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3章 珍しいスライムさんをゲット

69話 分断された僕たち

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【進んだら戻る  当然だもんな】
【片道だけで良いんならもっと行けるのになぁ】

「ですよねー。 分かってはいるんですけど」
「分かります……登山などでもそうですよね……」

【登山とかと違うのは、行きはモンスターが多くて大変で、帰りは帰りでちょくちょくモンスター出て来るし登り階段ってとこ】

「モンスターがねぇ……」
「気を抜けないのが厳しいですねぇ……」

光宮さんとあやさんが、コメント欄と戯れている。

「……良いなぁ……」

僕は、けっこう離れたとこで話してる2人を眺める。

良いなぁ、ああやって自然にみんなと話せるのって。
仲間だと思ってたあやさんも、普通に話してるし……。

やっぱり女の子だからかなぁ……。

【理央ちゃんはそこまで経験済みか……】
【配信とかだと雑談枠になるけど、割と虚無の時間】
【理央ちゃん、レベルは6とか7は行ってるか】
【まぁまぁ、これ終わって引き上げたら地上でレベル測定するらしいし】

「そうなんです! 私もこの前ので上がってるかもですし、みんなは確実に上がってますし!」

「魔法のスキルとかも……ですよね?」
「はい! もっとも、初心者ダンジョンの測定器ですから細かくは……」

そんな彼女たちをジェラシー込めながら眺めてたけど、気が付いたらもう魔法陣の近くに来てたらしい僕たち。

「ねえねえゆずきちゃんゆずきちゃん、これおもしろいよ?」

「……ん? なぁに?」

視聴者たちと楽しそうに話してる年長組……いやいや、僕の方が光宮さんより年上なんだぞ……は置いといて、1人ぱたぱた掛けていって楽しそうに魔法陣をのぞき込んでいるひなたさん。

そんな彼女は……やっぱり小学生だね。

「ひなたちゃん、あんまり近づいちゃうとひなたちゃんだけ転送されちゃうってば」

けど、魔法陣とか格好いいよね……特によく分からない記号とか文字が光ってるのが。

……ひなたさん、あんまりコメント欄に興味ないみたいだし、どっちかっていうと冒険の方が好きみたいだし。

きっと今日のは物足りなかったんだ。
僕でもそう感じるくらいだし。

そうして光る円陣に近づいた僕。

だってもう、ボスモンスターも倒したし、後は帰るだけだし?

もうこのフロア、もとい部屋は安全だし、罠もないとは分かってるから別にいいんだけどさ。

でも、せっかくだからみんなで一緒に戻りたいじゃない?

「……ぎゅい……」

「? おまんじゅう?」

「わっとと……ごめんごめん。 そうだったよね、乗っちゃうと転送されちゃうんだよねっ。 ありがと、ゆずきちゃん、おまんじゅうちゃん!」

僕が慌ててたからか、それともコメント欄を見てか、すぐに下がって光る魔法陣から距離を取ってくれたひなたさん。

「ふうっ……うん。 まぁすぐに2人も来るから、どうせ変わらないけどね」

【ロリロリ】
【ロリたちが戯れている】
【ロリたちが離れている】
【お嬢ちゃんたち!  お姉ちゃんたちから離れちゃダメでしょ!!】

【まあまあ、モンスターは倒したし危険はないでしょ】
【それはそうなんだが……】
【ユズちゃん、何かとトラブルに愛されてるからなぁ】
【愛されてる(配信事故】
【配信事故はユズちゃんのせいでは?】

チラッと見たコメント欄は、僕のやらかしをつついていた。

「あはは……もうしませんから……」

僕の部屋からの配信とか、講習のときのとか……前科があるから怒るに怒れない。

……って言うかロリって……なんで僕、ひなたちゃんよりは背が高いのに小さく見られるんだろ……?

「ぎゅいー……」

「けど、不思議だねー。 どうやったら転送とかできるんだろー」
「原理は不明なんだってね。 まぁ僕たち的には、普通にワープ装置って感じだけど」

遠くでは、2人とも楽しそうに話し込んでいる。

……女の子の立ち話は長いからなぁ……ひなたさんが居て良かった。

「これ、出口に繋がってるんだよね?」
「そうらしいね。 配信とか観ても、ふわーってみんな光って、次の瞬間には上に――――――」

「ぎゅいっ!」

のんびりと魔法陣の近くで話してた僕たち。
胸元で叫ぶ、機嫌が悪いときのおまんじゅうの声。

「おまんじゅう、どうしたの?」――そう言おうと思ったら……僕たちは。

「……ここ、どこ?」
「……ひなたちゃん」

――薄暗い部屋に、転送されていた。





【ちょちょっと理央ちゃんあやちゃん!!!】
【ロリが! ロリたちがぁ!!】

「え? 柚希先輩たち? 2人ならあっちの方で……え?」

「柚希先輩への栄光ある最初のコスは何にするか」という難題を議論し合っていた光宮理央と夢月あや、それに視聴者たち。

彼女たちは、急に騒ぎ出したコメントで「転送陣の近くにとことこと行ったものの、手前で止まって話し始めた」とまで認識していた星野柚希と向日ひなたが居た「はずの」場所を見た。

しかし。

「……居ない……? いえ、ほんの一瞬前には……」
「――――――――――柚希先輩! 柚希先輩!!」

柚希たちが、うっかりで転送されてしまった。

それを知覚した理央は、半狂乱になりながら走り出しかける。

「ま、待ってください! 転移陣……転送陣でしたか? それ、出口に繋がっているんですよ?」
「え、……あ。 で、でも……」

――「こういうときは、なんか嫌なことがある」。

そう、柚希との長年の経験から悪い予感が拭えない彼女は、視聴者たちに縋ろうとした。

だが。

【えっと……なんか違うっぽい】
【なんか暗いとこ……】
【ロリたちが暗いところにだって!?】

【怖がるひなたちゃんをユズちゃんがなだめてるけど】
【落ち着いて、でも早く行ったげて】
【おまんじゅうちゃんも鳴いてるし】

「……そうですね。 大丈夫なはずですけど……慎重に行きましょう。 ありがとうございます、あやさん」
「いえ。 いつも私たちが守られていますから」

――この判断は、常識的に言えば正解だった。

冷静になり、警戒しながら進んで罠がないか確かめながら歩いて、転移陣へたどり着いて。

……だが、今回に限って言えば――突然のことで気が付いた視聴者はおらず、あとで注意深く観返してようやくに気づくレベルだったが――その魔法陣の色は、最初の2人が転送されたときから変わっていて。

「――――――――え」

「……ここ……出口の、ゲート……」

理央とあやは……「通常通りにダンジョンの出口にたどり着いてしまっていた」。

【えっ】
【え!?】
【なんでおんなじ転移陣でユズちゃんたちと違う場所!?】
【普通ないよな!?】
【あったら大問題になってる】

「――ゆずきせんぱぁい!」

そう叫ぶと……今度こそあやのことを気にする余裕も無くなり、再びダンジョンの1階層へ突撃してしまう理央。

「……私は、守衛さんに。 視聴者のみなさん、申し訳ありませんが、3人についていてあげてください」

【りょ】
【こういうときにお姉さんは安心できるな】
【ああ……】
【理央ちゃん、良い子だけどユズちゃん大好き過ぎてな……】
【それが良い子なんだけど……】
【今回は裏目ったか】

そうして、安全だったはずの初心者ダンジョン――5階層まで、しかもボスは4部屋に分かれている内のひとつだけ――のはずだった場所は、一気に緊張感を増し。

「……あれ……なんのモンスターか、分かる?」
「配信で観たことある……確か……」

【ワイルダーボアかよ……】
【うげぇ……さっきの2段階上位種じゃんか……】
【ロリっ子たちリストバンドー! リストバンドで緊急離脱してー!】

――柚希とひなたは「別のダンジョンの一部屋」に転移させられていた。
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