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きつねうどん、たぬきそば
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あれから、進也は少し優しくなったように思う。言葉の誤りはしばしばあったが、怒鳴って訂正するでなく、穏やかに正しい使い方を教えてくれる。生徒会の仕事も半分に減った。体育祭が近いから自分も役割を知っておかなきゃと言っていたが、以前は雑務は全て正之助に押し付けていたのに、それも無い。この変化はやはり自分が努力して作ったきつねうどんの効果だと、正之助は満足していた。
そして、英介を陥れる日付をとうとう進也は決めた。体育祭の前日だ。周りが慌しくバタバタしている時に仕掛けて、うまくいけば体育祭の時にPTA会長に報告してやろうと言う腹だ。やっとこの忙しい日々から開放され、またさぼり放題の穏やかな日々が戻ってくると思うと、正之助は待ち遠しかった。
残る不安な問題は、正平だ。
昼休み。前みたいに二年の校舎に堂々と入っていけば目をつけられるのは身に沁みているから、正之助は小鳥に変化して正平を探しに、二年の校舎へと入っていった。家でもろくに会話が出来ず、正平は家族の誰とも口を利かない。友達の家を渡り歩いているらしく、家に帰ってこない日も多かった。父と母ものんびりしているので、じきに飽きると思っている。祖父だけが、毎日正之助となり子に当たり散らしていた。ただ、なり子はその祖父がガミガミ怒っている姿を見るのが好きだったので、苦にならなかったようだが。
こうやって近頃は正平の様子を覗きに来ていたのだが、今日に限って正平は何処にもいなかった。
飛び回っていると、この前、絡んできた二年生達の軍団を見つけた。彼らは校舎の裏でタバコを吸っていた。不愉快な煙で、正之助はイモリに変化して壁に張り付く。そのままちょろちょろ壁を張って下りていき、彼らの傍にやってきた。見覚えのある顔ぶれだが、正平の友人であるか定かではない。
この中にも正平はおらず、諦めて戻ろうかとした時、校舎からひょいと英介が姿を現した。突然先生が出てきてうろたえる。それを手で制し、生徒の一人からタバコを奪い取ると、英介は満足そうにタバコを吸った。
「告げ口しねーから、ちょっと教えてくれないか?」
「え・・・・なんスか・・・」
戸惑いながら二年の一人が問い返すと、英介は彼らを見回した。
「正平、何処行った?」
「・・・・正平は・・・・」
そう呟いた生徒の目が泳ぐ。それを見抜いた英介はスッと目を細めたら、タバコを手のひらで揉み消して、その拳をその生徒の前に突き出した。
「・・・・正直に答えねーと、進級出来ねーかもしんねーぞ。さぁ、正平は何処だ?」
口篭っていたが、英介が更に拳を近づけてきたので、ビクリと体を震わせると、意を決し、怯えた風に答えた。
「・・・・入部テストを受けてます・・・・・・場所は・・・知りません」
英介が眉を寄せた。傍で聞いている正之助にはさっぱり意味が分からない。今更、何処かクラブにでも正平は入るのつもりなのか。
「宇佐木と一緒か?」
「は、はい」
英介は納得し、生徒から体を離すと、面白そうに顔を上げ、顎を撫でた。ちらりと壁を見やって、呟く。
「そりゃ、貞操の危機かもなぁ」
危機と言う単語に驚いた正之助は、コロリと壁から落っこちた。
「うわっ!イモリ!!!」
突然イモリが上から落ちてきて、一同声を上げる。イモリの正之助は上から潰される前に急いで草むらに逃げ込むと、蜂に変化して空に飛び上がり、そこからまた小鳥に変化して、飛んでいったのだった。
飛んでいった小鳥を見上げ、英介はフッと笑って手の中にあったタバコを生徒に戻す。どうやったのか、そのタバコにはまた火が点っていた。
自分一人じゃ正平が見つからないと判断した正之助は、教室に居る進也の元に飛んでいった。
純や茂樹に囲まれて、進也は進路の話をしていた。話題はもっぱら純の進路の事で、パティシエを目指すのは大学を出た後でも遅くないのではないかと言うのが進也と茂樹の意見だった。
「進ちゃん、前は賛成してくれたのに」
身に覚えが無かったが、大方正之助が適当な事を言ったのだろうと、推察する。
