36 / 382
3章 るるさんとコラボ 2人はるるハルって良い響きだね
36話 【コラボ配信】「ふたりはるるハル!」6
しおりを挟む
なんか自分のペースで人と話しながら好きなことしてると温まってくるよね。
普段は誰とも話さない生活な僕だけども、たまにはこういうこともあるんだ。
だからお口は疲れてきたけどもちょっとだけ楽しい僕。
「あ、ここのダンジョン浅いんですね。 もうボスフロアっぽいです」
「そうだねぇ……」
「るるさん、大丈夫ですか?」
「だぁいじょうぶぅ……」
「無理はしちゃだめですよ?」
「………………………………」
るるさん、なんかげんなりしてる。
……昨日の夜眠れなかったりしたのかな?
【ハルちゃん……もうちょっと手加減というものを……】
【るるちゃんかわいそう……】
【こんなにもるるちゃんがかわいそうな配信はあっただろうか】
【この前のやばかったの以来じゃない?】
【そうか、つい最近だったな】
【草】
なんか普段の配信……って言っても2回3回しか見てないんだけどね……そのときのるるさんに比べると、ものすごく疲れてる。
ペース配分間違えた?
ダメだよ?
前衛さんこそスタミナ管理だよ?
【多分本気で分かってないハルちゃん】
【ま、まあ幼女だし……】
【合法ロリならるるちゃんとほぼ同い年だけどな】
【うん……今回の見るとロリって思えるよ……】
【ハルちゃんにもできないことってあるんだね】
【むしろできることとそれ以外がはっきりしてそう】
【興味があればすごそう。 ダンジョン攻略のスキル的に】
【スキルツリーも対人ツリーも完全に尖ってるタイプか】
【興味が無いことには今のるるちゃんみたいな扱いになりそう】
【草】
えみさんからの通信によると、ここは10階層と浅いところ。
この前みたいなのになったら困るからって、レベル自体はそこそこだけども別に深くもないってのを選んだらしい。
英断だね。
だって、なぜかるるさんこんなに疲れてるんだもん。
きっと何かがあって、付き合いが長いらしいえみさんが前もって決めたんだろう。
帰ったら「ヘンタイさん」って呼んであげよっと。
ここの人たちみたいに喜んでくれるよね。
【けど道中はことごとく悲惨だったな……】
【ああ……】
【本当にハルちゃんひとりでできちゃったもんね……】
【る、るるちゃんも……ムード盛り上げようってしてたから……】
【まずハルちゃんが乱射】
【近くの敵はだいたいだいたい死ぬ】
【ハルちゃんに合わせてしゃがんでたるるちゃんが起き上がる】
【るるちゃん、お仕事ないって悟る】
【起き上がって2人でドロップ拾い】
【そのあいだに反応して向かってくるモンスターたちをハルちゃんが順次乱射】
【遠くの敵もだいたい死ぬ】
【るるちゃん、お仕事ないって悟る】
【2人で手分けしてドロップ拾い】
【そこからやっと1匹とか2匹とかのモンスターが来るようになって、るるちゃんが軽く戦ってからハルちゃんがズドン】
【で、またドロップ拾い】
【途中からるるちゃんが率先してひとりでもくもくドロップ拾い】
【……うん、るるちゃんがんばった】
【すっごくがんばった】
【えらい】
【この乱射幼女……どうして……】
伏し目がちなるるさんが気になるから、気が付けば普段の逆で僕から話しかける形が多くなってる。
「ごめんなさい、るるさん」
「ううん、いいの」
「るるさんってものすごく運が悪いので」
「うん、運が悪いの」
【草】
【るるちゃん、話聞けてない……】
【もしかして:普通に戦うより疲れてる】
【なんならトラップで大変な目に遭うより疲れてる】
【かわいそう】
【あれ? でも】
「るるさんに近づく敵を先に倒して回ったからか、罠、引っかかりませんでしたね。 良かったですね」
「うん。 ……うん?」
あ、ちょっと元気になった?
