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ねつこ草
学友
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「さあ……どうでしょう? 」
拳を寄せ考え込む惟前は、夫人と宮津子を交互に見た。キョトンとした表情は、ねつこ草に何も感じとっていないようだ。
「ねつこ草とは本来、万葉にありましてね? 可愛いあの子と寝たら、一層忘れられなくなってしまった……そんな歌です」
「まあ! 恥ずかしい! あんな目に合っても光雅さんは、芸者が忘れられないと⁉︎ 」
「内縁の夫がいるのに、家に上がり込むのだから余程、ご執心とも言えますね。喜ばしい」
「馬鹿仰らないで‼︎ 恋破れた女ならば、まだしも芸者風情を‼︎ 」
可愛い息子が、悪い女に誑かされたと思っているのだろう。夫人は、カッカッと火照る頬を手のひらで仰ぐ。
「まぁ、まぁ、落ち着いて。そのねつこ草ですが以前、光雅君が女性に手渡していたのを見たことがあるのです」
「え? まさか、その相手が今回の? 」
「いえ、そんな訳はありません。相手は前田侯爵家の衍子様でしたので」
小さく唸る夫人と違い「衍子……」と、ハッキリ声に出したのは、宮津子だ。
惟前を見る目が鋭くなったのを不思議に思うが、今日中に話を終わらせたいと、カラスの鳴き声に自身の声を乗せる。
「ご存知とは思いますが、私と光雅君、そして衍子様はとても仲が良かった。出会いは、皇后陛下主催のバザーだったんですが……侯爵夫人も知らぬことがあるかもしれません、お聞きください」
「ええ、お願い」
光雅からも話は聞いているだろうが、ねつこ草が何を指すのか今後、判明するかもしれないと語る。
「前田衍子様、さわちゃんと言います。名の通り、加賀様と呼ばれる百万石の大名家の令嬢です。その為か、物の考え方が他のご令嬢とは違いましてね。男女平等と高らかに夢を語る人でした。一風変わった人に思えますが、誰もが考えたことがあると思います。何故、食事の準備をするのは女なの? 一緒にやれば早いじゃない――と、ふふふ。変でしょう? 」
懐かしい女学生を思い出し、くすぐったいと笑う惟前は「とても馬が合いました」と、告げた。
そんな衍子に、光雅は恋をしたらしい。
「さわちゃんは言うのです『お兄様が海外に行けて私が行けないなんて可笑しいわ!』 と。そうだ、そうだ! と、囃し立てればケラケラと笑い『私、海を渡りたい』と、うっとりと語るのです」
身の丈に合わない夢を語り、希望に胸を震わせる。それを誰が咎められるのか――
これこそ、若者の特権だろう。
「光雅君は、恥ずかしそうに『僕は、自由結婚だね』と。簡単そうで、なかなか難しい……が、全力で応援したいと思いました」
この当時、女学生の間で写真を撮るのが流行っていたという。
『これからお友達とお写真を撮るの。お二人ともご一緒したいわ』
衍子の一言で、揃って写真館の扉を叩いた。
「写真は後日、さわちゃんの手によって綺麗な額に入り、渡されました。光雅君は、今も大切にしている筈です。この日の帰りでした、土手に咲く花を手折り差し出した。グルグルと茎に巻きつく花は、ねつこ草。あ、求婚か? と、それとなく場を離れましたので、会話は聞いていません」
少し手を伸ばせば叶うのではないか? そんな夢だ。衍子の夢も、光雅の夢も。
惟前は、俯いた。
「惟前さん? どうなさったの? 」
急に黙り込んだのが心配になったのだろう。夫人の声かけに苦笑いを漏らす。
「……内容は聞こえませんでしたが、次の日会った光雅君は、大層気落ちしていたんです。袖にされたのか? と聞いてみましたが、笑い飛ばされました『そんなんじゃないよ』と。それからすぐでした、さわちゃんの結婚が決まったのは。ああ、あの日の求婚は、遅過ぎたのだと……」
衍子の相手は、近衛公爵家。
惟前の本家だ。摂関家の流れを汲む、公家のトップに君臨するような相手だ。
太刀打ちできる相手ではない。