「あの時はいいと思ったけど、よく考えたらやっぱりもったいないと思うぞ」
純が更に反論しようとした所、進也は窓の外で不自然に飛行している鳥に気づいた。純や茂樹も窓の外に視線をやる。
「・・・・窓開けんなよ」
茂樹がそう言うのも聞かず、進也は窓を開けた。すると、小鳥は窓から教室内へと入り、進也の上をくるくる回ると、そのまま廊下へと出て行った。クラスの面々がその不可思議な現象に目を見張ったが、進也だけはすぐにその小鳥の後を追って廊下に出た。
小鳥は進也が出てくるのを待っていた。進也が出てくると、また小鳥は飛び始める。その小鳥に従って進也も走り、校舎を出た途端、進也も小鳥に変化した。二羽の小鳥は空に飛び上がる。
「どうした?」
「正平を探してくれ!貞操の危機なんだ!!」
「貞操?」
わけがわからず、進也は聞き返す。そこで、正之助はさっき聞いた内容を進也に話した。英語教師が絡んできたのは不愉快だが、聞き出した事実は無視出来ない話だ。正之助はワケが分かってないらしく、狼狽している。
「二年の連中がグループ組んでんのは知ってんな?」
「う、うん」
「その仲間に入るのには儀式が必要なんだよ。グループに忠誠を誓う証としてな。それを奴らは入部テストと呼んでるんだろうさ」
話の糸口が見えず、正之助が続きを促した。
「つまり?なんで正平が危機なの?!」
「つまり、その入部テストってのは私刑の事なんだよ。リンチ・レイプ・なんでもあり」
正之助は甲高い鳥の鳴き声を上げた。うろたえて、バタバタ羽をばたつかせ、あやうく飛び方を忘れて落っこちそうになる。進也は怒鳴り上げ、正之助を落ち着かせた。
「しっかりしろ!二年がよく私刑に使う場所を知ってる。多分、お前の弟はそこにいる!!」
「ホント?!」
「あぁ。行くぞ」
「うん・・・・・はい!」
進也が旋回する。それに倣って、正之助も旋回した。
森之宮高校にはいくつか七不思議の場所が存在する。裏庭、体育館裏の用具室、それにクラブ館の地下室。ここは閉鎖されているのだが、地下室への階段がある裏口の鍵が壊れていて、時々生徒が侵入している。いい隠れ場所なのだが、いかんせん、この室内は臭い。だから、三年にもなればこの場所を好んで使おうとする者は居ない。大抵、三年生が密会や私刑をする時は、空き教室を使うのだ。
裏口に来た二人は、小鳥から鼠に変化すると、そろそろと地下室へと入っていった。地下室の前に、数人見張りが立っている。進也は正平に先を行かせ、自分はそこで幻覚の術を使った。うっすら霧が広がる。これで、見張りの生徒達には地下室の声は届かないだろう。
地下室に下りた正之助は弟を見つけた。三人の男に囲まれ、正平が倒れていた。汚い泥だらけのマットレスの上に俯けに押し倒され、服を引き裂かれた哀れな姿でうずくまっていた。今しも、上に乗った男が正平のズボンに手をかけ、引きずろうとした時、正之助はカッとなって、大きな犬に変化した。
「!」
犬の唸り声に、上に乗った男は驚いて顔を上げる。男と目が合った途端、正之助は男の腕に噛み付いた。
「おわぁっ!!!!」
男は正之助を振り回すが、しっかり食いついて離れない。男は力いっぱい犬を壁に叩き付けた。痛みに悶絶するも、犬は男から口を離さない。周りに居た他の生徒が二人がかりで犬を引き剥がし、蹴りつける。犬はそれでもなお唸り声を上げながら、男に向かっていった。
「くそっ!!!おい!!!それで殴れ!!!」
噛み付かれた男が残りの二人に怒鳴って命令する。二人は近くにあった椅子を掴み、思い切りそれで犬を殴りつけた。
「ギャウンッ!!!」
犬は何度叩きつけられても、男に向かっていく。本能で、誰がボスか分かっているらしく、一人に狙いを定めていた。その様子を戸惑いながら眺めていた正平だったが、その犬の正体に気づくと、あっと息を呑んだ。
「・・・・兄ちゃん・・?」
噛み付いてきた犬を二人が上から押さえこむ。バタバタ暴れる犬の頭を、二人は何度も殴った。見ていて、正平の胸がざわついてくる。恐怖が体を覆う。
なおも暴れる犬に苛立ち、腕を噛まれた男が自ら椅子を掴んで、それを犬の顔面に叩きつけようとした。はっとなって、正平は慌てて立ち上がると、振り上げられた男の腕を掴んだ。