やっぱり女の子は話してあげなきゃだめっぽいね。
「今日は念のためにって、見えてる罠踏まないように誘導したんですけど」
「うん? ……うん?」
【えっ】
【え?】
【ゑ?】
【いやいや、罠から誘導って……マジ?】
【……ハルちゃんは冗談は言わないよな】
【だって天然だもん】
【むしろ言えないよな】
【ああ、言えない】
【ハルちゃんはそんなこと言わない】
【「嘘つく」とか「騙す」とかはハルちゃんと最も縁のない言葉】
【草】
【負の方向に信頼が厚いハルちゃん】
僕がるるさんと一緒に潜るのは、今日が実質的に初めて。
あのとき?
救助要請のあのときは別だし……。
で、今日は様子がおかしい彼女のこと、最初からちょっと観察してた。
……そうしたらるるさん、なぜかことごとく罠のある場所を踏み抜こうとしてるんだ……いやほんと、なんで?
分かってはいるけどね……それがみんなが呼んでる「呪い様」ってやつなんだって。
観察した限り、彼女はちゃんと周囲を見てるし足元も警戒し続けてる。
……でもどうしてかそっちの方ばっか足が向くんだよねぇ……呪いって怖い。
僕には無くって良かった。
いや、無いからこそこうして幼女するハメになって、そこそこに居心地の良かった職場クビになったんだけどね……。
あ、ちなみに会社の件は誤解を解いてくれたらしく、不登校もとい出社しなくなっての解雇じゃなくなったらしい。
ありがたいね。
「……ハルちゃん? その、誘導って」
「え? ああ……るるさん、そこに立ってください」
まだちょっと頭が回ってない感じだから分かりやすい場所へ誘導。
「え? う、うん……」
「そこから真っ直ぐ歩いてくださいね」
「え、えっと……うん……」
【……罠が見えるのはスカウトスキルで知ってるけど】
【ハルちゃん、使うそぶり無かったよな……?】
【ああ、ただただ乱射してただけだった】
【あ、でもそう言えば何かとるるちゃんのこと呼んで「そこを右」とか「左」って……あれって誤射避けるためじゃなくってもしかして……】
「……ついたよ?」
「じゃあ動かないでくださいね」
今日はなんだか物足りないって思ったら、最初の石集めが無かったんだって思いだした僕。
数歩歩き回っていくつかの石ころを拾い上げて――。
「音、しますからね」
「う、うん……わっ!?」
がしゃんっ。
痛そうな音。
るるさんの左右40センチくらいのところに石を投げると、片方はひゅんっと毒矢、もう片方はばしっとトラバサミが牙を剥く。
罠の方向的に大丈夫だって確信してのだからケガとか無いだろうけど、びっくりはするよね、やっぱり。
【は?】
【罠そこぉ!?】
【あったよ! 罠!】
【えぇ……】
「るるさんは素直なので誘導は楽でした」
「そ、そっか……ありがと……」
ちゃんと教えてあげたからそこまでびっくりしてないね。
【天然に褒められる素直っぷり】
【良くも悪くも、るるちゃんってば普段から指示され慣れしてるしな】
【えみお母さんのおかげだな!】
「……ハルちゃん。 これ、もしかして今日、初めから?」
「はい。 なんかるるさん、ほっとくとことごとく罠の方に向かうので」
【ああ……それで普段から転んだり罠踏んだりするのが今日は無かったのか……】
【え? じゃあハルちゃん一緒ならるるちゃん、もうドジっ子卒業?】
【ドジっ子って言うか不幸体質だけどな】
【呪い様に対抗するには天然だったか……!】
【どっちかって言うとスカウトスキルじゃね?】
【とりあえずるるハルが正義だってのは分かった】
ぼーっと足元の罠の跡を見てる、るるさん。
そうだよね、やっぱ怖いよね、そういうの。
「僕と一緒のときは罠から守ってあげられますから大丈夫ですよ」
「……………………………………」
む。
また変な感じになってる……なんでだろ。
「帰ったら髪の毛は好きにして良いですから」
そう甘い飴を投げてあげてもなんか固まってる。
この子、良くなるよねぇこうやって。
【ん?】
【今】
【なんでもって】
【るるちゃんには言ったな】
【つまり帰ったら百合展開?】
【姉御のためにおねショタ展開とも言っておいてあげよう】
【あなたいい人ね。 後で郵便受け見といて】
【は?】
【草】
【なんか犯行予告にしか聞こえないセリフが】
【え……こわ……】
「おーい」
なんかるるさんが固まっちゃってるから近づく。
……本気で怖くなっちゃった?
