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第四話

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 誓いを胸に、俺は金を稼ぐ方法を本気で考えた。
 そして、ふと思い出したのは、この村が遺跡に囲まれていることだった。
 これだと思った。遺跡に潜って遺物を持って帰れば、多少なりとも金にはなる。
 冒険家になる。どこにも雇ってもらえなかった俺の最終手段だった。
 初めて遺跡に潜った時は、怖くてすぐに逃げ帰った。
 何度も挑戦した。幸運にも、魔王軍との戦争で、俺はある程度魔法を覚えていたから、遺跡の魔物と戦うことができた。何度も死にかけたが、その度にリーナへの誓いを思い出して、彼女を残して死ねないと奮起して困難を乗り越えた。
 俺は遺跡で手に入れたものを売った。パン一つ分の金にしかならなかったが、雇ってもらってもまともに給料が貰えなかったことを考えたら、充分な成果だった。

「リーナ、パンを買ってきたよ。ほら、焼きたてだ」
「……」

 温かいパンを買って、リーナに持ってきても無反応だった。
 このままじゃダメだ。彼女の心をどうにかしないといけない。
 この環境がいけない。汚い路地裏での生活じゃ、彼女の心だって良くならないのは当然だ。
 俺はひたすら遺跡を潜った。家賃を払えるまで稼げば、部屋を借りることができると思ったから。
 遺跡の再奥を目指していたわけじゃない。奥を目指しても、自分の力ではすぐに死んでしまうのは分かっていた。俺はただ金になるものが見つかれば良かった。

 そして、ある時、幸運なことが起きた。
 魔物の一撃を食らって、吹き飛ばされた時だ。壁にぶつかると思ったら、その壁は魔法で作られた幻覚であり、俺は偶然にも隠し部屋に入ったのだ。
 隠し部屋には、中央に光り輝くネックレスが一つだけ置かれていた。
 そんな部屋は今まで見たことがなく、金になると思い、俺は咄嗟にネックレスを取った。
 その瞬間、ネックレスは光り輝き、俺の身体の傷が癒えた。
 その後、追いかけてきた魔物と戦ったが、傷つけられてもすぐに傷は治り、俺は魔物を圧倒した。
 特別な力を持った遺物、俺はこれを秘宝と呼ぶことにした。
 完治の加護を得た俺は、死ぬ恐れが無くなったため、遺跡の奥へと行くことにした。奥に行けば行くほど、まだ誰も手をつけていない財宝が手に入ると思ったから。
 しかし、再奥には何も無かった。高価な遺物は道中で何個か見つけたが、再奥はまるで研究室のようだった。壊れて使えないであろう機材が何個かあって、研究のレポートと思われる紙が床に散らばっていた。レポートは古代語で書かれていて、俺には読むことができなかったが、一応、全部拾って持って帰った。
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