「正平!離せっ・・・!」
ぎりぎり歯を噛み締め、正平は首を横に振る。男は苛立った風に正平に言い捨てた。
「俺の命令が聞けねぇのか!」
「聞けない!!!!」
男はそれを聞き、椅子を放り捨てると、今度は正平の胸倉を掴んで壁に押さえつけた。恐ろしい形相で睨みつける。
「・・・・どういう事だ?仲間になりたいって言ったのはお前の方だろう?」
「大吾・・・俺は・・・・犬を殴るような奴とは仲間になれない」
正平の言葉に、大吾と呼ばれた男はハッと笑った。
「なんだそりゃ?こいつはお前の犬か」
「・・・・違う、俺の家族だ」
その言葉を聞いて、犬が大人しくなった。押さえ込んでいた二人はホゥと息を吐くと、力を抜いた。
大吾が鼻で笑う。
「相変わらずおかしな事を言う野郎だ。お前みたいな変人、誰が相手にしてくれる?そこの犬みてぇに俺らにくっついて来てたくせに。主人に逆らう気なら、容赦しねぇ」
大吾が殴るようなそぶりを見せた。正平はそれを見て、フンと挑発的に笑った。
「殴りたいなら殴ればいいだろ。俺はお前のペットじゃない」
言った途端、大吾の強烈な右フックが正平の頬に命中した。驚いた犬が二人を薙ぎ倒して大吾に向かっていく。
「もういいから!!!」
それを正平が捕まえて、止めた。グルルと唸る犬を正平は強く抱き締める。大吾は正平と犬を嘲笑した眼差しで見下ろした。
「・・・・いいんだな、正平」
「あぁ」
「分かった。明日から、楽しみにしてろ」
そう大吾は言い捨てて、さっさと歩いていく。残っていた二人はしばらく躊躇った後、苦い顔を正平に見せてから、こそこそ男の後をついていったのだった。
彼らが居なくなると、地下室はしんと静まり返った。犬を抱き締めている正平の息は荒い。動悸も早かった。手がぷるぷる震えている。
胸の中にいた犬は、いつの間にか狸に変わっている。正平はその狸を抱き締め直す。
「兄ちゃん・・・・・・・・」
泣きそうな声を聞き、狸は顔を上げると、腕の中から抜け出して、正平の鼻を舐めた。正平がウッ・・と声を殺して、泣き始める。その目元を、狸は舐め続ける。ざらざらした舌が痛かったけれど、それ以上に、その行為は温かかった。
「兄ちゃん、ごめんね・・・・心配させてごめん・・・・・」
なかなか泣き止まない正平の目元を、狸はずっと舐め続けたのだった。
奥から数人の生徒が出てきたので、進也は幻術を解いた。下で何があったか分からず戸惑っている見張りと共に、彼らは地下室から出て行った。進也が彼らを追いかけると、階段を上がった所に英介が立っていた。進也はイモリに変化して、様子を伺う。
「よぅ、宇佐木。入部テストはどうだった?正平は合格か?」
「・・・・先生・・・・・・・」
大吾は苦い顔を見せた。英介はニヤリと笑み、大吾の頭に手を乗せ、ぽんぽんと叩いた。
「お前もしばらくは大人しくしといた方がいい。今度の体育祭にはお前ん家の親父も来るんだろう?なんせPTA会長だもんなぁ・・・晴れの舞台で息子の変な噂は耳に入れたくないよな」
そう言いながら、何処から取り出したのか火のついたタバコを口に銜え、フフッと笑った。彼が苦手なのだろう、大吾は苦虫を潰した顔のまま、不快そうに言った。
「なんでアイツの肩を持つんスか。もしかして、デキてんの?」
「ハハハ」
英介は笑ってから、おもむろにタバコを大吾の口の中に突っ込むと、顔を寄せ、うっすら目を細めて、宣告した。
「あんま調子こいてっと、痛い目見るぞ。クソガキ」
「・・・・・っ!」
「ほら、もう行け。授業には出ろよ」
英介は彼を解放すると、その背を叩いた。苛立ちながらも反論出来ず、大吾はちらちら後ろを振り返りながら、他の生徒を引き連れて、二年の学び舎へと帰っていった。その背を見送り、英介は落ちたタバコを拾ってパッと手の中で消してしまうと、フッと笑って地下室を見下ろした。
そのまま歩いていこうとするので、思わず進也は人間に変化し、彼を呼び止めていた。
「おい」
「あ?なんだ、やっぱり進也もいたのか」
突然進也がここにいたのは不自然だったにも関わらず、彼は全く驚いた様子は無かった。まるで、ここにいたのを知っていたようだった。さっきの生徒とのやり取りが進也には気に食わなかった。
