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25 マーケティング・リサーチ?

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「まだまだ食べ物はありますよ?」

その言葉と共に【インベントリ】からバーガー系のファストフードを取り出すワタシ


【シンプルバーガー】
【ヘルシー野菜BLTバーガー】
【タルタルたっぷりフィッシュフライバーガー】
【キャベツもっさりロースかつバーガー】
【お肉たっぷり焼肉ライスバーガー】
【パリッとジューシーホットドッグ】
【名脇役フライドポテト&オニオン】
【甘党御用達フレンチトースト】


こちらは紙で包装されているので、管理小屋の机の上に直置きです

「!? 嬢ちゃん、まさか収納系のスキル持ちか?!」

突然机の上に現れたバーガーたちに、ザックさんが声をあげます

(あれ? 食いつくのそっち?)

「ええ、そうですよ? それが何か?」

「いやいや、別に問題はねぇんだ」
「むしろそっち系のスキル持ってんなら、食いっぱくれる心配はいらねぇなぁと思ってよ」

「なるほど、そういうことでしたか・・・」

どうやらワタシのことを心配してくれていたようです

(何もできなさそうな小娘が、今後食べていけるのか、気に掛けてくれたってことですかね?)
(ワタシが収入を得られそうなスキルを持っていて一安心、といった感じかな?)
(言葉遣いとは裏腹に、意外と面倒見の良い、やさしいお兄ちゃんキャラさんですね?)

(それにしても・・・)
(収納系のスキル持ちは、引く手あまたなのかな? まあ、便利だもんね?)

手ぶらで旅行できるとか個人的な便利さにとどまらず、物流の担い手としても重宝されるのでしょう

やはり【インベントリ】を選んでよかったと思うワタシなのでした

ん?
【インベントリ】を選んだ?
ワタシが?



そんなワタシの思考を他所に、机の上のバーガーたちに手を伸ばすザックさん

とりあえず全種類1つずつ出しましたが、全てひとりで食べてしまいそうな勢いです


「それで、どうです? 美味しいです?」

洗浄(ウォッシュ)のお礼と言う名の試食に対する感想を求めるワタシ

今後の販売戦略を立てるためにも、現地の人の生の声は大切なのです


「(もぐもぐ)ん? あぁ、うめぇな!」

「そうね、食べたことがない味付けだけど、すごく香ばしくて、癖になるわね」

ザックさんは正にむしゃむしゃといった感じで、バーガーを次から次へと平らげていきます

ジェニー姐さんは未だに焼きとうもろこしをモグモグ中


「肉と野菜を柔らかいパンで挟んで(モグモグ)・・・」
「(もぐもぐ)肉も食ったことがねぇくらい柔らかで・・・」
「味付けもなんだかわかんねぇけど美味くって(モグモグ)・・・」
「(もぐもぐ)新鮮な生の野菜なんかも入ってて・・・」
「なんか、お貴族様の食いもんを1つにまとめて(モグモグ)・・・」
「(もぐもぐ)外で簡単に食えるようにした感じか?」

「え? えぇ・・・」

(ザックさん、一生懸命答えてくれているんだけど・・・)
(食べるか話すか、どっちかにしてぇ~!)



ザックさんの食レポからして、味的には問題なさそうです

でも、ジェニー姐さんの様子は、ちょっと気になります

(ジェニー姐さん、さっきからあまり食が進んでないんだよねぇ・・・)

(男性と女性で好みが分かれる?)

そんな一抹の不安がよぎりますが、聞き取りを続行します


「これって、売れると思います?」

「(もぐもぐ)ん? あぁ、もちのロンだぜ!」

「手に持って食べられるから手軽だし、こういった野外での食事にはうってつけかもね」
「下手に食器とか使っちゃうと、後始末が大変でしょ?」

(なるほど。旅先での食事、という観点からしても合格かな?)
(ふむふむ。ワタシ(というか[あなたにお勧め])のチョイスは間違いなかったと・・・)
(ということは、他のモノも大丈夫かな?)


