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第二章 真意 前篇

第二章 真意 前篇 5

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数日後、東村――

晴れた昼間、中心街には様々な商店と人家が建ち並び、多くの人々が通りを行き交っていた。

そんな中心街には、広い敷地を石垣に囲まれた琉球建築の屋敷が建てられている。

屋敷には平屋建ての母屋の他に、屋根付きの門と離れ家が設けられていた。

離れ家の中には赤い絨毯が敷き詰められており、複数の机や椅子、棚などの上質な木製家具が並べられている。

部屋の奥では中年の男が椅子に座っており、恰幅の良い体に白いワイシャツとダークグレーのスリーピース・スーツ、同色の蝶ネクタイを身に着けていた。黒髪を後ろへ撫で付け、口髭と切れ長の目が冷静な雰囲気を感じさせ、机を挟んで目の前に立つ守央や世璋と話をしている。

「先日受けた依頼について、君たちにも話しておこうと思う。依頼内容は行方不明者の捜索だ。数日前、松浦商会の代表を務める松浦義忠よしただという男が、幹部3人と共に行方不明になったらしい」

「松浦商会?」

「あの海賊出身の大和人が立ち上げたっていう海運業者のことか?」

「ああ。松浦家は、40年前に薩摩から移り住んできた寄留人だ。当時、松浦家の頭首は海賊団を率いて、九州や四国近隣の海域で略奪行為を繰り返していたが、幕府や各藩からの締めつけが厳しくなって以降、摘発を逃れるために沖縄へ移り住んだ。ほとぼりが冷めてからは、主に沖縄と本土の間を航行する海運業を始めたが、その後も同業者との間でしばしば縄張り争いを起こし、競争相手を潰すために裏で海賊行為を続けていたらしい」

男がそう言うと、守央は男と話を続ける。

「では、今回松浦義忠が行方不明になった件も、松浦商会の海賊行為と関係があるんですか?」

「確証はないが、少なからずわたしはそう考えている。というのも、今回調査を依頼してきた松浦商会の臨時代表は、松浦たちが村上商会に襲われて拉致されたと考えているらしい。村上商会も、薩摩で海賊団を率いていた村上家の頭首が部下たちと共に立ち上げた海運業者だ。特に、今の頭首である村上ひさしという男は根っからの海賊気質で、表向きは合法的な商売だけでのし上がってきたように見せかけているが、裏では同業者を襲って希少価値の高い商品や金銭を略奪しているという黒い噂もある。松浦商会と村上商会は40年に渡って縄張り争いを続けているそうだが、今回の件もそれと関係があるかもしれん」

すると、今度は世璋が呆れた様子を見せ、男と話し始めた。
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