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第三章 真意 後篇

第三章 真意 後篇 20

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村上が銃口を真加のこめかみに強く押し付けると、真加と善良は不安そうな表情を浮かべる。

「せ、先生……」

「真加……」

善良が立ち尽くしていると、村上は善良に向かって再び怒鳴り散らした。

「どうした!? 早く跪け! こいつの命が惜しくねぇのか!? 言う通りにできねぇなら、本当にぶっ殺してやってもいいんだぞ! それが嫌ならさっさと跪け、このくそ野郎が!!」

「くっ……」

善良が険しい表情を浮かべると、真加は焦りと恐怖に顔を強張らせながら思考を巡らせる。

(どうしよう。このままじゃ、先生まで殺されちゃう。せめて、私がこの状況をどうにかできれば……でも、頭に銃を突きつけられた状況から反撃する技なんて知らないし、どうしたら……)

すると、真加は突然ハッとした表情を浮かべ、かつて善良から型を教わった日の記憶を思い出した。

その日、善良は自宅の庭で自ら動きを交えながら真加に説明していた。

(この五十四歩ごじゅうしほという型は、古くから首里手の修業者たちのあいだで伝承されていて、いろいろな技や体の使い方が含まれているんだ。たとえば背後から拘束されたときは、腰を落としながら左手で相手の右手首を掴む。次に右腕で相手の右上腕を下から抱えたら、相手の体を背負って投げ飛ばす。護身の術としても有効な技だから、よく覚えておくように)

記憶の中で善良が指南した通り、真加は腰を落としながら左手で村上の右手首を掴む。銃口を自らのこめかみから逸らすと、右腕で村上の右上腕を下から抱え、一本背負投を繰り出した。

村上は一瞬宙に浮き、ハッとした表情を浮かべる。

「なっ……!」

村上が仰向けに投げ倒されると、真加はすかさず村上の拳銃を右手刀で弾き飛ばし、村上の顔面に渾身の右正拳下段突きを食らわせた。

その衝撃は村上の頭を通して地面にまで伝わり、白く細かい砂を巻き上げながら砂浜を陥没させる。

やがて、砂浜に穏やかな海風が吹いて静寂が戻ると、男たちは全員力尽きて倒れていた。

美嘉と守優、守善、守央、世璋の5人は、それぞれ男たちをうつ伏せで地面に押さえつけている。

「これで全員片付いた?」

「ああ、歯応えのねぇ奴等だぜ」

「あの女の子は?」

「一応、軽傷で済んだみたいだ」

「長嶺の旦那も無事だし、これで一件落着だな」

世璋たちは真加と善良の方に目を向け、口元に小さく笑みを浮かべた。

真加が村上の顔面に突き立てた右拳を引くと、村上は白目を剥いて気絶していた。
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