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Ⅱ.未編集
第55夜
しおりを挟む爽との約束を破って一人で登校した俺は屋上へと向かった。
さすがにまだ来てないか、と思った所で扉が開き気まずそうな顔をした蓮が姿を現わす。
「………」
「………」
しばし静寂がその場を支配する。
「…おはよ」
先にそれを破ったのは蓮だった。
俺も慌てて返事をすれば、二人してまた黙り込み、風の音だけが虚しく響く。
「…彗」
意を決して口を開こうとしたところで、またしても蓮が先に声を発した。
「すまん、覗く気はなかったんだけど…好奇心に負けちまった。本当にすまなかった」
謝罪の言葉はこちらの台詞だと言うのに、蓮にしては真面目に頭を下げる姿に逆に驚く。
「いや、こっちこそ…その、変なもん見せてすまない。軽蔑、しただろ?」
「…驚きはしたが軽蔑はしない。って言うか、割と予想通りだったし」
途端に悪戯っ子のような笑みを浮かべ、「オレ様の勘の良さをなめるなよ」と偉そうに言ってみせた。
「なっ…!?」
「彗ちゃんは態度に出すぎなの。学校でヤってたらバレる奴にはバレるぞ」
「っ……!!」
蓮は知っていた?
しかも、ずっと前からーー理解すると同時にカッと顔が熱くなる。
「おまっ…」
「まぁ、正直驚いたしまさかあの彗が…とは思ったけど、別にいいんじゃないか?恋愛は自由だ!そして俺は博愛主義者なの」
いつもの調子で笑う蓮に肩の力が抜けた。
もちろん、爽との事を知られて羞恥や後ろめたさのような感情はあるが、それでも変わらない幼馴染の姿にホッとする。
「…何が博愛主義者だ。ただの女好きだろ」
「そうとも言う…」
「どうかしたか?」
「いや、何でもない」
不自然に言葉が途切れ、不審に思って蓮の様子を見やれば何やら百面相をしていた。
「ま、まぁ、俺は二人の事は応援しているし、お好きにどうぞってことだよ」
「応援って何だ」
「だって付き合ってるんだろ?弟と。茨の道だろうが、俺は味方してやるって言ってんの」
付き合う?
俺と爽が…??
そんなわけない!
「…俺たちはそんな甘い関係じゃない」
「え?じゃあセフレか!?」
セッ…!?
なんて事を言い出すんだと睨めば、すまんすまんと手を合わせる蓮。
「…爽とのことはあまり触れるな。俺もよく分からないんだ」
「ふーん。ま、いいけど。好きなら素直になれよ?お前の気持ちが大事なんだからな」
ドキリと心臓が音を立てた。
蓮はたまに核心を突いてくるから困る。
「…ああ、ありがとう。それから、その、俺のことを見放さないでくれてサンキュな」
自然に笑みがこぼれた。
「おまっ!?」
真っ赤になって叫ぶ蓮に、訝しげな視線を投げつける。
「…この、天然タラシめ」
恨めしそうに吐き出された言葉は首をかしげるものだった。
「ああ、もう!いいからお前は教室に戻れ。爽との事は誰にも言わないし、もうこの話は終わりな」
強引にまとめられ屋上から追い出される。
(…何なんだ?)
はてなマークを浮かべながらも、気に病んでいた件は解決したしいいか、と彼に言われた通り屋上を後にするのだった。
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