「さらにですね、こういうのも売ろうと考えているんですけど・・・」

そう言って取り出したのは、もちろん、飲み物類とカップ麺


【強炭酸水レモン】
【昼の紅茶 無糖】
【お野菜フルーツミックス】

【シーフードカップ麺】
【カレーカップ麺】
【鶏塩カップ麺】


各々1個ずつを追加で出します


「この容器はペットボトルといって、このキャップをこう捻って・・・」
「カップ麺は、ふたを半分開けて、お湯を入れて3分待って・・・」

そんな説明をして、いざ、実食です


ドリンクには、

「(ごきゅっごきゅっ)ぷはーっ、シュワシュワして最初はビックリしたが、サッパリしてうめぇな!」

「こっちはお茶かしら? 熱くないお茶なんて、と思ったけど、悪くないわね。お口直しに丁度いいかも」
「それにこの野菜と果実の搾り汁? なんて贅沢なのかしら。とても甘くておいしいわ!」


カップ麺には、

「(ずるずる)こんな簡単に熱いめしが食えるたぁな、しかもうめぇときたもんだ!」

「食べたことのないお味だけど、すっっごく濃くて深い味わいのスープなのね?」
「こんなの食べちゃったら、今までの食事に戻れないかも・・・」


こんなリアクションいただきました

(うふふん? これは売れるんじゃない?)

そんな好感触でほくそ笑んでいると、ザックさんたちから予想外のお言葉です

「食いもんもすげぇが、このスプーンとフォークのアイノコのヤツ、これいいな!」

「そうね、これ1本で全て賄えそうで便利だわ。しかも物凄く軽いし」

「旅人にとっちゃ、持ち歩くモノは必要最小限かつ軽いに越したことぁねぇからな」


プラスチック製で使い捨ての激安品、【先割れスプーン】に意外な需要がありそうです

(ちょっと意外だけど、ネイティブさんがこう仰るんだし、売っちゃおうかな?)

ジモティーさんの意見は大切です

こうして、ワタシの販売リストに意外な商品、

日本のコンビニではタダ同然の【先割れスプーン】が追加されることとなったのでした

ん?
日本のコンビニ?
何だっけ?



「今食べてもらったものをここで販売したいんですが、どうです?」

「(ごくっごく)ぷはぁ~、お? いいんじゃねぇか?」

「ええ、間違いなく売れると思うわよ?」

「よかった!」
「それでですね、これらの商品、お値段いくらくらいなら買います?」


「(ずるずる)ん? そうだなぁ、オレは結構出しても買いたいと思うぜ」

「そうね、街の外でこれだけのお味のものを買えるのなら、多少値が張っていても買っちゃうかもね?」

(ていうか、ザックさん、さっきから飲み食いしすぎ!)


そんな感じで、ふたりの意見はこんな感じになりました

【バーガー類】 小銀貨1枚~小銀貨2枚
【焼きとうもろこし】 大銅貨8枚~小銀貨1枚
【焼き鳥】 大銅貨5枚~大銅貨8枚
【ペット飲料】 小銀貨1枚前後
【カップ麺】 小銀貨1枚~小銀貨2枚
【先割れスプーン】 小銀貨1枚


ワタシの漠然とした感覚より、ちょっとお高く感じるお値段でした

(へぇ~、ちょっとお高く感じちゃうけど、街の外だからこれくらい普通なのかな?)
(それとも、元々物価が高いのかな?)
(まあ、ジモティーのおふたりがこう言っているんだし・・・)



調査というにはあまりにも母数が少ない状況ですが、
ワタシによるマーケティング・リサーチは以上終了(異常終了じゃないよ?)

そして、たった2人だけの聞き取り情報を元に出したワタシの結論
それは、


「じゃあ、全ての商品の値段、小銀貨1枚で統一っ!」


販売価格は全品同じ値段、小銀貨1枚にすることにしたのでした


(【焼き鳥】は塩とたれの2本で1セットにすれば、他とのバランス的にいいかな?)
(ていうか、【先割れスプーン】のぼったくり感、パないっス!)


「全商品小銀貨1枚だから、100均ならぬ、小銀貨均? 小銀貨ショップ?」


下手に値段を商品個別に付けないことにしたワタシ

100円ショップのようなビジネスモデルをこの世界に根付かせることができるのか?

なんて高尚な考えは全くありません

ただ単に、明瞭会計を目指しただけなのです


(べっ別に、計算がめんどくさいとか、考えてないんだからねっ!)
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