「・・・・どうして宇佐木にあんな脅しをかけたんですか?PTA会長の息子には機嫌とっとかなきゃならねーんじゃないんスか」
「そう睨むな。俺がマトモな先生らしい行動とったら、おかしいか?」
進也は彼のセリフを肯定するように頷いてから、鋭い口調で言った。
「多抜に関わんな」
進也のその言葉が意外だったらしく、彼は少し目を丸くしてから、肩をすくめて笑い出した。進也の表情が更に硬くなる。
「そう言われても、俺はあいつの英語を受け持ってるからなぁ・・・・」
「個人的に関わんなっつってんだよ。あんたにゃ用のねぇ人間でしょう」
「人間ねぇ」
意味深に呟くと、英介は進也に向き直って楽しげに笑ってみせた。
「用はなくとも関係はあるんだよ。俺はあの兄弟とは同じ穴暮らしなんでね」
「は?」
聞き返した進也に軽くウインクをして、英介は歩き出した。慌てて追いかけようとした進也だったが、投げられた言葉で、その足が動かなくなる。
「今夜、お前の家に行く」
「!」
「だから、早く寝てろよ」
そう言って、手を振って、彼は校舎へと戻っていった。進也はギュッと拳を握り締めた。来るなと言っても、あの男は来るだろう。それを自分は止められない。それが悔しくてならなかった。
ようやっと正平が泣き止んだ頃には、5時間目の始業のベルが鳴っていた。そのままそこで、正平と正之助は5時間目の授業をサボる事にした。
泥のついたマットレスに寝転がり、二人は久方ぶりに話し合う。話の内容は瑣末な事ばかりだ。近頃の授業や出来事、体育祭に向けてクラスで何をしているのか。どうしてあんな人間と遊んでいたのか、その点は聞かなかった。過去形になろうと、一時でも友達だった人間の悪態を聞きたいとは思わない。
「どうして聞かないの」
「・・・理由なんて聞いたって意味無いよ」
正平はフゥンと気の抜けた相槌を打つ。その抜けた声色は正之助に似ていて、よく知っている正平の声だったから、正之助はホッとした。
「人間の友達出来たんだ。てっきり、作る気無いのかと思ってた」
「成り行き上ね。一緒に居て、楽しいよ」
ニッと正之助が笑うと、正平も笑い返した。
「兄ちゃん、変わったね」
「そうかな」
正之助に自覚は無い。前よりは人間に近くなったとは思うが、大きな変化とは捉えていなかった。訝しがる正之助に正平はもう一度強く言った。
「変わったよ。人間みたい」
「俺は狸の方が楽で好きなんだけどなぁ・・・」
「人間らしい狸で、それでいいじゃない」
「そうだな」
「そうだよ」
単純な兄に正平は苦笑するも、自分を助けに来てくれた勇姿を思い出すと、胸が熱くなる。久しく忘れていた家族の愛情が体に心地よかった。
正之助が人間の姿に戻って地下室を出ると、進也は居なかった。正平はクラブがあるからと歩いていく。それを正之助は引き止めた。
「正平」
「もう大丈夫だって。あんな奴、本当は怖くねーし」
その割には無抵抗だったじゃないかと言いかけたが、正之助はその言葉をグッと飲み込み、言った。
「そうじゃなくて、あの英語教師と何があったか・・・教えてくれない?」
「・・・やけにつっかかるね。本当に何も無かったよ。何もされてもない」
「そうか・・・・」
正之助は胸を撫で下ろした。正平はしばらく正之助を見つめていたが、ややあって、ぽつりと呟いた。
「ただ・・・あの先生は俺らが人間じゃないって・・・知ってるかもしれない」
「え?!」
正之助は驚いて顔を上げる。正平の目は真剣だ。こんな深刻な事で、冗談を言う狸じゃない。
「俺がさっきのアイツ・・・宇佐木って言うんだけど・・・宇佐木に全部話そうとしてた時にたまたま通りかかって、俺に耳打ちしたんだ。彼に全部を見せるなって」
「全部を見せるな?」
「そう。どうにでも取れる言葉だけど・・・・引っかかってて、だから先生を呼び出して問い詰めてみたんだけどはぐらかされた。もし兄ちゃんがあの教師に興味があるなら、兄ちゃんこそ気をつけて」
危険だとしたら、自分ではなくて進也だと思う。進也はあの教師に並々ならぬ感情を持っている。忠告をしてくれたと言う事は悪い人間でもない気がするが、用心するに越した事はない。
折を見て、進也に話そう。
「ところで、正平・・・・・一つ聞きたいんだけど」
「うん?」
「貞操ってなんだ?」