「だいじょうぶ?」
「…………うん」
「本当? リストバンド使う?」
「……ううん。 ハルちゃんが居るから大丈夫」
「そ。 なんかあったら言ってね」
【尊い】
【てえてえ】
【ハルちゃんが純粋にるるちゃんのこと心配してる声……】
【深く考えられなさそうなハルちゃんだからこそ伝わってくる優しさ】
【優しい】
【いい子】
【けど、確かにソロのレンジャーだから罠発見スキルはあると思ったけど……ここまで全回避だろ?】
【やば】
【これ、事務所がハルちゃんのこと、もう離さないんじゃ?】
【いや、これだとるるちゃんの不幸っぷりが皆無になる。 撮れ高が壊滅だ】
【ああ……るるちゃんのアイデンティティーが崩壊しちゃう……】
【草】
【悲報・るるちゃん、まさかの個性喪失】
【いやまあ、るるちゃんにとっては良いことだから……】
【まあな、1回ガチで死にかけたし】
「――うん。 大好きだよ」
「? そうですか」
なんか毎日言われてる感じのラブコール。
うん、妹的存在として好かれてるだろうし、別にいいけど。
【!?】
【ひぇっ】
【おかしい、聞き間違いかな……るるちゃんの声、ドスがきいてるって言うか……】
【……あのさ、俺、ヤンデレの彼女居たんだけどさ】
【おう? 視聴者全員にケンカ売るつもりか?】
【大丈夫だ、血を飲まされそうになって逃げ出した】
【草】
【……でさ。 今のるるちゃんの感じ、あのときの彼女に……あれ、玄関の鍵閉めたはz】
【え?】
【おい、そこで止めるなよ!】
【返事がない……】
【もしかして:呪い様がヤンデレの彼女呼び寄せた】
【え……こわ……】
【これもう迂闊にしゃべれねぇじゃねぇか草】
【呪い様の精度やばない? と言うかもはや因果関係収束してない?】
【呪い様に引っかかるワード、呪い様が時空をさかのぼって探知してる……?】
【この配信やべぇ……】
「るるさん? お腹空いてます?」
「ううん……何でもないよ」
「そうですか」
この子ってば気分の乱高下が激しいからなー。
ホテルでもときどきなってる気がするし……まぁ害もないからほっといてるけどさ。
「でもるるさんに何かあったら困るので、ここから倒しちゃいますね」
「うん……………………………………、え?」
どんっ。
今日の行きでは最後の攻撃。
残りは引き返すだけだから多分そこまでモンスター出ないし。
【え?】
【あ、そう言えばここボスフロアだった】
【草】
【視聴者揃って忘れてて草】
「僕たちが立ってるところでぎりぎり起きない距離だったので、ボスは眠ったまま仕留めました」
「え……え?」
【えぇ……】
【悲報・とうとうボスすらヘッドショット】
【しかも寝たまま】
【さらには画面外って言う】
【ボスしゃんかわいそう】
【とことん配信と相性悪くって草】
【えみお姉ちゃん……ハルちゃんのカメラ、良いの買ったげて……暗いところでもちゃんと見えるやつ……じゃないと見せ場が皆無なの……】
ずしんと崩れる音。
「まぁおっきいニワトリさんでしたから、るるさんひとりでも大丈夫だったとは思いますけど」
「あ、ありがと……」
【にわとりさん】
【かわいい】
【……ニワトリ? それって】
【コカトリス!?】
【コカトリスって毒と石化持ちだから接近戦のるるちゃんとは相性最悪じゃねぇか】
【だから遠距離からのヘッドショットでワンキルだったんじゃ?】
【お前、ハルちゃんがそこまで考えたと思うか?】
【いや? あり得ないけど?】
【草】
【すごいことしたのにハルちゃんの天然って言うのに吸われてて草】
「じゃあドロップと宝箱拾ったら帰りましょうか」
「……そうだねぇ……」
【ああ、るるちゃんの目が! 目が!】
【さっきからハルちゃんしか見てなくてこわいよー】
【しかも絶妙に光が……これ、ハイライトオフってやつじゃ?】
【……るるちゃん、ハルちゃんにまた助けられてなんかスイッチ入っちゃった?】
【どうにもそうっぽいですな】
【おい、下手に言うと何かがやって来るぞ】
【え、こわ】
【……今回の配信、いろいろやばいよな】
【ああ】
【なにしろ、あの深谷るるが1回も不幸発動しなかったんだからな】
【そっちかよ!】
【草】
普段は誰とも話さない生活な僕だけども、たまにはこういうこともあるんだ。
だからお口は疲れてきたけどもちょっとだけ楽しい僕。
「あ、ここのダンジョン浅いんですね。 もうボスフロアっぽいです」
「そうだねぇ……」
「るるさん、大丈夫ですか?」
「だぁいじょうぶぅ……」
「無理はしちゃだめですよ?」
「………………………………」
るるさん、なんかげんなりしてる。
……昨日の夜眠れなかったりしたのかな?