「さわちゃんは、十六。学ぶことも奪われ、海を渡ると言う夢も潰えた。何と言って良いのか分かりませんでした。女学校を退学し、次に会ったのは婚礼の日。色をなくした白い顔に、いつもの弾ける笑顔はありません。光雅君は、精一杯笑顔を作り『おめでとう』と絞り出した。私は、物陰で泣いた友に言葉を失った」
衍子と結婚した公爵は、すぐに留学した。知らぬ者だらけの婚家で過ごす衍子は、幸せだったのか? 惟前は、わからないと漏らす。
「自分自身が不甲斐なかった。さわちゃんと光雅君は、かけがえのない友です。学習院から法学校を目指すと言い出した私を叱咤激励したのは、この二人。見事狭き門を突破した時は、我が事のように喜んでくれました」
仕草も声も思い出せた。
衍子は、自身の夢を語るように星を散りばめた目で『法学校って凄いわね! 内務省かしら? 外務省かしら? いいえ、司法省ね!司法省の近衛様』と、茶化す。
そんな衍子が、本家で色をなくした花のように萎れ、恋破れた光雅が寂しげに写真を眺める。
「二人の為に何もできない自分に腹が立った。あんなに悔しいことは、これから先ないでしょう」
数年後、公爵の帰国、衍子の懐妊と近衛家では慶事が続いた。そんな時、惟前に欧州視察の話が飛び込み、経歴に箔をつける為に引き受けることにした。
「さわちゃんの夢は潰え、光雅君の夢も泡とかしたのに、自分はのうのうと……」
「惟前さん‼︎ 」
宮津子の呼ぶ声に、ハッと顔を上げた。
真正面には、心配そうな夫人と何故か怒った顔をした宮津子が、瞬きもせずに見つめている。
話すうちに項垂れていたようだと、握る拳の汗を意識した。
―― 私らしくない。
キッと向き直り、唇を引き結ぶ。
やる事は、一つ――
「光雅君にとって、ねつこ草とは大切なモノと思うのです。憶測です……が、全力で女を探さなければならない気がするのです」
「そうね。このままでは、あの子もやり切れませんものね。額を畳に擦り付けて謝罪してもらわないと」
「ご、ごもっともです……」
女を見つけ出したい理由が、食い違っていそうだが、聞き流した。
「光雅さんには、元気になって欲しいと願っているの」
「ごもっともです」
「でも、事が事ですし……怪我も酷いからと侯爵が申しますのよ。ええ、よく分かっております。そうでしょうとも」
帯に挟んだハンカチーフで目頭を押さえる夫人は、一人勝手に話しだす。それも強く自分に言い聞かせているようで、ただ事ではない。
「 何を申されるのです? 」
「静かな所で静養させてはどうかと」
思わぬ話に唾を飲み込んだ、廃嫡だ。
「養子を貰い、家を継がせると……どう思います? 」
「どうって……怪我が思わしくないのを前提にしますと、良案と思います。養子も……出来れば、宮津子さんを妻にしてくれるような……いえ、そう約束を取り付け、迎えるのが一番と」
養子夫婦が他人より、娘婿の方が良いに決まっている。宮津子は、今年十七。
養子縁組と共に、婚姻届まで出してしまえば、久我家にとって文句のつけようがない縁談だろう。
「まあ! 惟前さんも賛成なのね! 」
「それしかないでしょう」
「ああ! 良かったわ、清浦閣下にご相談したら『近衛君が良いのでは? 』と言われたのよ」
「ああ、なるほど」
養子縁組は、宮内省の管轄だ。
刃傷沙汰が露見することを恥とし、宮内省を避け、他に相談したのだろう。
そして受けた清浦は、内容を漏らしても問題ない御親戚に、白羽の矢を立てた。
―― 親戚だし、バレても問題ない。学友で良いのがいないか調べてもらおう……と、いったところか。
「誰でも良いわけではないのよ! 光雅さんに理解がないと! 」
「そうですね、療養中の資金などもありますしね」
パッと、華やかな笑顔を見せる夫人は、手を打ち鳴らさんばかりだ。
「惟前さんは信頼できるからと、夫婦共々納得しましたのよ」
「まあ、妥当な人選ですね」
学習院にも法学校にも、身元のハッキリとした学友がいる。人柄も大体わかっているので適任を見つけるのは、宮内省より良いかもしれない。
貴族院議員会派をまとめ上げる清浦にしてみれば、久我侯爵に恩を売ることができると考えたのだろう。
「よろしくお願いね、惟前さん! 」
「然るべく」