真剣な顔で問う兄に、一抹の不安を覚える正平なのだった。
あれから、進也は少し優しくなったように思う。言葉の誤りはしばしばあったが、怒鳴って訂正するでなく、穏やかに正しい使い方を教えてくれる。生徒会の仕事も半分に減った。体育祭が近いから自分も役割を知っておかなきゃと言っていたが、以前は雑務は全て正之助に押し付けていたのに、それも無い。この変化はやはり自分が努力して作ったきつねうどんの効果だと、正之助は満足していた。
そして、英介を陥れる日付をとうとう進也は決めた。体育祭の前日だ。周りが慌しくバタバタしている時に仕掛けて、うまくいけば体育祭の時にPTA会長に報告してやろうと言う腹だ。やっとこの忙しい日々から開放され、またさぼり放題の穏やかな日々が戻ってくると思うと、正之助は待ち遠しかった。
残る不安な問題は、正平だ。
昼休み。前みたいに二年の校舎に堂々と入っていけば目をつけられるのは身に沁みているから、正之助は小鳥に変化して正平を探しに、二年の校舎へと入っていった。家でもろくに会話が出来ず、正平は家族の誰とも口を利かない。友達の家を渡り歩いているらしく、家に帰ってこない日も多かった。父と母ものんびりしているので、じきに飽きると思っている。祖父だけが、毎日正之助となり子に当たり散らしていた。ただ、なり子はその祖父がガミガミ怒っている姿を見るのが好きだったので、苦にならなかったようだが。
こうやって近頃は正平の様子を覗きに来ていたのだが、今日に限って正平は何処にもいなかった。
飛び回っていると、この前、絡んできた二年生達の軍団を見つけた。彼らは校舎の裏でタバコを吸っていた。不愉快な煙で、正之助はイモリに変化して壁に張り付く。そのままちょろちょろ壁を張って下りていき、彼らの傍にやってきた。見覚えのある顔ぶれだが、正平の友人であるか定かではない。
この中にも正平はおらず、諦めて戻ろうかとした時、校舎からひょいと英介が姿を現した。突然先生が出てきてうろたえる。それを手で制し、生徒の一人からタバコを奪い取ると、英介は満足そうにタバコを吸った。
「告げ口しねーから、ちょっと教えてくれないか?」
「え・・・・なんスか・・・」
戸惑いながら二年の一人が問い返すと、英介は彼らを見回した。
「正平、何処行った?」
「・・・・正平は・・・・」
そう呟いた生徒の目が泳ぐ。それを見抜いた英介はスッと目を細めたら、タバコを手のひらで揉み消して、その拳をその生徒の前に突き出した。
「・・・・正直に答えねーと、進級出来ねーかもしんねーぞ。さぁ、正平は何処だ?」
口篭っていたが、英介が更に拳を近づけてきたので、ビクリと体を震わせると、意を決し、怯えた風に答えた。
「・・・・入部テストを受けてます・・・・・・場所は・・・知りません」
英介が眉を寄せた。傍で聞いている正之助にはさっぱり意味が分からない。今更、何処かクラブにでも正平は入るのつもりなのか。
「宇佐木と一緒か?」
「は、はい」
英介は納得し、生徒から体を離すと、面白そうに顔を上げ、顎を撫でた。ちらりと壁を見やって、呟く。
「そりゃ、貞操の危機かもなぁ」
危機と言う単語に驚いた正之助は、コロリと壁から落っこちた。
「うわっ!イモリ!!!」
突然イモリが上から落ちてきて、一同声を上げる。イモリの正之助は上から潰される前に急いで草むらに逃げ込むと、蜂に変化して空に飛び上がり、そこからまた小鳥に変化して、飛んでいったのだった。
飛んでいった小鳥を見上げ、英介はフッと笑って手の中にあったタバコを生徒に戻す。どうやったのか、そのタバコにはまた火が点っていた。
自分一人じゃ正平が見つからないと判断した正之助は、教室に居る進也の元に飛んでいった。
純や茂樹に囲まれて、進也は進路の話をしていた。話題はもっぱら純の進路の事で、パティシエを目指すのは大学を出た後でも遅くないのではないかと言うのが進也と茂樹の意見だった。
「進ちゃん、前は賛成してくれたのに」
身に覚えが無かったが、大方正之助が適当な事を言ったのだろうと、推察する。
「あの時はいいと思ったけど、よく考えたらやっぱりもったいないと思うぞ」
純が更に反論しようとした所、進也は窓の外で不自然に飛行している鳥に気づいた。純や茂樹も窓の外に視線をやる。
