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第1部 双子の恋愛感情
第31夜 黒崎side
しおりを挟む昔から人が人と繋がる様を傍観するのが好きだった。人間観察が趣味、と言い換えてもいい。
言葉という情報に踊らされ幾通りもの出会いと別れを目にしてきた。
人間は自分で思っているほど合理的にできていない。時には予想外の行動を起こし、奇跡と呼びたくなるほどのすれ違いをする。
本当に滑稽でこれ以上ないくらいの見せ物。
だからこそ他人をつついてどのような動きをみせるのか、興味を惹かれた。
悪趣味と呼ばれようともそれが 性なのだから仕方ない。そう諦めて面白おかしく生きるのが自分のモットーだ。
彗、というより桐生兄弟に目をつけたのも似たような理由である。
ーー面白そうやから。
その言葉に嘘はない。
ーー色んな表情を見たくなったから。
それも嘘ではない。
実の弟とセックスをしているくせに初心なところもそそられた。
強面で喧嘩慣れしていると思いきや、自分に酷いことをする弟のためと我が身を差し出す甘いところも好感が持てる。
遊び甲斐のあるオモチャ、そんな感覚だった。
(正直、彗くんだけをつついて遊ぼうと思っとったけどどうせなら、爽くんとも仲良うした方がおもろそうや)
だから、甘い言葉で彼を誑かす。
「……わいに一つ提案があるんやけど」
「何?」
警戒心たっぷりにこちらを見る。
こんなところは彗くんとそっくりや。
「見たところ爽くんはわいと彗くんの取り引きに気づいとるやろ?おそらくあんたが考えている通りでそして、その脅しは爽くんには通じない。そうちゃうか?」
「そうだね。むしろ僕は大々的に彗との関係を告白したいよ。もちろん、彗が嫌がるだろうから今はしないけど」
黒崎に負けず劣らず、人の悪い笑みを浮かべる爽。
「それなら、わいはあんたと手を組んで彗くんにちょっかいを出す方が遥かにおもろいと思うんよね」
どうや?と訊ねれば、意味がわからないと返されてしまった。
これは少し手強いが言い換えれば爽の弱みもまた彗であることを知っている。
手土産もあるし分はこちらにあるんよ。
笑みを深め黒崎は次の作戦へと移行した。
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