【ハルちゃん……もうちょっと手加減というものを……】
【るるちゃんかわいそう……】
【こんなにもるるちゃんがかわいそうな配信はあっただろうか】
【この前のやばかったの以来じゃない?】
【そうか、つい最近だったな】
【草】
なんか普段の配信……って言っても2回3回しか見てないんだけどね……そのときのるるさんに比べると、ものすごく疲れてる。
ペース配分間違えた?
ダメだよ?
前衛さんこそスタミナ管理だよ?
【多分本気で分かってないハルちゃん】
【ま、まあ幼女だし……】
【合法ロリならるるちゃんとほぼ同い年だけどな】
【うん……今回の見るとロリって思えるよ……】
【ハルちゃんにもできないことってあるんだね】
【むしろできることとそれ以外がはっきりしてそう】
【興味があればすごそう。 ダンジョン攻略のスキル的に】
【スキルツリーも対人ツリーも完全に尖ってるタイプか】
【興味が無いことには今のるるちゃんみたいな扱いになりそう】
【草】
えみさんからの通信によると、ここは10階層と浅いところ。
この前みたいなのになったら困るからって、レベル自体はそこそこだけども別に深くもないってのを選んだらしい。
英断だね。
だって、なぜかるるさんこんなに疲れてるんだもん。
きっと何かがあって、付き合いが長いらしいえみさんが前もって決めたんだろう。
帰ったら「ヘンタイさん」って呼んであげよっと。
ここの人たちみたいに喜んでくれるよね。
【けど道中はことごとく悲惨だったな……】
【ああ……】
【本当にハルちゃんひとりでできちゃったもんね……】
【る、るるちゃんも……ムード盛り上げようってしてたから……】
【まずハルちゃんが乱射】
【近くの敵はだいたいだいたい死ぬ】
【ハルちゃんに合わせてしゃがんでたるるちゃんが起き上がる】
【るるちゃん、お仕事ないって悟る】
【起き上がって2人でドロップ拾い】
【そのあいだに反応して向かってくるモンスターたちをハルちゃんが順次乱射】
【遠くの敵もだいたい死ぬ】
【るるちゃん、お仕事ないって悟る】
【2人で手分けしてドロップ拾い】
【そこからやっと1匹とか2匹とかのモンスターが来るようになって、るるちゃんが軽く戦ってからハルちゃんがズドン】
【で、またドロップ拾い】
【途中からるるちゃんが率先してひとりでもくもくドロップ拾い】
【……うん、るるちゃんがんばった】
【すっごくがんばった】
【えらい】
【この乱射幼女……どうして……】
伏し目がちなるるさんが気になるから、気が付けば普段の逆で僕から話しかける形が多くなってる。
「ごめんなさい、るるさん」
「ううん、いいの」
「るるさんってものすごく運が悪いので」
「うん、運が悪いの」
【草】
【るるちゃん、話聞けてない……】
【もしかして:普通に戦うより疲れてる】
【なんならトラップで大変な目に遭うより疲れてる】
【かわいそう】
【あれ? でも】
「るるさんに近づく敵を先に倒して回ったからか、罠、引っかかりませんでしたね。 良かったですね」
「うん。 ……うん?」
あ、ちょっと元気になった?
やっぱり女の子は話してあげなきゃだめっぽいね。
「今日は念のためにって、見えてる罠踏まないように誘導したんですけど」
「うん? ……うん?」
【えっ】
【え?】
【ゑ?】
【いやいや、罠から誘導って……マジ?】
【……ハルちゃんは冗談は言わないよな】
【だって天然だもん】
【むしろ言えないよな】
【ああ、言えない】
【ハルちゃんはそんなこと言わない】
【「嘘つく」とか「騙す」とかはハルちゃんと最も縁のない言葉】
【草】
【負の方向に信頼が厚いハルちゃん】
僕がるるさんと一緒に潜るのは、今日が実質的に初めて。
あのとき?