「・・・・窓開けんなよ」
茂樹がそう言うのも聞かず、進也は窓を開けた。すると、小鳥は窓から教室内へと入り、進也の上をくるくる回ると、そのまま廊下へと出て行った。クラスの面々がその不可思議な現象に目を見張ったが、進也だけはすぐにその小鳥の後を追って廊下に出た。
小鳥は進也が出てくるのを待っていた。進也が出てくると、また小鳥は飛び始める。その小鳥に従って進也も走り、校舎を出た途端、進也も小鳥に変化した。二羽の小鳥は空に飛び上がる。
「どうした?」
「正平を探してくれ!貞操の危機なんだ!!」
「貞操?」
わけがわからず、進也は聞き返す。そこで、正之助はさっき聞いた内容を進也に話した。英語教師が絡んできたのは不愉快だが、聞き出した事実は無視出来ない話だ。正之助はワケが分かってないらしく、狼狽している。
「二年の連中がグループ組んでんのは知ってんな?」
「う、うん」
「その仲間に入るのには儀式が必要なんだよ。グループに忠誠を誓う証としてな。それを奴らは入部テストと呼んでるんだろうさ」
話の糸口が見えず、正之助が続きを促した。
「つまり?なんで正平が危機なの?!」
「つまり、その入部テストってのは私刑の事なんだよ。リンチ・レイプ・なんでもあり」
正之助は甲高い鳥の鳴き声を上げた。うろたえて、バタバタ羽をばたつかせ、あやうく飛び方を忘れて落っこちそうになる。進也は怒鳴り上げ、正之助を落ち着かせた。
「しっかりしろ!二年がよく私刑に使う場所を知ってる。多分、お前の弟はそこにいる!!」
「ホント?!」
「あぁ。行くぞ」
「うん・・・・・はい!」
進也が旋回する。それに倣って、正之助も旋回した。
森之宮高校にはいくつか七不思議の場所が存在する。裏庭、体育館裏の用具室、それにクラブ館の地下室。ここは閉鎖されているのだが、地下室への階段がある裏口の鍵が壊れていて、時々生徒が侵入している。いい隠れ場所なのだが、いかんせん、この室内は臭い。だから、三年にもなればこの場所を好んで使おうとする者は居ない。大抵、三年生が密会や私刑をする時は、空き教室を使うのだ。
裏口に来た二人は、小鳥から鼠に変化すると、そろそろと地下室へと入っていった。地下室の前に、数人見張りが立っている。進也は正平に先を行かせ、自分はそこで幻覚の術を使った。うっすら霧が広がる。これで、見張りの生徒達には地下室の声は届かないだろう。
地下室に下りた正之助は弟を見つけた。三人の男に囲まれ、正平が倒れていた。汚い泥だらけのマットレスの上に俯けに押し倒され、服を引き裂かれた哀れな姿でうずくまっていた。今しも、上に乗った男が正平のズボンに手をかけ、引きずろうとした時、正之助はカッとなって、大きな犬に変化した。
「!」
犬の唸り声に、上に乗った男は驚いて顔を上げる。男と目が合った途端、正之助は男の腕に噛み付いた。
「おわぁっ!!!!」
男は正之助を振り回すが、しっかり食いついて離れない。男は力いっぱい犬を壁に叩き付けた。痛みに悶絶するも、犬は男から口を離さない。周りに居た他の生徒が二人がかりで犬を引き剥がし、蹴りつける。犬はそれでもなお唸り声を上げながら、男に向かっていった。
「くそっ!!!おい!!!それで殴れ!!!」
噛み付かれた男が残りの二人に怒鳴って命令する。二人は近くにあった椅子を掴み、思い切りそれで犬を殴りつけた。
「ギャウンッ!!!」
犬は何度叩きつけられても、男に向かっていく。本能で、誰がボスか分かっているらしく、一人に狙いを定めていた。その様子を戸惑いながら眺めていた正平だったが、その犬の正体に気づくと、あっと息を呑んだ。
「・・・・兄ちゃん・・?」
噛み付いてきた犬を二人が上から押さえこむ。バタバタ暴れる犬の頭を、二人は何度も殴った。見ていて、正平の胸がざわついてくる。恐怖が体を覆う。
なおも暴れる犬に苛立ち、腕を噛まれた男が自ら椅子を掴んで、それを犬の顔面に叩きつけようとした。はっとなって、正平は慌てて立ち上がると、振り上げられた男の腕を掴んだ。
「正平!離せっ・・・!」
ぎりぎり歯を噛み締め、正平は首を横に振る。男は苛立った風に正平に言い捨てた。
「俺の命令が聞けねぇのか!」
「聞けない!!!!」
男はそれを聞き、椅子を放り捨てると、今度は正平の胸倉を掴んで壁に押さえつけた。恐ろしい形相で睨みつける。
「・・・・どういう事だ?仲間になりたいって言ったのはお前の方だろう?」
「大吾・・・俺は・・・・犬を殴るような奴とは仲間になれない」
正平の言葉に、大吾と呼ばれた男はハッと笑った。
「なんだそりゃ?こいつはお前の犬か」
「・・・・違う、俺の家族だ」
その言葉を聞いて、犬が大人しくなった。押さえ込んでいた二人はホゥと息を吐くと、力を抜いた。
大吾が鼻で笑う。
「相変わらずおかしな事を言う野郎だ。お前みたいな変人、誰が相手にしてくれる?そこの犬みてぇに俺らにくっついて来てたくせに。主人に逆らう気なら、容赦しねぇ」
大吾が殴るようなそぶりを見せた。正平はそれを見て、フンと挑発的に笑った。
「殴りたいなら殴ればいいだろ。俺はお前のペットじゃない」
言った途端、大吾の強烈な右フックが正平の頬に命中した。驚いた犬が二人を薙ぎ倒して大吾に向かっていく。
「もういいから!!!」
それを正平が捕まえて、止めた。グルルと唸る犬を正平は強く抱き締める。大吾は正平と犬を嘲笑した眼差しで見下ろした。
「・・・・いいんだな、正平」
「あぁ」
「分かった。明日から、楽しみにしてろ」
そう大吾は言い捨てて、さっさと歩いていく。残っていた二人はしばらく躊躇った後、苦い顔を正平に見せてから、こそこそ男の後をついていったのだった。
彼らが居なくなると、地下室はしんと静まり返った。犬を抱き締めている正平の息は荒い。動悸も早かった。手がぷるぷる震えている。
胸の中にいた犬は、いつの間にか狸に変わっている。正平はその狸を抱き締め直す。
「兄ちゃん・・・・・・・・」
泣きそうな声を聞き、狸は顔を上げると、腕の中から抜け出して、正平の鼻を舐めた。正平がウッ・・と声を殺して、泣き始める。その目元を、狸は舐め続ける。ざらざらした舌が痛かったけれど、それ以上に、その行為は温かかった。
「兄ちゃん、ごめんね・・・・心配させてごめん・・・・・」
なかなか泣き止まない正平の目元を、狸はずっと舐め続けたのだった。
奥から数人の生徒が出てきたので、進也は幻術を解いた。下で何があったか分からず戸惑っている見張りと共に、彼らは地下室から出て行った。進也が彼らを追いかけると、階段を上がった所に英介が立っていた。進也はイモリに変化して、様子を伺う。
「よぅ、宇佐木。入部テストはどうだった?正平は合格か?」
「・・・・先生・・・・・・・」
大吾は苦い顔を見せた。英介はニヤリと笑み、大吾の頭に手を乗せ、ぽんぽんと叩いた。
「お前もしばらくは大人しくしといた方がいい。今度の体育祭にはお前ん家の親父も来るんだろう?なんせPTA会長だもんなぁ・・・晴れの舞台で息子の変な噂は耳に入れたくないよな」
そう言いながら、何処から取り出したのか火のついたタバコを口に銜え、フフッと笑った。彼が苦手なのだろう、大吾は苦虫を潰した顔のまま、不快そうに言った。
「なんでアイツの肩を持つんスか。もしかして、デキてんの?」
「ハハハ」
英介は笑ってから、おもむろにタバコを大吾の口の中に突っ込むと、顔を寄せ、うっすら目を細めて、宣告した。
「あんま調子こいてっと、痛い目見るぞ。クソガキ」
「・・・・・っ!」
「ほら、もう行け。授業には出ろよ」
英介は彼を解放すると、その背を叩いた。苛立ちながらも反論出来ず、大吾はちらちら後ろを振り返りながら、他の生徒を引き連れて、二年の学び舎へと帰っていった。その背を見送り、英介は落ちたタバコを拾ってパッと手の中で消してしまうと、フッと笑って地下室を見下ろした。
そのまま歩いていこうとするので、思わず進也は人間に変化し、彼を呼び止めていた。
「おい」
「あ?なんだ、やっぱり進也もいたのか」
突然進也がここにいたのは不自然だったにも関わらず、彼は全く驚いた様子は無かった。まるで、ここにいたのを知っていたようだった。さっきの生徒とのやり取りが進也には気に食わなかった。
「・・・・どうして宇佐木にあんな脅しをかけたんですか?PTA会長の息子には機嫌とっとかなきゃならねーんじゃないんスか」
「そう睨むな。俺がマトモな先生らしい行動とったら、おかしいか?」
進也は彼のセリフを肯定するように頷いてから、鋭い口調で言った。
「多抜に関わんな」
進也のその言葉が意外だったらしく、彼は少し目を丸くしてから、肩をすくめて笑い出した。進也の表情が更に硬くなる。
「そう言われても、俺はあいつの英語を受け持ってるからなぁ・・・・」
「個人的に関わんなっつってんだよ。あんたにゃ用のねぇ人間でしょう」
「人間ねぇ」
意味深に呟くと、英介は進也に向き直って楽しげに笑ってみせた。
「用はなくとも関係はあるんだよ。俺はあの兄弟とは同じ穴暮らしなんでね」
「は?」
聞き返した進也に軽くウインクをして、英介は歩き出した。慌てて追いかけようとした進也だったが、投げられた言葉で、その足が動かなくなる。
「今夜、お前の家に行く」
「!」
「だから、早く寝てろよ」
そう言って、手を振って、彼は校舎へと戻っていった。進也はギュッと拳を握り締めた。来るなと言っても、あの男は来るだろう。それを自分は止められない。それが悔しくてならなかった。
ようやっと正平が泣き止んだ頃には、5時間目の始業のベルが鳴っていた。そのままそこで、正平と正之助は5時間目の授業をサボる事にした。
泥のついたマットレスに寝転がり、二人は久方ぶりに話し合う。話の内容は瑣末な事ばかりだ。近頃の授業や出来事、体育祭に向けてクラスで何をしているのか。どうしてあんな人間と遊んでいたのか、その点は聞かなかった。過去形になろうと、一時でも友達だった人間の悪態を聞きたいとは思わない。
「どうして聞かないの」
「・・・理由なんて聞いたって意味無いよ」
正平はフゥンと気の抜けた相槌を打つ。その抜けた声色は正之助に似ていて、よく知っている正平の声だったから、正之助はホッとした。
「人間の友達出来たんだ。てっきり、作る気無いのかと思ってた」
「成り行き上ね。一緒に居て、楽しいよ」
ニッと正之助が笑うと、正平も笑い返した。
「兄ちゃん、変わったね」
「そうかな」
正之助に自覚は無い。前よりは人間に近くなったとは思うが、大きな変化とは捉えていなかった。訝しがる正之助に正平はもう一度強く言った。
「変わったよ。人間みたい」
「俺は狸の方が楽で好きなんだけどなぁ・・・」
「人間らしい狸で、それでいいじゃない」
「そうだな」
「そうだよ」
単純な兄に正平は苦笑するも、自分を助けに来てくれた勇姿を思い出すと、胸が熱くなる。久しく忘れていた家族の愛情が体に心地よかった。
正之助が人間の姿に戻って地下室を出ると、進也は居なかった。正平はクラブがあるからと歩いていく。それを正之助は引き止めた。
「正平」
「もう大丈夫だって。あんな奴、本当は怖くねーし」
その割には無抵抗だったじゃないかと言いかけたが、正之助はその言葉をグッと飲み込み、言った。
「そうじゃなくて、あの英語教師と何があったか・・・教えてくれない?」
「・・・やけにつっかかるね。本当に何も無かったよ。何もされてもない」
「そうか・・・・」
正之助は胸を撫で下ろした。正平はしばらく正之助を見つめていたが、ややあって、ぽつりと呟いた。
「ただ・・・あの先生は俺らが人間じゃないって・・・知ってるかもしれない」
「え?!」
正之助は驚いて顔を上げる。正平の目は真剣だ。こんな深刻な事で、冗談を言う狸じゃない。
「俺がさっきのアイツ・・・宇佐木って言うんだけど・・・宇佐木に全部話そうとしてた時にたまたま通りかかって、俺に耳打ちしたんだ。彼に全部を見せるなって」
「全部を見せるな?」
「そう。どうにでも取れる言葉だけど・・・・引っかかってて、だから先生を呼び出して問い詰めてみたんだけどはぐらかされた。もし兄ちゃんがあの教師に興味があるなら、兄ちゃんこそ気をつけて」
危険だとしたら、自分ではなくて進也だと思う。進也はあの教師に並々ならぬ感情を持っている。忠告をしてくれたと言う事は悪い人間でもない気がするが、用心するに越した事はない。
折を見て、進也に話そう。
「ところで、正平・・・・・一つ聞きたいんだけど」
「うん?」
「貞操ってなんだ?」
真剣な顔で問う兄に、一抹の不安を覚える正平なのだった。
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