54 / 89
54 新たな発見
しおりを挟む
これ、絶対美味い。美味いに決まってる。匂いだけで飯三杯は食えるって。
自分の皿に盛られた生姜焼きに、一同はよだれを垂らさんばかりの食いつきを見せる。
全員に行き渡ったところで「いただきます」の声と共に食事が再開される。
「「「美味い!」」」
「なんじゃ、こりゃ!?」
「う、美味すぎる」
一斉に上がる歓喜の声。
「…すげえな、これ……」
作った当人であるケントも驚きを隠せない。
「口の中で溶けるよ」
フローリアは目を丸くしている。一国の皇女としてそれなりによいものを食べているフローリアにしても経験したことのない美味であった。
「「「おかわり!」」」
先を争うように皿が掲げられる。フローリアやセイラも含め、全員がおかわりを所望した。
「はいよ。ちょっと待ってな」
ケントはただちに調理に取り掛かった。これだけの素材を扱えるのは、料理人冥利に尽きるところである。本格的な料理人ではないケントでもそこは変わらなかった。
数秒だけ思案し、ケントは次のメニューを決めた。肉を厚めに切って、オークソテーを作り始める。これだけの素材なのだ。肉そのものを味わえる料理がいいに決まっている。
メンバーは揃ってケントを取り囲み、料理のできあがりを今か今かと待ち構えている。
できたそばから配り、食べさせていく。
「待ってなくていいからな。熱いうちに食ってくれ」
「「いただきまーす」」
第一陣にありついたメンバーが一斉に肉にかぶりつく。
「美味い!」
「何、この柔らかさ。こんなに厚い肉が簡単に噛み切れるなんて」
「俺、生姜焼きよりこっちの方が好きかも」
「俺もだ。肉食ってるって感じがするよな」
予想以上の大好評。気を良くしたケントは自分の分はしっかり確保しつつ、狩ったハイオークがなくなるまで肉を焼き続けた。
「…もしかして、辺境の魔物ってみんな美味しい食材になるのかしら?」
慎みを放り出して満腹になるまで食欲を満たしたフローリアが口にした素朴な疑問に、周りのメンバーたちが反応する。
「…だとしたらえらいことだよな……」
「食の環境がガラッと変わるぞ」
顔を見合わせたメンバーは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「…詳しい検証が必要じゃないかと俺は思うんだが?」
「俺もそう思う」
「異議なし」
「できるだけ多種の魔物を狩ろう。でもって王子に美味いメシ作ってもらおう」
「「賛成!」」
あちこちから声が上がる。
この時点で、本来の目的からかなり逸脱していることに気づく者はいなかった。
自分の皿に盛られた生姜焼きに、一同はよだれを垂らさんばかりの食いつきを見せる。
全員に行き渡ったところで「いただきます」の声と共に食事が再開される。
「「「美味い!」」」
「なんじゃ、こりゃ!?」
「う、美味すぎる」
一斉に上がる歓喜の声。
「…すげえな、これ……」
作った当人であるケントも驚きを隠せない。
「口の中で溶けるよ」
フローリアは目を丸くしている。一国の皇女としてそれなりによいものを食べているフローリアにしても経験したことのない美味であった。
「「「おかわり!」」」
先を争うように皿が掲げられる。フローリアやセイラも含め、全員がおかわりを所望した。
「はいよ。ちょっと待ってな」
ケントはただちに調理に取り掛かった。これだけの素材を扱えるのは、料理人冥利に尽きるところである。本格的な料理人ではないケントでもそこは変わらなかった。
数秒だけ思案し、ケントは次のメニューを決めた。肉を厚めに切って、オークソテーを作り始める。これだけの素材なのだ。肉そのものを味わえる料理がいいに決まっている。
メンバーは揃ってケントを取り囲み、料理のできあがりを今か今かと待ち構えている。
できたそばから配り、食べさせていく。
「待ってなくていいからな。熱いうちに食ってくれ」
「「いただきまーす」」
第一陣にありついたメンバーが一斉に肉にかぶりつく。
「美味い!」
「何、この柔らかさ。こんなに厚い肉が簡単に噛み切れるなんて」
「俺、生姜焼きよりこっちの方が好きかも」
「俺もだ。肉食ってるって感じがするよな」
予想以上の大好評。気を良くしたケントは自分の分はしっかり確保しつつ、狩ったハイオークがなくなるまで肉を焼き続けた。
「…もしかして、辺境の魔物ってみんな美味しい食材になるのかしら?」
慎みを放り出して満腹になるまで食欲を満たしたフローリアが口にした素朴な疑問に、周りのメンバーたちが反応する。
「…だとしたらえらいことだよな……」
「食の環境がガラッと変わるぞ」
顔を見合わせたメンバーは、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
「…詳しい検証が必要じゃないかと俺は思うんだが?」
「俺もそう思う」
「異議なし」
「できるだけ多種の魔物を狩ろう。でもって王子に美味いメシ作ってもらおう」
「「賛成!」」
あちこちから声が上がる。
この時点で、本来の目的からかなり逸脱していることに気づく者はいなかった。
1
お気に入りに追加
4,514
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる