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61 試煉

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「ーーーーーっ!?」

 凄まじい激痛に、ケントは声にならない悲鳴をあげた。

 身体中を掻き回されるような、いまだかつて経験したことのない痛みに、意識が真っ白に染め上げられる。

 反射的に魔石を放り出そうとしたのだが、なぜか魔石はケントの手に吸い付いたかのように離れない。

 痛い。

 そのシンプルな情報だけがケントの全てとなり、地獄の責め苦を味わう。

 もっとも、ケントにはそれが地獄だと認識するような余裕はなかった。

「ーーーーー!」

 口から出るのは、意味をなさない叫びだけ。

 手が魔石に貼りついているために倒れてのたうち回ることもできず、魔石にもたれるような姿勢でケントの身体が痙攣を始める。

 もしこれを見ている者がいたら、本気でケントが発狂すると思ったはずだ。それほど凄惨な苦しみ方だった。

 どれくらい時間が経過したのかーーようやく魔石が放つ光が弱まってきた。

 すると、手が魔石から外れ、ケントの身体はその場にズルズルと崩折れた。

 うつ伏せに倒れた状態で、ケントは痙攣を続けていた。

 その苦痛がどれほどのものだったのかーー真っ白になってしまった髪が物語っていた。

「…………はあっ、はあっ、はあっ…………」

 息も絶え絶えのケントだったが、残された力を振り絞って寝返りをうち、大の字になった。

「…死ぬかと思った……」

 涙と鼻水と涎でえらいことになった顔は、とても人様にお見せできるものではなかったが、それでも生きていられただけよかったとケントは思った。

『ーー大丈夫ですか?』

 再び声が聞こえた。

「大丈夫に見えるか?」

 恨めしげにケントは答えた、

「リスクは先に教えるもんだろ」

『全然聞こうとしなかったじゃないですか。もっとも、そっちの方が都合が良かったから、あえて何も言いませんでしたけど』

 声には悪びれる様子がない。

 自分が前のめりになっていたことに関しては自覚があったので、ケントも反論はしづらかった。

「ーーで、魔法は使えるようになったのか?」

 一番肝心なことを訊く。これだけ痛い思いをして、それが空振りだったとしたら、泣くに泣けない。

『そこはばっちりよ』

 声が弾む。

『これで当座の失伝の危機は逃れたわ』

「ふむ……」

 ケントは掌を顔の前にもってきた。

「何かが変わったようには見えんのだが?」

『気付いてないの?   左腕』

「え?」

『折れてたの、治ってるでしょ』

「…言われてみれば……」

 指摘の通り、折れていたはずの腕はすっかり元通りになっていた。

「すげえな……」

『怪我を治すのは光魔法です。他にも火、水、木、土、闇の魔法がありますので、色々試してみてください』

「わかった」

 ケントは高揚した気分で頷いた。

 その後、ケントは身体が動くようになるまでの間、魔法に関する質問を延々とし続けたのであった。

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