救助要請のあのときは別だし……。
で、今日は様子がおかしい彼女のこと、最初からちょっと観察してた。
……そうしたらるるさん、なぜかことごとく罠のある場所を踏み抜こうとしてるんだ……いやほんと、なんで?
分かってはいるけどね……それがみんなが呼んでる「呪い様」ってやつなんだって。
観察した限り、彼女はちゃんと周囲を見てるし足元も警戒し続けてる。
……でもどうしてかそっちの方ばっか足が向くんだよねぇ……呪いって怖い。
僕には無くって良かった。
いや、無いからこそこうして幼女するハメになって、そこそこに居心地の良かった職場クビになったんだけどね……。
あ、ちなみに会社の件は誤解を解いてくれたらしく、不登校もとい出社しなくなっての解雇じゃなくなったらしい。
ありがたいね。
「……ハルちゃん? その、誘導って」
「え? ああ……るるさん、そこに立ってください」
まだちょっと頭が回ってない感じだから分かりやすい場所へ誘導。
「え? う、うん……」
「そこから真っ直ぐ歩いてくださいね」
「え、えっと……うん……」
【……罠が見えるのはスカウトスキルで知ってるけど】
【ハルちゃん、使うそぶり無かったよな……?】
【ああ、ただただ乱射してただけだった】
【あ、でもそう言えば何かとるるちゃんのこと呼んで「そこを右」とか「左」って……あれって誤射避けるためじゃなくってもしかして……】
「……ついたよ?」
「じゃあ動かないでくださいね」
今日はなんだか物足りないって思ったら、最初の石集めが無かったんだって思いだした僕。
数歩歩き回っていくつかの石ころを拾い上げて――。
「音、しますからね」
「う、うん……わっ!?」
がしゃんっ。
痛そうな音。
るるさんの左右40センチくらいのところに石を投げると、片方はひゅんっと毒矢、もう片方はばしっとトラバサミが牙を剥く。
罠の方向的に大丈夫だって確信してのだからケガとか無いだろうけど、びっくりはするよね、やっぱり。
【は?】
【罠そこぉ!?】
【あったよ! 罠!】
【えぇ……】
「るるさんは素直なので誘導は楽でした」
「そ、そっか……ありがと……」
ちゃんと教えてあげたからそこまでびっくりしてないね。
【天然に褒められる素直っぷり】
【良くも悪くも、るるちゃんってば普段から指示され慣れしてるしな】
【えみお母さんのおかげだな!】
「……ハルちゃん。 これ、もしかして今日、初めから?」
「はい。 なんかるるさん、ほっとくとことごとく罠の方に向かうので」
【ああ……それで普段から転んだり罠踏んだりするのが今日は無かったのか……】
【え? じゃあハルちゃん一緒ならるるちゃん、もうドジっ子卒業?】
【ドジっ子って言うか不幸体質だけどな】
【呪い様に対抗するには天然だったか……!】
【どっちかって言うとスカウトスキルじゃね?】
【とりあえずるるハルが正義だってのは分かった】
ぼーっと足元の罠の跡を見てる、るるさん。
そうだよね、やっぱ怖いよね、そういうの。
「僕と一緒のときは罠から守ってあげられますから大丈夫ですよ」
「……………………………………」
む。
また変な感じになってる……なんでだろ。
「帰ったら髪の毛は好きにして良いですから」
そう甘い飴を投げてあげてもなんか固まってる。
この子、良くなるよねぇこうやって。
【ん?】
【今】
【なんでもって】
【るるちゃんには言ったな】
【つまり帰ったら百合展開?】
【姉御のためにおねショタ展開とも言っておいてあげよう】
【あなたいい人ね。 後で郵便受け見といて】
【は?】
【草】
【なんか犯行予告にしか聞こえないセリフが】
【え……こわ……】
「おーい」
なんかるるさんが固まっちゃってるから近づく。
……本気で怖くなっちゃった?
