上 下
241 / 311
8章 「ユズワールド」脱出と、新顔2匹/人と

239話 【悲報・ユズちゃん、やらかした】

しおりを挟む
火の玉。

それにどんどん集まっていくモンスターたち。

……なんだか、綺麗だ。

【ぽけーっとしてるユズちゃん】
【自分の仕業だとすら……もう……】
【おおぅ……(顔を覆う)】
【ユズちゃん……みんなにお世話されてね……】

「あれのおかげで……モンスターの大半は無力化できているのか。 もう俺たちには見向きもしていないな」

「あれだけの魔力の塊ですので、我先に取り込もうと本能的に……まぁあまりにも巨大なので吸い込まれるのですが」

【誘蛾灯か】
【なぁにこれぇ……】
【おやびんのブレス……のはずだったんだがなぁ】
【違う……これブレス違う……】
【炎系魔法の極大魔法だって言うからな……】

「なら、俺たちがワイバーンに乗って残党を刈っていけば」

「ええ、そう遠くないうちに、殲滅できるかと。 あれに吸い寄せられない個体はどれも強力ですが、逆に申せば――それだけを倒せば」

【なるほど】
【ユズちゃんすごいね!】
【問題はなにひとつ理解していないことだがな!】
【草】
【ユズちゃん……】
【ユズちゃんは何してるのかな?】

ごおおおお。

すごい音。

おかげで、隣に来てエリーさんと離してる優さんの言うことも聞こえない。

することもないし、手でも握ってよう。

なんだか分からないけども、こうやってると何かがほわんってなるんだ。

【おててにぎにぎ】
【にぎにぎ】
【ずーっとにぎにぎしてるおてて見てるぅ……】
【草】

【ユズちゃん……】
【ちょ、ちょうちょするよりはマシだから……】
【そうだね! おやびんとエリーちゃんがホールドしてくれてるからね!】
【なるほど……ユズちゃんがやらかさないためには、これくらいのフォーメーションが必要だったか……】
【草】

「……あの、モンスターたち、無限に湧き出てきてますけど……?」

「大丈夫です。 あの極大魔法のあたりにちょうど、大きな転移陣があるようですから、あれがある間は増えません」

「……柚希先輩のあれ、すごいんですか?」
「予想外かつ想定外ですが、結果的にはほぼ放置で片付きますね」

【しゅごい】
【もしかして:ユズちゃん、ファインプレー】
【ファインプレーもなにも、特大ホームランだぞ】
【モンスターの大半を無力化、さらに新規POP制限か】

反対からは理央ちゃん。

けどやっぱり聞こえない。

エリーさんの言うことなら半分くらい聞こえるけど……なんか聞き取りづらいんだよなぁ。

なんでだろう。

みんなの会話が「まるで外国語みたいに」聞こえるんだ。

【ユズちゃん、やることはすごいんだよなぁ】
【本人の意識しない形でな……】
【固有能力だからな……】
【代償は正気度か……】
【ああ、なるほど、それで……】
【草】

【ここまで来ると、無自覚で動いてもらった方が楽だから……】
【それ、まーた何かしでかしたときにもう一度言ってみろ】
【ごめんね】
【いいよ】
【草】

『――――――――――――――――』

声。

「はっきり聞こえないけども、みんなの声よりもはっきり聞き取れる音」だ。

また、この声。

これまでとは違う声。

「………………………………」

【草】
【まーたきょろきょろしてる……】
【ユズちゃん? そこにはなんにもないよ??】
【なぁんでこの子はなにもないとこ探してるのぉ……?】
【なんかこわいよー】

【ま、まあ、猫が何もないとこじっと見る感じって思えば……】
【あーあるある】
【人間には聞き取れない音を聞き取っているんだろうな】
【草】
【妖精さんだもんね!】

「? ユズ様?」
「……ううん、なんでも」

……振り返ったけども、それはエリーさんからのものでもない。

「きゅ?」
「ぴ?」

2匹のでもない。

……じゃあ、これは誰のなんだろう。

もうちょっとでちゃんと聞こえそうなのに、音だけが聞こえて声が聞こえない。

そんな、もやもや感。

「………………………………」

「柚希先輩、なんで手を――」

なんとなく。

なんとなくで、僕は手を延ばす。

『――――――――――――――――』

僕の手がその声に触れ――

――――――――ずぅん。

「?」

その瞬間――世界が、きしんだ。

よく分からないけども――決定的な何かが、崩れた瞬間。
あり得ないことが起こったっていうのが、なんとなく分かるんだ。

「――退避します! ユズ様! 皆様! 眷属並びに人間様全てに通告します! 全力退避です!」

「へ?」

「今し方のものは、ワイバーンのブレスが最高までバフされての炎系極大魔法――止まりのはずだったのですが、本当にどうしてか闇系極大魔法になっています!」

【闇系極大魔法?】
【……なんかものすごくヤな予感するんだけど】
【奇遇だな、俺たちもだ】

【安心して? みんなだよ】
【ユズちゃん以外のな!】
【あとおやびんもな!】
【草】

「いえ、これは同時展開……!? 極大魔法の、二重展開……そんな、まさか……!?」

あわてた声。

だけども、あまり集中できないんだ。

【もしかして:魔王が女神に放った、あの魔法】
【ふぁっ!?】
【えぇ……】
【ブラックホールかよ!?】

【確かにビジュアルはそっくりだが……】
【魔王Gが女神を倒そうとしての自爆魔法と同じのをユズちゃんが!?】

「……ええと?」

振りかえると……汗だくになってるエリーさん。

……こんなに涼しい場所で、こんなに風吹いてる場所で、さらには紐しか身に付けてないのに、何が暑いんだろ。

「――吸い込まれます! あれは、魔力を吸い込んで世界ごとを瓦解させる極大魔法なので! ですから全力で、全力であの太陽から離れてくださいぃぃぃぃー!」

【は?】
【えぇ……】
【さすがユズちゃんだぜ!】
【ことごとくを固有能力でかき乱す精霊さんだもんな!】
【ああ、これでますます人外の可能性が高くなったもんな!】
【草】
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

処理中です...