KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

第六章 運命

第六章 運命 5

すると、そこへ若い男がやって来た。黒髪を髷に結い、白いパジチョゴリと同色のトゥルマギ（ふくらはぎ丈の外套）、黒いマンゴン（網巾の鉢巻）を身に着けている。

男は張文に向かって拱手礼をしながら、官話で話し始めた。

「張文さん、お取り込み中失礼いたします。次回の仕入れに関する書類をお持ちしましたが、後程の方がよろしいでしょうか？」

「やあ、一六イルリュッ。大丈夫だ。気にしないでくれ。いつもありがとう。こちらの二人は、琉球に住む私の友人たちだ。この機会に、ぜひ君も友好を深めてくれ」

張文が拱手礼を返しながら官話でそう言うと、守央と世璋も一六と呼ばれた男に向かって拱手礼をし、官話で話し始める。

「新垣守央と申します。唐名は阿掌法あしょうほうです。よろしくお願いいたします」

「俺は平良世璋、唐名は林永晋りんえいしんだ。よろしくな」

「安アン一六と申します。朝鮮から参りました。普段は泊で陶磁器の卸売りをしておりまして、張文さんとも長くお付き合いさせていただいております」

一六が拱手礼を返しながら官話でそう言うと、張文は再び一六と話し始めた。

「君がいろいろな陶磁器を卸してくれるおかげで、うちの店も繁盛しているよ。ところで、朝鮮で内乱が起きていると聞いたのだが、君のご家族は無事かね？」

「ええ。先日、家族全員を泊に避難させました。東学党の武装蜂起で私の故郷も大混乱しておりますので、当分向こうには帰れないかもしれませんね」

「近頃はどこも物騒で困ったものだな。清も日本との間で緊張状態が続いている。最悪の場合は、私も故郷の福州に帰れなくなるかもしれないな」

張文が表情を曇らせると、守央や世璋も張文たちと話し始める。

「昔は清と日本も良好な関係にあったはずですが、たった数年間で急激に悪化しましたね」

「政治家のお偉いさん方にどんな都合があんのか知らねぇが、もう少し国同士も仲良くすりゃあいいのによ」

「永晋の言う通りだな。国は違えど、我々は東洋の同志だ。先人たちが争い合ってきた歴史もあるが、我々は未来のために絆を深めていかなければならない。たとえどんな運命が待ち受けていようと、これからも我々の友情は不滅だ」

張文たちは互いに小さく笑みを浮かべ合った。