「だいじょうぶ?」
「…………うん」
「本当? リストバンド使う?」
「……ううん。 ハルちゃんが居るから大丈夫」
「そ。 なんかあったら言ってね」
【尊い】
【てえてえ】
【ハルちゃんが純粋にるるちゃんのこと心配してる声……】
【深く考えられなさそうなハルちゃんだからこそ伝わってくる優しさ】
【優しい】
【いい子】
【けど、確かにソロのレンジャーだから罠発見スキルはあると思ったけど……ここまで全回避だろ?】
【やば】
【これ、事務所がハルちゃんのこと、もう離さないんじゃ?】
【いや、これだとるるちゃんの不幸っぷりが皆無になる。 撮れ高が壊滅だ】
【ああ……るるちゃんのアイデンティティーが崩壊しちゃう……】
【草】
【悲報・るるちゃん、まさかの個性喪失】
【いやまあ、るるちゃんにとっては良いことだから……】
【まあな、1回ガチで死にかけたし】
「――うん。 大好きだよ」
「? そうですか」
なんか毎日言われてる感じのラブコール。
うん、妹的存在として好かれてるだろうし、別にいいけど。
【!?】
【ひぇっ】
【おかしい、聞き間違いかな……るるちゃんの声、ドスがきいてるって言うか……】
【……あのさ、俺、ヤンデレの彼女居たんだけどさ】
【おう? 視聴者全員にケンカ売るつもりか?】
【大丈夫だ、血を飲まされそうになって逃げ出した】
【草】
【……でさ。 今のるるちゃんの感じ、あのときの彼女に……あれ、玄関の鍵閉めたはz】
【え?】
【おい、そこで止めるなよ!】
【返事がない……】
【もしかして:呪い様がヤンデレの彼女呼び寄せた】
【え……こわ……】
【これもう迂闊にしゃべれねぇじゃねぇか草】
【呪い様の精度やばない? と言うかもはや因果関係収束してない?】
【呪い様に引っかかるワード、呪い様が時空をさかのぼって探知してる……?】
【この配信やべぇ……】
「るるさん? お腹空いてます?」
「ううん……何でもないよ」
「そうですか」
この子ってば気分の乱高下が激しいからなー。
ホテルでもときどきなってる気がするし……まぁ害もないからほっといてるけどさ。
「でもるるさんに何かあったら困るので、ここから倒しちゃいますね」
「うん……………………………………、え?」
どんっ。
今日の行きでは最後の攻撃。
残りは引き返すだけだから多分そこまでモンスター出ないし。
【え?】
【あ、そう言えばここボスフロアだった】
【草】
【視聴者揃って忘れてて草】
「僕たちが立ってるところでぎりぎり起きない距離だったので、ボスは眠ったまま仕留めました」
「え……え?」
【えぇ……】
【悲報・とうとうボスすらヘッドショット】
【しかも寝たまま】
【さらには画面外って言う】
【ボスしゃんかわいそう】
【とことん配信と相性悪くって草】
【えみお姉ちゃん……ハルちゃんのカメラ、良いの買ったげて……暗いところでもちゃんと見えるやつ……じゃないと見せ場が皆無なの……】
ずしんと崩れる音。
「まぁおっきいニワトリさんでしたから、るるさんひとりでも大丈夫だったとは思いますけど」
「あ、ありがと……」
【にわとりさん】
【かわいい】
【……ニワトリ? それって】
【コカトリス!?】
【コカトリスって毒と石化持ちだから接近戦のるるちゃんとは相性最悪じゃねぇか】
【だから遠距離からのヘッドショットでワンキルだったんじゃ?】
【お前、ハルちゃんがそこまで考えたと思うか?】
【いや? あり得ないけど?】
【草】
【すごいことしたのにハルちゃんの天然って言うのに吸われてて草】
「じゃあドロップと宝箱拾ったら帰りましょうか」
「……そうだねぇ……」
【ああ、るるちゃんの目が! 目が!】
【さっきからハルちゃんしか見てなくてこわいよー】
【しかも絶妙に光が……これ、ハイライトオフってやつじゃ?】
【……るるちゃん、ハルちゃんにまた助けられてなんかスイッチ入っちゃった?】
【どうにもそうっぽいですな】
【おい、下手に言うと何かがやって来るぞ】
【え、こわ】
【……今回の配信、いろいろやばいよな】
【ああ】
【なにしろ、あの深谷るるが1回も不幸発動しなかったんだからな】
【そっちかよ!】
【草】
29
お気に入りに追加
554
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
女の子にされちゃう!?「……男の子やめる?」彼女は優しく撫でた。
広田こお
恋愛
少子解消のため日本は一夫多妻制に。が、若い女性が足りない……。独身男は女性化だ!