夫人とは真逆に、驚いた顔をする宮津子だったが、それも一瞬で栗色の髪から覗く、仄かな色を灯した耳は、年相応の恥じらいを物語っていた。
拳を寄せ考え込む惟前は、夫人と宮津子を交互に見た。キョトンとした表情は、ねつこ草に何も感じとっていないようだ。
「ねつこ草とは本来、万葉にありましてね? 可愛いあの子と寝たら、一層忘れられなくなってしまった……そんな歌です」
「まあ! 恥ずかしい! あんな目に合っても光雅さんは、芸者が忘れられないと⁉︎ 」
「内縁の夫がいるのに、家に上がり込むのだから余程、ご執心とも言えますね。喜ばしい」
「馬鹿仰らないで‼︎ 恋破れた女ならば、まだしも芸者風情を‼︎ 」
可愛い息子が、悪い女に誑かされたと思っているのだろう。夫人は、カッカッと火照る頬を手のひらで仰ぐ。
「まぁ、まぁ、落ち着いて。そのねつこ草ですが以前、光雅君が女性に手渡していたのを見たことがあるのです」
「え? まさか、その相手が今回の? 」
「いえ、そんな訳はありません。相手は前田侯爵家の衍子様でしたので」
小さく唸る夫人と違い「衍子……」と、ハッキリ声に出したのは、宮津子だ。
惟前を見る目が鋭くなったのを不思議に思うが、今日中に話を終わらせたいと、カラスの鳴き声に自身の声を乗せる。
「ご存知とは思いますが、私と光雅君、そして衍子様はとても仲が良かった。出会いは、皇后陛下主催のバザーだったんですが……侯爵夫人も知らぬことがあるかもしれません、お聞きください」
「ええ、お願い」
光雅からも話は聞いているだろうが、ねつこ草が何を指すのか今後、判明するかもしれないと語る。
「前田衍子様、さわちゃんと言います。名の通り、加賀様と呼ばれる百万石の大名家の令嬢です。その為か、物の考え方が他のご令嬢とは違いましてね。男女平等と高らかに夢を語る人でした。一風変わった人に思えますが、誰もが考えたことがあると思います。何故、食事の準備をするのは女なの? 一緒にやれば早いじゃない――と、ふふふ。変でしょう? 」
懐かしい女学生を思い出し、くすぐったいと笑う惟前は「とても馬が合いました」と、告げた。
そんな衍子に、光雅は恋をしたらしい。
「さわちゃんは言うのです『お兄様が海外に行けて私が行けないなんて可笑しいわ!』 と。そうだ、そうだ! と、囃し立てればケラケラと笑い『私、海を渡りたい』と、うっとりと語るのです」
身の丈に合わない夢を語り、希望に胸を震わせる。それを誰が咎められるのか――
これこそ、若者の特権だろう。
「光雅君は、恥ずかしそうに『僕は、自由結婚だね』と。簡単そうで、なかなか難しい……が、全力で応援したいと思いました」
この当時、女学生の間で写真を撮るのが流行っていたという。
『これからお友達とお写真を撮るの。お二人ともご一緒したいわ』
衍子の一言で、揃って写真館の扉を叩いた。
「写真は後日、さわちゃんの手によって綺麗な額に入り、渡されました。光雅君は、今も大切にしている筈です。この日の帰りでした、土手に咲く花を手折り差し出した。グルグルと茎に巻きつく花は、ねつこ草。あ、求婚か? と、それとなく場を離れましたので、会話は聞いていません」
少し手を伸ばせば叶うのではないか? そんな夢だ。衍子の夢も、光雅の夢も。
惟前は、俯いた。
「惟前さん? どうなさったの? 」
急に黙り込んだのが心配になったのだろう。夫人の声かけに苦笑いを漏らす。
「……内容は聞こえませんでしたが、次の日会った光雅君は、大層気落ちしていたんです。袖にされたのか? と聞いてみましたが、笑い飛ばされました『そんなんじゃないよ』と。それからすぐでした、さわちゃんの結婚が決まったのは。ああ、あの日の求婚は、遅過ぎたのだと……」
衍子の相手は、近衛公爵家。
惟前の本家だ。摂関家の流れを汲む、公家のトップに君臨するような相手だ。
太刀打ちできる相手ではない。
「さわちゃんは、十六。学ぶことも奪われ、海を渡ると言う夢も潰えた。何と言って良いのか分かりませんでした。女学校を退学し、次に会ったのは婚礼の日。色をなくした白い顔に、いつもの弾ける笑顔はありません。光雅君は、精一杯笑顔を作り『おめでとう』と絞り出した。私は、物陰で泣いた友に言葉を失った」
