【BL】クレッシェンド

花夜

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Ⅱ.未編集

第44夜

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 文化祭まで残り3週間を切った。

 先週ーー10月2日から3日間に渡って行われた中間テストも滞りなく終わり、みな肩の荷が下りた様子だ。

 ちなみにテストの結果は、爽が学年2位、秋斗はトップ50位に入り、蓮は爽との地獄漬けのお陰で赤点は免れていた。

 俺は…。

「スイちゃんに負けた…」

「…すまん」

 順位が張り出された掲示板前で気まずく視線をそらす。

 ここにはテスト結果を総合得点順に100位まで載せられていた。

「…彗は29位か。もう少し上を狙えたんじゃない?数学とか科学は僕より出来るんだから」

 横から爽が割って入ってくる。

「いや、こんなもんだろ。ま、蓮に邪魔されなきゃもっと良かったかもしれんが」

「すみませんね!でも…ホントにありがとうございましたっ!!彗さまと爽さまのお陰で過去最高得点を取れました」

 敬礼しつつ蓮は晴れやかな笑顔を浮かべた。

「…無理だと思ったが、最後は蓮の努力の結果だな」

 ふっと微笑んでみせれば、「今日の彗は優しい」と呟かれる。

 前回の悲惨な成績を考えれば誰だって褒めると思うが…。

 そうこうしているうちに、順位を確認しようと生徒が集まってくる。

 次第に騒めきは大きくなっていき、前方からは驚きの声が上がった。

『えっ?ウソ!?これってあの桐生??』

『爽くんじゃなくて!?』

『いや、これはあの不良の…』

 どうやら彗の名前を見つけた生徒たちが騒いでいるようだ。

『これってズルしたんじゃないの?じゃなきゃこんな成績おかしいでしょ!』

『確かに…カンニングでもしたのかな』

 本人がいようと構わず囁かれる中傷。

 そりゃあ、勉強ができないと思っていた相手がいきなり高得点を叩き出せば誰だって疑うだろう。

 仕方ない、とどこか他人事のように聞いていた。




「…そんなことないと思うよ」

 ところが、思わぬ反論に立ち去ろうと背を向けた彗の足が止まった。

 鬼の形相で文句を言おうとする爽の口は彗の手によって塞がれている。

 蓮も秋斗もすぐ側にいるし、いったい誰が庇うというのか。

 興味半分、驚き半分で振り返った。

 そこにはクラスメイトが、思わず発言してしまった、という顔をして立っている。

 クラスメイトと言っても言葉を交わしたことはない。

 そもそも煙たく思われていると自覚していた分、その言葉に彗自身が驚きを隠せなかった。

(同意されるなら分かるが…まさか庇ってくれるお人好しがいたとは…)

「お前、不良を信じるのか?」

「信じるっていうか。最近の桐生くんは授業も真面目に受けているし、それに難しい問題も解けていたから…」

「そうそう!特に数学の時間とかね。あれはギャップがありすぎてビックリしたなぁ~」

 尻すぼみになっていく生徒に加勢するようにその友だちが割って入る。

「だよね!?やっぱりあの爽くんと双子だし、桐生くんも頭は良いと思うんだ」

 それに励まされたのか、声を弾ませて応える。

「ちなみにテスト監督は、カンニング犯検挙率100%の鬼瓦おにがわら先生だったし、ズルするのは無理だと思うよ」

 2学年の学年主任でもある鬼瓦は、その名の通り鬼のような人だ。

 不正行為は絶対に見逃さず、生徒にとって畏怖の存在である。

「確かに…それなら…」

 クラスメイトの言葉に納得したらしく、相手はそれ以上なにも言わなかった。

 一連の流れを目の前で見せられ、庇われて嬉しいような、恥ずかしいような、照れ臭い気持ちが溢れる。

「…おい」

「ちょっと、彗!?」

 呼び止める爽の手を振り払い、俺はそのクラスメイトへと声をかけた。



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