待て?僕、結婚相手いないけど、女の子にさせられてしまうの?
「安心して、いい夫なら離婚しないで、あ・げ・る。女の子になるのはイヤでしょ?」
国の決めた結婚相手となんとか結婚して女性化はなんとか免れた。どうなる僕の結婚生活。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・
白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。
その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。
そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。
幼女になった響ちゃんは男の子に戻りたい!【TS百合】:1 ~「魔法さん」にTSさせられた僕がニートを貫いた1年間~
あずももも
大衆娯楽
僕はある朝に銀髪幼女になった。TSして女の子になった。困ったけども身寄りもないし「独身男性の家に銀髪幼女がいる」って知られたら通報される。怖い。だから僕はこれまで通りに自堕落なニートを満喫するって決めた。時間だけはあるから女の子になった体を観察してみたり恥ずかしがってみたり、普段は男の格好をしてみたりときどき無理やり女の子の格好をさせられたり。肉体的には年上になったJCたちや「魔法さん」から追われてなんとか逃げ切りたかった。でも結局男には戻れなさそうだし、なにより世界は変わったらしい。――だから僕は幼女になってようやく、ひとりこもってのニートを止めるって決めたんだ。
◆響ちゃんは同じことをぐるぐる考えるめんどくさい子です。癖が強い子です。適度に読み飛ばしてください。本編は2話~50話(の1/2まで)、全部で111万文字あります。長いです。それ以外はお好みで雰囲気をお楽しみください。
◆3部作のうちの1部目。幼女な女の子になったTS初期の嬉し恥ずかしと年下(肉体的には年上)のヒロインたちを落とすまでと、ニートから脱ニート(働くとは言っていない)までの1年間を描きます。1部のお家を出るまでの物語としては完結。2部では響ちゃんの知らなかった色々を別の視点から追い直し、3部でTSの原因その他色々を終えて……幼女のままハーレムを築いてのTS百合なハッピーエンドを迎えます。特に生えたり大きくなったりしません。徹頭徹尾幼女です。
◆小説として書いた作品を2019年にやる夫スレでAA付きで投稿&同年に小説として「幼女にTSしたけどニートだし……どうしよう」のタイトルで投稿して完結→22年12月~23年8月にかけてなるべく元の形を維持しつつ大幅に改稿→23年7月から漫画化。他小説サイト様へも投稿しています。
◆各話のブクマや★評価が励みです。ご感想はツイッターにくださると気が付けます。
◆セルフコミカライズ中。ツイッター&ニコニコで1Pずつ週2更新です。
せっかく女の子に生まれ変わったんだから、僕はただ……お嬢さまを僕好みに育てるついでに愛でて撫で回して甘やかして楽しもうって思っただけなのに!
あずももも
ファンタジー
かつては男(年齢不詳、たぶん高校生以上)だったのと、ぼんやりと現代で生きていたっていうのしか覚えていない僕は、「リラ」っていう女の子として生まれ直してしまった。 それならまだしも、発育不良……この世界基準では10歳くらいにしか見てもらえない、いや見た目はかわいいけど、……でも、自分がかわいくたってしょうがないじゃない? そもそも自分だし。 ってことで僕自身のことは諦めて、この愛くるしい見た目を最大限に発揮して、手当たり次第女の子や女の人にセクハラもとい甘えるっていうのを謳歌していた僕、リラ。 だけど、あるできごとを境にジュリーさまっていう女神な天使さまに一途にするって決めたんだ。 だから僕は、お嬢さまにすべてを捧げ続ける。 これからも。 ☆ そんな、彼だった彼女なリラちゃんが、延々とジュリーちゃんに欲望を振りまき、やがてタイトルにあるようなことを叫んでのおしまいとなるだけのおはなしです。 この作品は、小説家になろう・ハーメルン・カクヨム・アルファポリス・ノベルアッププラスと節操なく同時連載です。 ☆ 2021年01月13日(水)完結致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる