参加する資格を得るために、学園の成績を上げる努力をする者がいるほどだ。



「人生何が起こるかわからないものね・・・。」

授業後のお茶会を楽しむ参加者を見ながらユウェルは呟いた。
夢を諦め、別の道を歩み続けた先にこんなに素晴らしい未来が待っているなんて、想像もしていなかった。あの頃思い描いていた未来とは違うが、ユウェルはいま、確かに教鞭を執っている。

「今日の授業はどうだった?」

参加者を見送った後、執務室に戻る途中の中庭でエーデルが待っていた。エーデルがこうして迎えに来て、そのまま中庭を散歩するというのがサロン終わりの習慣となっていた。

「今日もみなさん熱心に話を聞いてくださったので私も楽しかったです。」

「そうか、良かったな。」

エーデルはその日の授業の内容や参加者の反応、お茶会ではどんな話題が出たのかなど、いつもユウェルの話を聞きたがった。聞いてもらえるのは嬉しいが、何故そんなにも?と尋ねたことがある。

「君の話を聞くのが楽しいんだ。それに、君のことなら何でも知りたい。だからどんな些細なことでも聞かせてくれ。」

とのことだったが、そんな風に自分のことを理解しようとしてもらえるのは素直に嬉しかった。

「エーデル様、私とっても幸せです。」

「そうか、私もだ!」

今日も二人は手を繋ぎ中庭を歩く。きっと、これからもずっと・・・。



<完>
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