衍子と結婚した公爵は、すぐに留学した。知らぬ者だらけの婚家で過ごす衍子は、幸せだったのか? 惟前は、わからないと漏らす。
「自分自身が不甲斐なかった。さわちゃんと光雅君は、かけがえのない友です。学習院から法学校を目指すと言い出した私を叱咤激励したのは、この二人。見事狭き門を突破した時は、我が事のように喜んでくれました」
仕草も声も思い出せた。
衍子は、自身の夢を語るように星を散りばめた目で『法学校って凄いわね! 内務省かしら? 外務省かしら? いいえ、司法省ね!司法省の近衛様』と、茶化す。
そんな衍子が、本家で色をなくした花のように萎れ、恋破れた光雅が寂しげに写真を眺める。
「二人の為に何もできない自分に腹が立った。あんなに悔しいことは、これから先ないでしょう」
数年後、公爵の帰国、衍子の懐妊と近衛家では慶事が続いた。そんな時、惟前に欧州視察の話が飛び込み、経歴に箔をつける為に引き受けることにした。
「さわちゃんの夢は潰え、光雅君の夢も泡とかしたのに、自分はのうのうと……」
「惟前さん‼︎ 」
宮津子の呼ぶ声に、ハッと顔を上げた。
真正面には、心配そうな夫人と何故か怒った顔をした宮津子が、瞬きもせずに見つめている。
話すうちに項垂れていたようだと、握る拳の汗を意識した。
―― 私らしくない。
キッと向き直り、唇を引き結ぶ。
やる事は、一つ――
「光雅君にとって、ねつこ草とは大切なモノと思うのです。憶測です……が、全力で女を探さなければならない気がするのです」
「そうね。このままでは、あの子もやり切れませんものね。額を畳に擦り付けて謝罪してもらわないと」
「ご、ごもっともです……」
女を見つけ出したい理由が、食い違っていそうだが、聞き流した。
「光雅さんには、元気になって欲しいと願っているの」
「ごもっともです」
「でも、事が事ですし……怪我も酷いからと侯爵が申しますのよ。ええ、よく分かっております。そうでしょうとも」
帯に挟んだハンカチーフで目頭を押さえる夫人は、一人勝手に話しだす。それも強く自分に言い聞かせているようで、ただ事ではない。
「 何を申されるのです? 」
「静かな所で静養させてはどうかと」
思わぬ話に唾を飲み込んだ、廃嫡だ。
「養子を貰い、家を継がせると……どう思います? 」
「どうって……怪我が思わしくないのを前提にしますと、良案と思います。養子も……出来れば、宮津子さんを妻にしてくれるような……いえ、そう約束を取り付け、迎えるのが一番と」
養子夫婦が他人より、娘婿の方が良いに決まっている。宮津子は、今年十七。
養子縁組と共に、婚姻届まで出してしまえば、久我家にとって文句のつけようがない縁談だろう。
「まあ! 惟前さんも賛成なのね! 」
「それしかないでしょう」
「ああ! 良かったわ、清浦閣下にご相談したら『近衛君が良いのでは? 』と言われたのよ」
「ああ、なるほど」
養子縁組は、宮内省の管轄だ。
刃傷沙汰が露見することを恥とし、宮内省を避け、他に相談したのだろう。
そして受けた清浦は、内容を漏らしても問題ない御親戚に、白羽の矢を立てた。
―― 親戚だし、バレても問題ない。学友で良いのがいないか調べてもらおう……と、いったところか。
「誰でも良いわけではないのよ! 光雅さんに理解がないと! 」
「そうですね、療養中の資金などもありますしね」
パッと、華やかな笑顔を見せる夫人は、手を打ち鳴らさんばかりだ。
「惟前さんは信頼できるからと、夫婦共々納得しましたのよ」
「まあ、妥当な人選ですね」
学習院にも法学校にも、身元のハッキリとした学友がいる。人柄も大体わかっているので適任を見つけるのは、宮内省より良いかもしれない。
貴族院議員会派をまとめ上げる清浦にしてみれば、久我侯爵に恩を売ることができると考えたのだろう。
「よろしくお願いね、惟前さん! 」
「然るべく」
夫人とは真逆に、驚いた顔をする宮津子だったが、それも一瞬で栗色の髪から覗く、仄かな色を灯した耳は、年相応の恥じらいを物語っていた。
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