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7章 ダンジョン化と異界と、テイム

215話 おやびんさんと仲良くなってきた

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「に、人間も、雌は……数は少ないけど目立つ乳があるもんだって」

「は?」

「い、いや、俺様が言ったわけじゃ」

「それで?」

「そ、その、だな……」

「………………………………」

おやびんさん……まさか僕のこと、女の子だって思ってるとか?

そんなコンプレックスを、夢の中の存在ごときがえぐってきて良いの?

ねぇ?

そんなの、いくら僕でも怒るよ?

例えば理央ちゃんが、冗談で僕のを「ちっちゃいからかわいい」とか言ってくるときみたいに。

【こわいよー】
【ユズちゃんが……ユズちゃんが、低音ボイスに……】
【ユズちゃん……指摘されると怒るんだ……】
【割と本気で怒ってて草】
【ユズちゃんも一応は乙女だったんだね……】

「わ、悪い……この通りだ」

ぺこり。

でっかい頭を地面に突っ伏してまで謝意を表明してくるおやびんさん。

「……分かれば良いんです」

ふぅ。

……夢の中なんだから、ムキになる必要もない、か。

「分かりましたね? 僕たちみたいなのも、普通の人間なんです」

あと、男だからね。

「そうか……人間でも生えて飛んでるやつが……」
「そうです、間違えちゃダメです!」

【え?】
【??】
【ほんとぉ?】
【草】
【視聴者が一切信用してなくて草】

【座敷童とか妖精とか精霊とかの方が似合ってるし……】
【そもそもユズちゃんだし……】
【ちょうちょ(物理 だし……】
【ねぇ……?】
【うん、1度で良いから今までのアーカイブ見直そうユズちゃん!】

確かに羽はひらひら動くし、鱗粉も飛び散るけども……それだけだ。

「普通は飛べたり……する人もいるし、今の僕たちも、こう……なんか不思議な力で飛べるようになってるだけなんです!」

「そうなのか……人間に対する認識を改めないとな……」

「人間に対する認識?」

「ああ、弱いくせに数で群れて痛い細いのを投げてきたりする面倒なやつら。 あと、食べるとマズいらしい」

「――食べたこと。 あるんですか――――――?」

……おやびんさんたちが、人を食べる。

そう考えた瞬間、僕のおなかの中はむかむかとしてきて。

なんだか世界がぼんやりしてきて、おなかの中から力が――――――

「い、いや! 俺は無ぇ! ここに居るやつらもだぞ!! マズいんなら食べる意味無いだろ!?」

「……ならいいです」

……ぷしゅう。

何か変な感覚はどっか行った。
ついでにヤな気持ちも。

「……やっぱお前、本当に人間か……?」
「そうだって言ってますっ」

【おこおこユズちゃん】
【よく見とけよ、かなりレアだぞ】
【レア(おねむとおさけでだいたいこうなる】
【草】
【ああ、今はそのダブルパンチだから……】
【怒ってても怒り方がかわいいユズちゃん】

そうだ、よく考えたらモンスターたちは人間を食べるんだ。

それは10年前――僕が物心ついたころにダンジョンが出現したとき、それはもうたくさんの人たちが食べられたって学校で教わった。

なんでも、やつらは人間を丸呑みにするのが好きらしく、サイズの小さいモンスターは人を痛めつけて放置することも多いとか。

あ、でも、スライムとかは小さくても人間を覆えるから危険だって教わったっけ。

……大丈夫、大丈夫。

少なくとも、このおやびんさんたちは、まだ、食べてない。

――まだ「テキ」じゃない。

うん、大丈夫。

いくら夢の中のおやびんさんだからって、言っても良いことと悪いことがあるんだからさ。

……あれ?

これ、夢の中の話だよね?

………………………………。

よく分かんなくなってきたけど……まぁいいや。

「おやびんさんたち。 人間――絶対、食べないでね?」
「わ、分かった! だから圧してくるのはやめてくれ!」

【まだまだおこおこユズちゃん】
【まぁさすがに人が食べられる話はなぁ】
【ユズちゃんでも怒るよね】

【というかマズいのか……】
【そう伝わる程度にはマズいらしい】
【なのに何で食べるの?】
【さぁ?】

【ただのエネルギー補給なんだろうな】
【ああ、だから丸呑みにして味分からなく……】
【こわいこといわないで】

【とりあえず、コイツらはユズちゃんたちを食べる気も痛めるつもりもないって分かってひと安心】

【だけど、このままだと……】
【理央様たちは?】
【32階層】
【はっや】

【部隊を3交代くらいでローテしてるからね】
【レベル的にムリなところまで全力で突き進んでるからな】
【ユズちゃんが攫われる前にたどり着けるか……?】





「俺様はなぁ、もともと親分なんて合わないんだよぉ……群れのボスの下で、数匹の取り巻き引き連れる程度で充分だったんだよぉ……」

眠くなったのか、ぐじぐじ言い出してるおやびんさん。

「分かります。 過剰な期待ってつらいですよね」

でも、その気持ちはよく分かる。

夢の中だもん、こういうグチくらい言っても良いよね。

「そうだよぉ、俺様は群れの中でもバカだって自覚もあるし、バカにされてたから分かるんだよぉ……バカだって分かったあとの方が、一層悔しくてなぁ」

「分かります……人って簡単に態度変えてきますよね」
「ああ……力を手に入れた瞬間になぁ」

「僕も最近、知らない人から『俺だよ俺! 小さいころ仲良くしてやっただろ! その分くらいおごってくれても良いだろ?』って言われたし……」

この前かかってきた電話で、顔も覚えてない小学校のころの友達から言われたの、今でもずきってするもん。

……みんな良い人だって思いたいけども、宝くじとか当たるとこういうことになるって聞いたことあったし。

それに、「やだ」って言ったらすぐに切っちゃったからもう良いけどさ。

【は?】
【a?】
【ユズちゃんに……そんなことを……?】
【許せん】

【もしもし親衛隊? 守れてないのをどう説明する?】
【この無駄飯ぐらい、さっさと仕事しろ】
【ひでぇ】
【草】

【親衛隊できてないからね……】
【というか、こんな元貧乏ロリにたかるとか……】
【こんな、多分世界一有名な人間枠……人間枠?のロリっ子にたかるとか知られた時点で、この先の人生おしまいだね】
【気が付いたら有志に粛清されてそう】

【任せろ  それをもって償いにして親衛隊に復帰する】
【そいつの首を持ってユズちゃんに土下座するから安心して】

【ひぇっ】
【アサシンが産まれてて草】
【よりにもよってみんなのお姫様なユズちゃんを……だからねぇ……】
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